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世界引越しませんか。

初投稿です。気が向いた時に書きます。死ぬまでに完結出来たらいいな。

 転生ってのに憧れる。

 別に死にたい程現実が辛い訳じゃない。

 つまんないけど、程々に楽しめてる。

 なんとなく、楽しそうだなって。


 じゃあ、実際にその時になったらどう思うだろうか。


 やっぱ無理かな。転生とか無理。

 住み慣れた場所捨てて新しい人生とか、そんなの無理。

 疲れる。絶対疲れる。面倒しかないと思う。


 人間関係再構築とかそんなパッションない。だいたい私はコミュ障だし。中途半端に意志残して転生とかストレスしかない。


「うん。でもねー、これ決定事項だからさ? めっちゃサービスするから大人しく受け入れてくれない? 抵抗されると困るんだよねー。無理やり送ったってなると愛護団体が五月蝿いしさ。」


 たまにある。死んだあととかじゃなくて生きてる状態の時に神様だか遣いだかが異世界への勧誘にくるって話。なんだかんだ好条件引き出して主人公が転生(転移)するヤツ。異世界行きながら現代とも繋がれるっていうのもあって、それはとてもご都合主義で魅力的だなとは思う。


 まあでもそこまで手配出来るなら勧誘にきたヤツが行けよ、と。影響がとか色々あるのだろうけど。そこも調整出来るんじゃないのか。


「まあ、お決まりというかなんというか、それは無理。やろうと思えば出来るけど。オレが行ったほうが手っ取り早くていい場合もあるしね。でもそれを許しちゃうと後々厄介な事になるんだよ。過去に他を巻き込んで面倒起こしたのがいてね。お陰様で直接干渉する事はルールで禁止。そのクセ管轄区域は安定させておけとか……言うだけなら簡単だよね、ホント。」


 悩ましげにため息をつく、綺麗というには年端のいかない可愛らしい少年。


 子供が話す作り話にしては少し濃密な内容のそれを、この子の将来性に若干引きつりながら真面目に聞き出したのは30分前。自身の残念な脳内も駄々漏れにして、お互いに駄菓子屋で買ったエッグアイスを食べながら公園のブランコに揺られている。あ、少年は少年らしく無一文らしかったので私が奢ってあげた。初めて食べるのか戸惑った様子だったけど口に含んでからは「これ美味しいね」と笑顔になったのでよかった。少年とミルクアイス。腐った衝動は芽生えないようにしなければならない。この感情は……そう、母性だ母性。


「毎日毎日地道に安定を求める日々……これから先もずっとこんなチマチマとした作業を続けていくのかと考えたら頭がおかしくなりそうでね。そしたら何? 他所の管轄区域から人間を引き抜いて恩着せて代わりに働かせるなんていう方法があるらしいね。幸い、眷属なんて数える程しか生み出した事の無いオレは余力だけはあるから巷で流行りのチートなんて朝飯前だし。例え引き抜いたヤツがやる気なくても逆らってきても大丈夫なように結構しんどかったけど基礎から弄って存在を安定剤にしたし。あとはキミが了承さえしてくれれば、この瞬間の為に下準備にかけた1ヶ月の時間も報われるというものだよね。……ねえ、ちょっと世界引っ越してよ。キミだって1度は行きたいと夢見た事あるでしょ? 剣と魔法のファンタジー。ホワイトな職場だからさー。ねえ、お願い。」


 まあまあ、それよりこれも食べなよ。うまし棒めんたい味。


 袋を開けて少年の口元に差し出すと暫く見つめたあとパクリと齧り付く。目がキラリと輝いたから口にあったんだろう。そのまま最後まで私の手から食べると満足げに口元を舐めた。


「これも美味しいね。」


 安くて美味しい駄菓子屋は神だよな。尊敬する。


「神? ダガシヤって神には会った事無いな。神子でもないキミが恩恵を受けれるくらいだから位は低いんだろうけど。でもこのオレを喜ばせたんだ、今度会えたら何か褒美をとらせないとな。」


 そういう設定なんだ。


「設定? ……ああ、ちょっと待って。ダガシヤの記憶だけでいいから読ませて。……なるほど。こっちの知識がないと不便だな。容易に恥をかく。申し訳ないけど、暫くこうさせてもらうよ。」


 設定に突っ込まれたようで恥ずかしかったのか少年の顔が赤くなる。


  ……しかし、その照れ隠しに手を握るというのはどうなんだろう。なかなか将来有望な女誑しにはなりそうだけど。顔が整ってるだけに余計に。現状少年だから微笑ましいだけだけどね。


「……言っとくけど、今のこの姿でも手握ってるって事は相手の気持ち少しは解るようになるんだからね。オレの事可愛いとか不名誉な事考えないでくれる?」


 読めるなら次の言葉を繰り返して。さしみ。パイナップル。きなこ餅。


「さしみ。パイナップル。きなこ餅。……って、何やらすんだ!」


 おお! 凄い! 少年は超能力者かなんか?


「違う! はじめに説明したでしょ、キミらで言うところの神だよ。」


 駄菓子屋か。


「違う!」



 そっぽを向き拗ねる自称神様の少年。可愛いな。あざと可愛い。


 ほら、チョコ玉。中身ピーナッツのヤツ。甘くて美味しいよ。


 チョコ玉を目の端でチラつかせる。時折見ては食べたそうにはしているんだけど少年なりのプライドなのかキュッと口元を固く結んでは、チョコ玉の代わりに私を睨みつけてくる。


 正直、子猫の威嚇程度にしか感じない。可愛いな、神か。神だったな、少年神だ。


 このまま堪能してもいいけど流石にこんな小さい子に我慢させ続けるのは可哀想だな。子供相手なら大人が妥協すべきだ。無理やり食べさせてあげよう。


 私の気持ちが読めたのか、少年が少し期待したようにソワソワし始める。それでもそっぽを向いて拗ねてる体は崩さないのだけれど。


 1つ、口に捩じ込むと少年の雰囲気が柔らかくなった。これも気に入ったのだろう口元が緩んでいる。もう1つ、2つと続けて食べさせていく。箱の中身が空になる頃には少年はこちらを向いて、チョコ玉を差し出すと口を開けるようになっていた。





「……はっ! しまった。オレとした事が……。」


 あの後、麩菓子やイカ素麺、ラーメン菓子やスティックゼリーなどを2人して食べた。食後の運動にブランコや滑り台、シーソーなど公園の遊具をフル活用して遊び、気づけば夕方。高かった日は山の向こうに落ちかけていて、気温も下がり肌寒い。


 さあ、少年。そろそろお家へお帰り。暗くなると危ないよ。

 まだまだ残ってる駄菓子は手土産に半分あげるから。

 あっ、でも小遣い持たせてもらってないって事は駄菓子持ってたら怪しいな。ポケットに隠せる分だけあげるから、ゴミは後日外出した際にこっそり捨てるんだよ。


「ちょっと待て!」


 世の中の汚い事など知らなそうな少年に悪知恵を授け、さあ帰ろう。と、公園の入口に向かいかけた時、駄菓子でポケットの膨れた少年が手を掴んできた。


 どうした。帰り道がわからないのか。

 交番はどっちだったかな。



「違う。こっちのヤツに話つけた時、行き来の許可が出たのは1回だ。つまり、キミが了承してくれるまでオレは帰れない。いや、キミが首を縦に振るまでオレは帰らない。絶対にだ。」


 ……ええと、つまり。


「オレもキミの家に行く!」

神様が少年なのは勿論作者の趣味です。

主人公もちゃんと声は出してますよ。

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