序章 第十五話 救い
最近忘れていたので超久しぶりの投稿です。
あと、改稿し始めてるので良かったら見てください。
「誰が悪魔の味方をするような奴に降参なんてしなきゃなんねぇんだよッ!」
そう言って先程『水球』を当てられた少年は僕に向かって、拳を構えた。
「······これを見ても? ──『水球』」
僕は脅しの意味をこめて、近くにあった木に向かって早口で詠唱し、本気で魔法を放った。
案の定、当たった木やその先にある木にも当たって、それら全てに風穴をあけてへし折っていった。
「君らにこれを当てると、どうなると思う」
「し、知るかそんなもん!!」
あ、あれ······?
──って、ああ。僕は転生者だからあれだけど、彼等は年相応の精神年齢。少しは怯えても、逃げるまでとはいかないのかもしれない。
年相応だ、と考えると煮えたぎる程の憎悪は幾分か鳴りを潜めてしまった。
「うーん······実力行使は危ないしなぁ·······」
「なんだてめぇごちゃごちゃと! やる気あんのか!」
「もしかしてビビってんのかおまえ!」
「ビビってんのかおまえ!」
いや、君らの為に考えてるのになんでやる気を疑われなきゃいけないんだよ。
実力行使は僕の力の制御が甘かった場合、彼らに怪我を負わすことになる。
かと言って、脅しや口で言い負かそうとしても、彼等はまだ子供。多分話にもならない。
·······逃げるか。うん、そうしよう。
「『火炎』······──『水球』」
僕は左手に魔力MAXの『火炎』、右手に魔力半分よりちょい上くらいの『水球』をだした。
『火炎』は初級魔法で無詠唱で出せるが、中級の『水球』は早口か詠唱省略が限度だ。
「君。ちょっと僕の背中に乗って」
僕は後ろに庇っている、少女に向けて言った。
少女を改めて見ると、薄紫色の髪の毛が長いせいであんまり表情が見えなかった。それに、そこから覗く先の尖った耳がピクピク動いてる。あと、体もびくびく震えている。
少女は首をかしげながらも、一応僕の背中に乗ってくれた。背中に人をのせるのも久しぶりだな。
「しっかり捕まっててね」
そういうと、ギュッと僕の首に手を回してきた。その際みえた、傷痕がなんとも痛々しい。
──なんか僕の首絞まってきているが気にしない気にしない。
「せー······のッ!」
僕は両手にある二つの魔法を目の前で思いっきりぶつけた。
その瞬間、膨大な量の水蒸気が辺りを満たした。
僕は更に、自分の周り、それに子供達の周りに『反射』を張って、怪我のないようにする。
「よし、逃げるよ!」
流石に背中に一人のせてのあの加速は大変危険なので、僕は風魔法で足をサポートしながら、走って森の中に入っていった。
※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
そして僕達は、僕が魔法の練習をする場所までやってきた。
が、急いできたのでもしかしたら背中の子が酔っているかもしれない。
「ふぅ······大丈夫だった? 酔ってないよね?」
「······ッ!」
びくびく震えてながらも、なんとか首を縦に振ったのが分かった。
僕はそれを確認すると、そっと少女を地面に降ろして、向き合った。
「もう大丈夫だよ。多分あいつらは追ってこないし、来ても僕が"今度こそ"やっつけてあげるから」
僕はそう言って、少女の頭の上に手を置いた。
何故か目をギュッと瞑って(多分)、プルプル震えている。なんだろう、暴力でも振るうのかと思ったのだろうか。
「我に満ちる聖なる光よ、かの者に治癒の力を──『治癒』」
僕が詠唱した瞬間、少女の足元に黄色の魔法陣が浮かびあがり、それと同時に光が少女を一瞬だけ包みこんだ。
「まだ中級が出来ないから、完全に治すのは無理なんだ。ごめん」
「······?」
僕はそういって少女の前髪を掻き分け、不思議がっている少女の表情をみた。
伏し目がちな紫紺の瞳が僕を捉えた。表情は、なにが起こったのか分からない、と言った感じだった。
「えっと·······そうだ。君の名前は?」
「ル、ルイス······」
「ルイス、ね。僕はイオン・ビクトリア。父がこの村の領主をやってるらしいけど、あんまり気にしないでね」
ルイスか。その名前をどこかで聞いたことがあるはず。まあ、帰ってから調べればいいか。
「······なんで、助けてくれたの······」
小さい声だがそれでも綺麗な声が、僕の耳に届いた。
「なんでって、言われても······弱い者虐めは大嫌いだし、それに君が『助けて』って言ったのが聞こえたからかな」
僕がそう言い切ると、ルイスはしゃがみこんで、僕の腰あたりに手を回してきた。
「え、え? あの······え?」
と、僕がいきなりのことで頭が追い付かず、混乱していると。
「······ひっぐ······ぐすっ·············」
と、嗚咽が聞こえてきた。
······きっと、助けを呼んだのは無意識だったのだろう。
彼女の傷や様子を見るに、虐めは今日昨日で始まったわけじゃない。
彼女は、虐められ始めた時からずっと今日まで、助けを求めたのだろう。
······僕と、同じじゃないか。
「······遅くなって、ごめん」
······願わくば、僕とは違う人生を歩んでほしいと願いながら、僕は静かに呟いた。
僕の違う作品は、改めて作り直す予定です。




