1.『あるばいと募集中』
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この世は人類滅亡の恐れのあった二〇十二年を乗り越えた。
空からは大量の流星群が舞い降りて、地面は揺れた。
しかし、死ななかった。誰も、誰一人と。
ただ、変わったことはあった。
俗にこの世界の変貌を「天変地異」と呼ぶようになった。
「――――――おめでとうございます。お宅も“能力者”(エスパー)のお子さんです。」
「まぁ、本当ですか!嬉しいです…」
「将来が楽しみだな!!」
とある日の、とある病院で、とある夫婦に、当たり前のように告げられたこと。
能力者
ごく稀に、あの日以来から生まれるようになった。
他にも『神の力』や『星の恵み』なんても言われている。
この能力者たちの活躍により、経済は驚くほど発展。地球温暖化何ていうものは、もう無くなりつつある。
だが、いいことばかりではなかった。
そんな最高の力を持てば、やはりヒーローになりたい奴もいる。悪役にもなれるだろう。
三歳の子供の握力が、大の大人でも無理な力になることだってある。
特に子供は力の制御ができないので危険だ。それでも大人は自分の子供が立派になる、というので喜ぶだろう。
俺の親もそうだった。
平成 二〇三二年 一月一日 <東京 池袋>
天変地異から二十年経ったが、能力者の力は途絶えない。
俺ももう十八歳。
能力者専用高等学校――――――聖羅高等学校を卒業した。
この学校を卒業すれば、もう就職の道は開ける―――――――――はずだった。
同級生はみんな優等生だから、すぐに就職してしまった。
「いやマジ、ホント…どうしよー…」
小鳥遊 翔は、夕方の東京・池袋の町をぶらぶらと歩く。
『ことりあそび』って名前じゃないから。『たかなし』って読むから。ここ重要。
経済発展が著しく、もう車が空飛んでるよ。空にも信号機があるよ。
能力者の中には、空を飛べるモノもあるから、数人ほど好き勝手に飛んでいる。
俺も…あんな役に立つ能力者がよかった…
とりあえず、アルバイトでも探そう…と今日の朝から今までずっと出回っていたが…
『エスパー大歓迎!!』
『空飛ぶ能力者募集中!!』
『千里眼ほしいです』
『能力者寄って行きませんか!?』
「くそおおおおお!!!!!能力者贔屓ふざけんなぁ!!!なんで俺も能力者なのにぃぃいいいい!!!」
どのチラシを見ても、能力者のことばっかり…
普通の人が、可哀想だろうがぁああああああああ!!!
思いきってそのチラシどもを千切って踏みつける。
しかし、その時に気づいた。
地面に落ちている薄汚い紙切れに。
『白ウサギの何でも屋』
アルバイト募集中。
誰でも構いません。
「アルバイト…誰でもかまわない…だって!!」
俺はその紙を掴み、所在地を確認した。
そして、ふらふらな足取りで、その“何でも屋”を目指した。
小鳥遊 翔>
1.『あるばいと募集中』(1)を読んでいただいて、ありがとうございます^^
実は俺が主人公ではないのですよ(笑;)
きっと次出てきます。というか、俺があの野郎から主人公権略奪してやりますよ(黒笑)
次回もよかったら、見てください^^