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生きる伝説

そうして始まる、エセ魔王の侵略劇。

作者: 藍佳印

ありきたりな、とある場所での物語です。

 「で、何の用だ?」


 オレは眼の前の友人に聞いた。古い付き合いの友人は何かと面白い情報を持ってきてくれるし数少ない友人の一人でもあるが、この顔は面倒事を運んでくる時の顔つきであった。


 「勇者と魔王ってさ王道であるべきだと思うんだ」

 「いや、まぁそうだな」


 こいつの話はいつも唐突である。神妙になって言う割には御伽話について嬉々として語る。


 長い黒髪は首元で一つに結んであり、赤と青のオッドアイ。顔立ちはソコソコ整っていて服装が黒い傭兵の様な服装の為か男に見えなくもない。そんな友人は人間族である。昔に一度、出会った当初から変わらぬ外見に疑問を持ち聞いたが帰ってきた答えは平然と『ああ~、とと様とかか様が不老でね~、子供の僕も不老を受け継いだんだよね~。だから兄さん達も全員不老。あ、死なないってわけじゃないよ。一定の歳になると成長が止まるみたいでね。僕は十八歳で止まったかな~』


 おい、待って!不老って誰もが――長寿を生きる種族以外――一度は夢見るアレだぞ!?つーか、家族全員かよっ!?とか色々突っ込みたかったが『そうか……そりゃ、外見変わるわけないな』とだけ返した。


 さて、勇者と魔王の話だが本当にいた。って言っても事実はなんとも言えないが。


 今から五千年ほど前に魔王が君臨し独裁を繰り返していた。当時の魔王は好戦的であり――というより脳筋で戦闘大好き思考だったとオレ達魔族でも伝えられている。最後に絶対こんな奴になってはいけないなったら待つのは破滅への道だけだと。――他種族の国へ進軍を繰り返していた。仮にも魔王と言うだけあり力はあった。次々と国が滅んでいく中、いくつかの国が同盟を結び魔王を討伐する最強メンバーを選出した。


 とある人の国は文武両道の王太子を――ココで、えっ王子様行っちゃダメっしょ。第二権力者だよ。とかツッコんではいけない。――メンバーにし、またある獣人族の長は有名な二つ名の一族最大の戦力である者――え、一族の守り抜いちゃうの!?とか言ってはいけない――を、またある精霊族は王自ら行き――ちょっ、王様はアウト――またある国は――当時、種族差別が激しい中では珍しかった多種の種族が共存していた国だ――最強の盾と矛と言われていたモノを。


 この五人のメンバーで魔王を討伐――つーより消滅が正しい――し世界に平和になり今の様な種族間差別のないかなり緩く平和な世界がある。


 ん、でも


 「お前……当時の魔王について知りたいなら親に聞けばいいだろ?確か、討伐メンバーにいたよな」

 「そうだよっ!あのクソ王子がさ」


 珍しいな。怒るのは。つーか、御伽話の話じゃなかったのかそんな事を考えていたら次の友の言葉に思わず飲んでいたコーヒーを噴き出した。


 「かか様を口説いて」


 いや、一つつっこませろ!かか様って母親の事だよな!?歳の差ーーー。いや、それ以前にあの人が許すのか!?


 「ほら、かか様って意外とガード堅いからさのらりくらりとかわしてたんだけど、あのクソ野郎はとと様の眼の前でかか様に激しいスキンシップしてさ」


 いやいやいや、既婚者に!?つーか、オレの記憶が正しければお前が罵倒してるのって討伐メンバーにいた国の子孫だよな!?第二王子だよなっ!?


 「とと様は氷点下」


 そりゃあ、そうだろう。あの人の性格上許すわけ


 「何を思ったか、人を雇ってかか様をさらうように命令したらしくてさ」

 「いやそりゃ「ちなみに襲撃者は高い高い魔装のフル装備。んで、かか様の顔を抉って。いやかか様かえり討ちにしてたけど魔装の武器でついた傷だから治癒効かなくて、とと様怒って襲撃者達とお話してあのクソに雇われたって」


 一応、仮にも王子なので真否が分からないなら口に出すなと言おうと思ったが遮られて伝えられた事実はなんとも言えないものだった。


 そりゃあ、あの人も怒る。傍から見て執着心はハンパナい。そして愛情が重い。それに大事な妻が傷付けられて――魔装は特殊な鉱物で作られており、魔物との戦闘でよく使われている。ソレは魔法を通さなく弾く。炎を切ったり本人の力量もあるが可能だ。何より魔装で切ったモノは治癒を邪魔するのが最大の特徴だ――


 「だから、レオは魔王になってさ」

 「いや、待て何故そうなる!?」


 一体どこから、そんな話にとんだ!?


 「あいつさぁ~、かか様にアプローチしている割にはフローラも好きみたいなんだよね。だからレオが魔王になってフローラさらって惚れさせてアイツ半殺しにすれば完璧」


 いやいや、フローラって確か獣人族の姫だよな!?あの、子孫の。つーか、二股かよ!


 「本当は殺してやりたいけど、仕方ないし。一応仮にも王子様だし、あんな王子様っぽくない奴初めてだけど。どうせなら屈辱が良いよね。大丈夫、レオはイケメンだし色々できてスペックも高い。とと様と比べたらいけない。とと様は人間……いや、全生物の領域内にはいない人だから。レオのおやっさんには悪いけど引退してもらってさー。もう限界なんだよね。とと様の絶対零度の空間にいるのは。殺してやりたいけど無理じゃん?だからさぁ、レオのイケメンっぷりでフローラおとして、実力でも敵わないって思わせた方がいいでしょう?」


 確かに親父は物語の魔王――定番はイケメンだ。つーより、イケメンじゃなかったらさらわれる前提が成り立っていない気がする。常日頃の書物を見る限り。――っぽくない。なんというか、筋肉ムキムキだ。あの外見で恋愛書物を好きだというから笑える。母が死んでからは女の一人も聞かない。一途なのは良いが心配にもなる。


 この言葉を聞くに誉められているんだろうが、色々乗り気はしない。というより、外交問題になりそうだ。いや、絶対なるだろう。


 「大丈夫、全員から許可はとった。あとは実行のみ!むしろ誉められたよ!良く考えついたって」


 思わず、見せられた紙を奪い見る。


 ……そんなに嫌だったのか。いや、絶対最後のが本音だ。


 そこには、各王達の署名と『一度だけの無茶だ!ヨロシク頼む。私たちはあの人敵にまわす気ないから。アイツの扱いなんてどうでもいいから。今から国の重鎮一気に消えるの困るから。隠居されたら』と長々懇願の説明が書かれていた。


 そういや、この家族スペック高くて仲良い。一夫多妻が珍しくない今、あの人達は一夫一妻だ。兄弟も多いが皆が皆仲が良い。その為か、団結力がある。今の仕事を辞めても生きていける為遠慮なく止めるだろう。――たとえ、国の上層部に食い込んでいる。つーより、上層部だとしても。――


 つまり、国がヤバいから殺ってくれと各王に頭を下げられている状態だろう。…………断れねえっ!面倒事だっ!!


 「あのクソ野郎っ!オレの気ままな暮らし返しやがれ!」


 オレは友に貰った迷惑書を親父に見せ王を交代。――忙しく王の仕事をする中、魔王として宣戦布告をした。


 くそうっ!あの野郎!


 そうして、全世界の人間が黙認しているエセ魔王の侵略劇が始まった。


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