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序章 第二話 異世界転生


「それで僕が転生する異世界ってどういうところなんですか?」


 イシスさんが少し落ち着いてから僕はそう話を切り出した。

 赤面顔可愛かったなぁ。眼福眼福。


「こほん。え、えーっと簡単に言うと《アーク》の世界です」


「《アーク》の世界······てことはゲームの世界ってことですよね」


「その通りです。けれど《アーク》とは異世界の未来を元に私が作り上げたゲームです。ハードの容量に収めるために色んなものを省きましたから······」


「ちょっとずつ歴史が違ったりするってことですかね?」


「はい。理解が早くて結構です」


 なるほど······選ばれた、という言うのであれば他の候補者がいるだろうが何を基準に選考しているのか分からなかった。しかしそれを聞いて納得した。

 僕、自慢じゃないけど《アーク》のPvPランキングは一位だったりするのだ。

 つまるところ異世界でも一定以上の強さが必要なのだろう。何故かはわからないが。


「強さだけで選んだわけじゃありません。私の考える異世界転生の条件はもう一つ」


「あの世界に未練がない人······とか?」


「正解です。折角ですから元の世界なんて気にせず楽しんでほしいんですよ。あなたは未練というよりかはそもそも同じ世界に転生できないんですけど」


 そりゃ未練ならあるけど、できないのではしょうがない。素直に諦めるしかない。所詮、未練といえどもう一度彼女に会って謝りたいだけだから。


「それで? 何故強さが条件なんですか」


「あなたには私の異世界に絶賛逃亡中の《邪神》を倒してほしいのです」


「詳しくお願いします」


「《邪神》······神の役割を放棄して逃げ出し、世界に迷惑をかける嫌な奴です」


 なんだか苦労してるんだなあ。


「ホントですよ! 逃げるのは一万歩譲ってまあいいとしても!! なんで私の管理する世界に来るんですかねェ!?」


「まあまあ。イシスさんチョロいし」


「ぶっ殺しますよ?」


「ひぇ」


 つまるところ僕はイシスさんのミスではないとはいえ、尻拭いをしなきゃいけないということだ。

 聞くところによると神は基本的に自分の世界に手を出さない。僕という転生者を送ることも今だから特例として許されているそうな。


「めんどくさそう」


「わざわざそれ口に出します? それも頼んでる本人の前で」


 いやまあ、やりますけど。恩を仇で返すような真似はしたくないし。


「何か釈然としませんね······やっぱ転生やめます?」


「いやホント許せないですよね邪神とか! 人に迷惑とかかけないで生きてけないのかよまったく!!」


「······」


「······なんですか」


「いや別に」


 言いたいことは分かる。結局自殺して親にも残してきた人にも迷惑かけてるんだからお前が言うなってね。えへへ。


「さてと。それじゃあ貴方には転生特典として、ささやかな願いを一つだけ叶えましょう。生身で送り出すのも忍びないですからね」


「じゃあ願いを百個にしてください」


「それでは異世界でよい人生を! さようなら〜」


「すいませんでした」


「わかればよろしい」


 危ない危ない。折角のチャンスを棒に振るところだった。ここからは慎重に決めていかないとね。


「願いの上限ってあるんですか? これは叶えられないとか」


「不老不死とか、いきなり最強の力とかは無理ですね。世界のバランスが壊れますし悪用されても困るので」


「なるへそぉ······」


 じゃあ時間停止系とか魔力無限とか大量のお金とかも無理なのかな。

 んー候補としては当たり前だが、異世界で役立つもの。それと僕だけの秘密になるものだろうか。転生者だとバレたくはないし。


 役立つもの。攻略。秘密。

 役立つもの。攻略。秘密。

 役立つもの。攻略。秘密。

 役立つもの。こ······あ、そうだ。


「イシスさん決まりました。寝ないでください」


「──ッ! ね、ねてません!」


「涎垂れてます」


「垂れてないです!!」


 イシスさんはどこから出したのか、ティッシュから紙を出してごしごしふいてこたつの中に入れた。


「こたつに入れないでくださいよ。汚いじゃないですか」


「大丈夫です。この中は亜空間になってますから」


「なにが大丈夫なのかわかんないんですけど」

 

 僕いままでそんなところに足突っ込んでたんだ。怖いわ。


「それで、転生特典が決まったんですよね? やっぱり《成長速度1.2倍》とか《取引術》とかですか? ゲームの序盤では必要なスキルですもんね」


「なんでゲームのスキルに限定するんですか」


「えっ? 違うんですか?」


「違いますよ······僕が欲しいのは、《アメイジング・ソード・クエストに関するあらゆる情報》です!」


 僕は自慢げにそう言った。なかなか良いアイデアじゃなかろうか。


「ちょっと待ってくださいね······」


 そう言ってイシスさんが目を瞑る。美人だな。

 ちょっとすると目を開いてこたつ越しにウンウン頷いている。


「······まあいいでしょう」


「どうしたんです?」


「他の神様たちに良いかどうか相談してました。まあ凛音さんなら悪用もしないだろうし多少は融通してあげますよ」


 もしかしてグレーゾーンだったりしたんだろうか。いや冷静に考えてみれば世界中の情報が僕の手元にあるようなもんだし悪いことし放題だよな。


「聞いていいですか。なぜそんなものが欲しいんです? 流石に叶えるのは無理ですけど未来予知でもいいじゃないですか」


「······僕あのゲームのストーリーがちょっとリアルすぎて嫌いなんですよ。でも、それがあれば歴史をかえることだってできるじゃないですか」


 あのゲームの死んだキャラクター達を助けられるって思ったらこれしかないと思ったんだよね。


「──やっぱり貴方を選んで正解でした」


「え、今なんて?」


「······なんでもないです! それじゃあ早速転生させましょう」


 うへえ。もう転生かぁ······ドキドキするというかワクワクすると言うか。

 そんなことを思っていたら、体中から水色の淡い粒子が出てきた。


「えッ!? 入浴剤みたいになってるッ!?」


「面白い例えですね。まあ、落ち着いてください。死にはしませんから。もう死んでるんですから。ふふ」


 うまいこと言ったみたいな顔するなよ全く面白くなかったよこのやろう。


「今、あなたの仮初めの体を糧にして私の世界用の体を構築しています。今のうちに聞きたいことがあればどうぞ」


「えっと······もう終わりそうですけど言わせてもらいますね」


 もう身体中から青白い粒子が沢山でてきて凄い綺麗だし、そのままどんどん上に上がっていってるんだよね。


「イシスさん。ありがとうございました! あなたに会えて嬉しかったです!!」


「もう死んでる······ふふふ」


「全ッ然面白くないですってそれッ!!」 


 その言葉を最後にして、僕はより一層輝きを増した粒子に包まれてその場から消えた。


 最後にイシスさんが何かを言っていたが僕の耳には届かなかった。


ちなみにイシスさんがアーク作ってます。作ったって言うより仕向けた?

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