ある平凡な電車のなかの物語
彼方の一日はどんな景色ですか?
「・・・いってきます」
誰もいない家にむかって意味も無い言葉をつげ玄関のドアを閉める。また変わらない一日が始まる。上京してもう一年は経つだろうか。相変わらず此処は人が多い、自分と同じ通勤するもの、楽しそうに友人と喋る学生、今話題の映画の話をする若者。いつもと何一つ変わらない景色だ。その変わらない景色の中を駅へと足を進める。
駅に着いた俺は、定期を使って改札を抜ける。上京したてのころは使い方がわからなかったものだ、通れなくて困っていたときに親切な人が教えてくれたんだったか。もう覚えていない。
電車に乗るとそこは通勤客でいっぱいだった。席が一つ空いていたから俺はそこに座ることにした。隣には辺りをキョロキョロと珍しそうに見ている若い女性が座っていた、東京に来たのが初めてなのだろう。俺は自分も初めはこんなだったなと思いつい笑ってしまった。女性が驚いた顔をしてこっちをみて首まで真っ赤にして「・・・すいません」と謝ってきた。
俺は慌てて謝った。
「笑ってしまってすまない、君を見てたら東京に初めて来たときの自分とそっくりでつい」
女性が少し驚いたように聞いてきた。
「え、東京に住んでる方じゃないんですか?」
「うん、俺は田舎生まれで一年前に上京してきたんだ。」
女性は少し嬉しそうにしている。
「私も一週間ほど前に引っ越してきたんです。」
俺はビックリした、女性はどう見ても20歳前後くらいの歳だこんなに若く上京してきて何をするのか気になった。
「へー、何をしに東京へ?」
女性は少し恥ずかしそうに答えた。
「えっと、私声優になりたいんです」
「声優か」
「はい、声優を目指して東京にきました。けど、色々なことがはじめてすぎて空回り中なんです」
俺は女性にたずねた
「何で声優になろうと思ったの?」
女性は元気よく答えた
「それはですね、私の声で悲しんでる人や悩んでる人を元気にしたいんです!」
俺はビックリした。ただアニメが好きだからとかの理由がくると思っていたからだ。女性は話を続けた
「私、高校の頃いじめられてたんです。それであるアニメにすっごく勇気をもらったんですその次の日に私をいじめてた人たちに一発いれてみたんです」
と、右手でグーを作りながら恥ずかしそうに言ってきた
「そしたら、次の日に謝ってきたんです。今は一緒に遊んだりしてます。ビックリですよね」
俺はグーをだした女性の勇気がすごいと思ったが、それは言わないでおいた。
「そ、そんなことがあったんだ。」
「はい、それから声優になろうと思ったんです」
夢か、夢を捨てたのはいつごろからだろうか、そう思っていたらふと喋っていた。
「今はサラリーマンをやってるけど、俺にも昔は夢があったんだ」
女性はぽかんとした顔で見てきたがそのまま話しを続ける。
「小学校の頃から野球をやってたんだ。高校では甲子園のスタメンに選ばれたことがある~高校っていうんだけど聞いたことある?」
女性は驚いていた
「え!?そこって毎年ニュースでも取り上げられてる強豪校じゃないですか!」
俺は少し嬉しくなった。
「そうそう、あそこは毎年出場してるからね。」
女性は目を輝かせて話しをきいている。
「どんな所だったんですか、~高校って!」
続きを話そうとしたとき。
「次は~駅、~駅、お忘れ物のありませんように」
降りる駅がきてしまった。
「すまない、俺はここで降りないと」
女性はすごく残念そうにしている
「そうなんですか、続きが気になりますけどしかたないですね」
女性が何かひらめいた様に手を打った。
「・・・?」
「あの、明日もこの電車に乗りますか!?」
「あぁ、通勤につかってるから明日も乗るけど」
女性が嬉しそうに言ってくる
「じゃあ、明日またこの電車で会いましょう!高校の話しの続き聞かせてください!」
俺はビックリしたが嬉しかった
「あぁ、続きはまた明日」
「ありがとうございます!」
俺は電車を降りた。女性は姿が見えなくなるまで手を振っていた。電車が完全に見えなくなったので俺は歩き出した。
また夢を見つけられそうな気がした。
いつもと変わらない一日、いつもと変わらない景色。だけど、周りが少し違って見えた。上京したての頃にもどったみたいだ。
今日はいつもとは違う一日を過ごせる気がした。
このお話しはふと思いついたので書いてみました。
お楽しみいただけましたか?
さて、一日とは長かったり短かったりしますね。楽しいことは早く過ぎます。いやなことは長く感じます。毎日を作業のように過ごしてる方はいませんか?
そんなときは空を見上げてみましょう。空にある雲の形は一緒ではありません、いろいろな形があります。面白い形の雲を探すのもいいでしょう。いつもとは違うことに気づけるかもしれません。
感想、意見お待ちしてます
最後にこの物語を読んでくださった彼方に最大の感謝を