Sudden change(突然の転移)
~2022年10月~
2020年の東京オリンピックは大成功の裡に終わり、北京での冬季オリンピックも間近に控えたある日、日本全土で大きな揺れが観測された。
当初は日本全土での震度がほぼ同じだった事もあり、不安に駆られる国民も多かったが各地で多少の被害があったものの、地震に慣れている国民性故か津波なども発生しなかったので、すぐに普段通りの生活が始まった。
しかし、落ち着きを取り戻す所か却って慌ただしくなっている所があった。
~東京都・情報通信研究機構~
「なあ、何かおかしくないか?」
そう言って職員の一人が同僚に声をかける。
「何がおかしいんだ?」
「いや、昨日と今日とで星の配置が違うんだよな。」
「星の配置が違うって言うとつまりどういう事だ?」
「この時期に見えるはずがない星座が見えたり、見た事もない星の配置があるんだよ。」
「見た事もない配置?」
「ああ、見てみろよ。」
そう言われて同僚が望遠鏡覗き込んで見てみると、
「本当だ・・どういう事なんだこれは?」
「わからない・・なんで急にこうも変わっちまったんだ・・・。」
~首相官邸内~
ここでも次々と総理大臣の内川幸三に報告が上がっていた。
「総理、最近日本近海から見た事もない魚ばかり網にかかると漁協のほうから連絡がありました。」
こう言って農林水産大臣の遠藤隆弘から報告があがった。
「見た事もない魚?」
「はい。漁師が言うには、鮭や鰯といったもの以外に今まで見た事がない魚がかかっていたみたいでして。」
「ただの新種の魚じゃないのか?」
「私もそう思いました。ですが、それも一部分ではなく日本近海の至る所から見つかっています。」
「何だって?至る所から?それはいつ頃からだ?」
「全国で大きな地震があった日からです。」
そう話していると、執務室の扉を勢いよく開けて入ってくる者がいた。
「総理!至急報告したいことがあります!」
「何だね一体?ノック位してから入りたまえ。」
息を切らせながら、国土交通大臣の塩河裕史が入ってきた。
「総理、そんな悠長な事を言っている場合ではありません!緊急事態です!」
「緊急事態だって?」
「はい。気象庁の方からの連絡なのですが、気象衛星との通信が全くとれないとの事です。」
「何?通信がとれないだって?」
「はい。それも一つだけではなく全ての衛星と通信がとれないようで・・・。それも地震が起こった後からです。」
「一体この国に何が起きているというんだ・・・。」