持ちつ持たれつ
狐と狸が仲が良くてもいいじゃない
――あるところに、狐を血を引く少女がいました。
彼女は、生まれ持つ魅了のせいで、誰彼かわまず惹きつけてしまうという厄介な能力を持っていました。
そして時を同じくして、そこに狸の血を引いく少女もおりました。
その子は、狸という長年の人間との確執から、ほとんど人は寄って来ません。
いつも、ひとりで居ました。
狸は狐の魅了にかからないので、彼女に興味はありませんでした。
しかし、そんな時彼女からお声がかかりました。
「どうにかしてあの人達をまいてほしい」
というように。
それは、クラス内ヒエラルキーでナンバーワンの存在が、その他大勢に分類される人物に話しかけてきたことに等しい状況です。
狸の少女は、当然警戒します。
ただ、ここで借りを作っておくのも悪くないと思い、とりあえず助けることにしました。
……しばらくすると、また狐の少女が彼女に助けを頼みにきました。
そして、その頻度はどんどんと増えていきました。
狸娘は困惑します。
なぜ私なのかと。
自分を評価するなら、はっきり言って地味という他ありません。
染めても、パーマもかけてない伸ばした髪を、ざっくばらんにまとめただけ。
メガネも黒縁の目立たないものです。
彼女からは洗練された華やかな香りがしますが、自分は実家の手伝いもあってか、土と草の香りばかり。
狸娘は、人気のない自分をからかっているのではないかと疑います。
時々、遠回しに彼女を試すような言葉を投げかけてみたりもしました。
しかし、彼女はいつも変わらず。助けてくれると感謝の言葉を投げかけてくれました。
彼女にとっては、初めての経験でした。
誰かに必要とされることが。
そうしてだんだんと一緒にいる時間が増え、
二人は友だちになりました。
……今は、それ以上の存在かもしれませんが。
その狸の血を引いている娘こそが私、四月一日/和狸 叶であり、
狐の血を引いている子が、金子/金狐 円なのです。
「……どうしたの?カナエ」
「なんでもありませんよ。世界はよく出来ているなぁと、そんな感じです」
「何それ」
今ではすっかり、私のほうが彼女なしではいられなくなってしまいました。
狸は幻術などの類にはかからないはずなのに……どういうわけか惚れてしまったようです。
でもきっとこの感情は、幻などではなく―――
私の中にある、本物の感情なのだと信じています。
願わくは、彼女と過ごす時間がいつまでも楽しくありますように……
自分が書き上げるつもりだった狐っ娘と狸っ娘の物語を、超ダイジェスト版の語り口調でお届けしました。
これを書き上げたことでだいぶ満足してしまったのですが、もっと詳しい話が知りたいという方がおりましたら、ご希望に沿いたいと考えております。