見知らぬ洞窟にて
初投稿です。
目を開けるとそこは見たことない洞窟だった。
洞窟の石は光を放っており周囲を明るく照らしていた。
背後にはコケなどが付着した古い石版が一つあるだけで他には目につくものは何もなかった。
周りを見渡した後、今度は自分の状態を確認した。
服は麻布でできた物を身に纏っていた。身体をある程度見て異常は無いと判断した。
(どうして僕はここに立っていたんだろう)
浮かんだ疑問の答えを求めて僕は当ても無くただ洞窟を歩いた。
歩きながらここに来る前のことを思い出そうとしたが記憶に靄がかかったようにここに来る前のことはおろかか自分のことでさえも思い出すことは出来なかった。
自分のことを思い出せないことに焦りを感じながら僕は歩くスピードを速めた。
(もしかしたらこの先に誰か僕のことを知ってる人が居るのかも知れない)
この先に人が居ることを祈りながら歩き続けた。
やがて開けたところに出た。
そこは今まで僕が通ってきた道より一回り広く、天井の小さい穴から光が射し込んでおり、光の先に一本の剣が突き刺さっていた。
その剣は不思議なオーラを放っており、そのオーラに惹かれて僕はその剣に手を伸ばし、掴むと思いっ切り剣を引き抜いた。
剣は機械的なフォルムで黒一色に染まっていて禍々しさを感じる反面、どこか人を惹きつける美しさも兼ね備えていた。
僕がまじまじと見つめていると急に剣が動き出した。
突然動き始めたことに驚き、剣を落としてしまった。
「おいおい、落とすんじゃねぇよ少年」
何処からか声が響いた。
声の主を見つけるために周りを見渡したが、それらしき影は見当たらなかった。
「こっちだよ。こっち」
その声で僕は声の主が誰か理解した。
「まさか、この剣が喋っているのか?」
「そのまさかだぜ。少年」
ありえない。ありえないが目の前で剣が喋っているので信じるしかあるまい。
だが、僕の常識の部分がそれを否定してくる。
「ほ、本当にこの剣が喋っているのか?」
「本当の本当だぞ。少年」
黒い剣が僕の問いかけに答えてくる。
あまりの非現実な状況に今更、目眩が起きる。
「おい少年、そろそろ俺を拾ってくれないか?」
「あっ!すいません」
ついつい敬語になってしまう。
急いで剣を拾いあげる。
「それにしても、こんなところに居るなんて少年も物好きだな」
「い、いえ。僕は気が付いたらここに居たんです」
「ほうほう?それは不思議だな」
黒い剣は興味深そうに僕の言うことを聞いている。
「こんなところで話すのもあれだから、歩きながら話そう。この先を真っ直ぐに進めばこの洞窟の出口がある筈だ」
黒い剣の意見には僕も賛成だ。
ここから出られるのであれば否定することは何も無い。
黒い剣に言われるがまま歩こうとした。
ふと、僕はあの石版のことを思い出した。
もしかしたらこの黒い剣ならばあれが何かわかるのかも知れない。
おそらくだが、あの石版が関わっていると僕は思っている。
「すいません、聞きたいことがあるんですが…」
「おうおう、なんでも聞いていいぞ」
「奥にある石版についてなんですが」
「石版?そんなものがこの洞窟の中にあるのか?」
黒い剣は知らなかったようだ。
でも、連れて行けば何かわかるかも知れない。
とりあえず連れて行くことにした。
通った道を戻っていき石版のあるところへ向かった。
程なくして石版のある所に着いた。
僕が気が付いた時と変わらない光景があった。
ある部分を除いてはーーー
なんと少女が倒れていたのだ。
「気がついた時には誰もいなかったはずなのに!?」
動揺していると、黒い剣が話しかけてきた。
「起こした方が良いんじゃ無いか?」
黒い剣の言葉に僕は我に返る。
「大丈夫ですか?」
少女に声をかける。
「まさか死んでいるんじゃ…」
「ちょっと、やめてください」
黒い剣が洒落にならない事を言う。
「んっ…」
少女が目を開ける。
「よかった」
少女が無事だったことに安堵する。
「ここは…」
少女は身体を起こし、ぼうっとした目であたりを見渡しながら声を漏らす。
「大丈夫?立ち上がれそう?」
少女に優しく問いかけた。
「大丈夫…です…」
少女はそう言うと、立ち上がった。
身長は大体僕と同じぐらいで、白く透き通った長い髪を持っていて、
少女の服装は大体僕と同じで麻布でできており、ズボンの代わりに足首まで長いスカートを身に付けていた。
彼女も僕と同じで気が付いたらここに倒れていたらしい。
僕も目覚めたらここにいた事、不思議な喋る剣を見つけた事などを彼女に教えたが、彼女は「そう…」と言うのみであまり大きな反応を示さなかった。
「ところで少年、少女と話すのも良いが何か目的があってここにきたんじゃ無いか?」
黒い剣の言葉で僕は当初の目的を思い出した。
(しまった!ここで始めて出会った人でしかも同じ境遇だったからつい、目的も忘れて話し込んでしまった)
「そうだった、これなんだが?」
改めて石版を見る。
石版の状態から、ずっと前からここに置いてあった事がわかる。
石版の表面に薄っすらとなんらかの記号が彫ってあった。
黒い剣に見せてみると少し考えてから言葉を発した。
「すまん、さっぱりわからん」
どうやら黒い剣もよくわからないようだ
仕方なく僕らは黒い剣の話を聞きながら洞窟を出ることにした。
話を要約すると
かつて、強力な剣だったが一部の力を封印されて長い眠りに着いていたらしいが久し振りに人(僕)が来たので目覚めたらしい。
ちなみに名前は無いという事なので二人(と一本)で洞窟から出るまでに決めることにした。
「そーだな…何がいいと思う?」
「…」
少女は考えてる仕草はしたが返答はなかった。
「なあ、俺の名前決まるのか?」
黒い剣が不安そうに聞いてきた。
「このままじゃ出口に着いちまうぞ」
「黒いからクロって感じの直球なのはやめてくれよ」
「いい感じので頼む」
注文の多い剣だ。
僕たちが悩んでいると少女がポツリと呟いた。
「二スター…」
「二スター?」
少女は頷いた。
黒い剣も気に入ったようで
「二スターか。二スター…」
と何度も繰り返し言った。
他に思い付く名前が無かったのでその名前に決定した。
「改めてよろしく、二スター」
「よろしくだ、少年」
(そういえば僕たちも名前が無かったな…)
このまま、僕たちの名前も決めようと思ったが外の光が見えてきたので断念した。
「そろそろ出口だ」
僕たちは洞窟から出た。
初投稿です。(2回目)
なるべく早く、続きを出せるように頑張ります。