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いつも学校では殆ど泰陽とは話さない。小学生低学年くらいの時は友達が居なくて泰陽の後ろについてよくついて行ってたが。それも、もう年を重ねてゆくたびに学校では話さないことが私たちの暗黙のルールと化していた。
「んじゃ、帰るか。」
リュックサックを背負って泰陽はそう言う。彼らしい黒いリュックサックだ。
「・・・うん。」
私は泰陽のちょっと後ろを歩く。しばらく沈黙が続いた。
「今日・・・先生に呼ばれてたね。何だった?。」
沈黙が重苦して、そうやって声を掛けた。でも"幼馴染み"のお陰か居づらい感覚や、嫌な雰囲気は感じない。安心する。
「・・・あぁ、あれか。」
泰陽はちょっと黙るとそう言った。
「騎士団主催のパーティーみたいのに呼ばれたって、先生が。・・・・・・お前もくる?」
目は、合わせなかった。2人とも靴を履こうとしていたし、目線は下だった。でも、目も合わせずぶっきらぼうそうに言われたその言葉は思いのほか、嬉しかった。
「う、うん・・・。私も行きたい・・・。」
しかし、そんな嬉しさと同様に、不安が浮き上がってきた。
・・・また、泰陽と私を比べてしまった。私の悪い癖だ。そんな私とは反対に、泰陽は嬉しそうに微笑んだ。泰陽の白い息が空気に溶けた。目つきの悪いクールな彼の稀に見る笑顔だ。
「冬休みに日時は連絡するって。連絡届いたらLINEで送るわ。」
「うん。ありがとう。」
きっと私はまた、彼と自分を比較している。自分は不釣り合いだと心から認めてしまっている。実際、そうなのだが。それが・・・なんか嫌だ。