チャットルーム32(パブリック) 20時08分
チャットルーム32(パブリック) 20時08分
ユイ「こんばんは、誰かいますか?」
すぐに返事はない。――一分後。
ミサ「おつ」
ユイ「あ、よろしくです」
しかし、そこで会話は止まる。――三十秒後。
ナオ「こんばんは、二人とも」
ミサ「おつつ」
ユイ「こんばんはです」
ここは、とある寂れたチャットルーム。それ以上でもそれ以下でもない。
たまたま開かれたチャットの場に集まったのは、ユイ、ミサ、ナオと名乗る人物だった。
ナオ「私はナオ。よろしくね」
ミサ「あたしはミサ」
ユイ「わたしはユイと言います。よろしくです」
集まった三人は、もともと友達というわけではなく、今回偶然このチャットルームに参加しただけである。このチャットルームは野良――予定して仲間同士が集まるものではない――のため、三人は全くの他人同士であった。
ユイ「こんなすぐ三人も集まるなんて、すごいですね」
ミサ「かもね」
ナオ「どうして二人はここに?」
ミサ「見知らぬ人と話すのが好きだから」
ナオ「あら、私もそんな感じ」
ミサ「ナカーマ(^_^)/ ここに来たのはたまたま」
ユイ「わたしは……」
ナオ「わたしは?」
ミサ「なんか、お悩みな感じ?」
ユイ「ええと……。こんなことを言うのは、あれかもしれませんが……」
ナオ「何かしら。悩みがあるなら聞くわよ」
ミサ「人の悩みや愚痴を聞くのも、また楽しみの一つ」
ユイ「それじゃあ、お言葉に甘えますね」
ユイ「わたしのグループなんですけど、真面目さが足りないんです」
ミサ「ほほう」
ユイ「わたしはもっと真剣に取り組みたいんですけど、他の人たちは、まあこれでいいだろとか、適当にこんな感じでいいんじゃないとか、とにかくそんなような感じで」
ナオ「周りの人が、真面目にやってくれない感じ?」
ユイ「そうなんです。でも、それをキツく言ってしまうと、もっとダメな方に行ってしまうような気がして……。結局、言えませんでした」
ミサ「誰か味方はいなかったの?」
ユイ「味方は、いませんでした。わたし一人と、その他のみんな、みたいな感じで」
ミサ「他の人同士が仲いいのか。それは、うん、難しいわ」
ナオ「その状況で意識を変えるのは、なかなかハードね」
ユイ「一応、グループとして作品は完成したので、そこは問題ないんですけど」
ユイ「どうしたら良かったのかなって……」
ミサ「やっぱり、言ってみるしかなかったかもねー」
ナオ「強制力や権限の匂いがしないあたり、見習いなのね?」
ユイ「あ、はい。ライトノベルの見習いです」
ミサ「見習いねぇ。見習いでもさ、もうちょっと監督の権限を上げてほしいよね」
ナオ「確かに権限は便利だけど、それだと能力が身につかないから」
ユイ「能力、ですか」
ナオ「そう、能力。立場に頼らず、上手くやっていく能力」
ミサ「なるほど」
ユイ「わたしには、それが全然足りてませんね……」
ミサ「反省するのはいいけど、気にし過ぎるのはダメよー」
ナオ「そうそう、気にし過ぎるのは精神的に良くないわね」
ユイ「はい」
ナオ「ユイさんの状況に対する、これっていうアドバイスがなくてゴメンね」
ミサ「ごめんね」
ユイ「いえいえ、難しいのはわたしも分かっていますから」
ユイ「それよりも、お話を聞いてくれてありがとうございました」
ミサ「頑張れよー」
ナオ「頑張ってね」
ユイ「はい!」