第二夜 再会
「目は覚めたかな?久しぶり。アルス・プリーアー」
そこに立っていたのは、あのゲームの主人公だった。
その主人公の名前はミシェル。ゲームの中では臨機応変で頭の回転が速い、かつ冷静だった。
温和で協調性があり、みんなが寄り添ってくるようなタイプで、独りで何でも背負い込むのが特徴だがリーダーによくある特徴だ。しかし、二次元から三次元に具現化したものであって・・・てか姿形そのままなんだなぁ・・・20代前半?
ちょっとかっこ良いと思った。
「アルス・プリーアーって、お前の親友?」
「あぁ、アルスは俺のたったひとりの親友だ」
そんなことより、俺って死んだんじゃないのか?
「また会えて・・・嬉しいよ」
俺の手を取って泣きながら言ってきた。俺はドキッとした。俺も不意に何故か泣いていたのだ。すると
無意識に言葉を発した。
「やっと、会えた・・・」
俺はやけに瞼が重く感じて目を瞑った。
暗い海に落ちていく気がした。よくある比喩表現だが、まさにその言葉が合う光景だった。
だんだん沈んでく。おぼろげに見える光が遠ざかる。手で掴もうとする。だが無理らしい。
やがて俺は身体中が焼けるように熱くなるのが分かった。呼吸はどんどん荒くなっている。そして頭が・・・頭が・・・痛い。何かが頭の中に出来上がっていく。いや、違う。何かを、思い出している!?誰かの記憶か?なんだこれは、人がたくさん死んでる。何なんだよ!殺したのは、俺なのか!? あれは・・・ミシェルか!?
その人は空を見上げている。目が死んでるように見える。まるで、抜け殻だ。
目が薄く開けた。
「眩しっ。また同じところ?」
「室長!希輝くん目覚めたようですよ」
うわ~、今の女の人、どっかで聞いたことある声だなぁ
「おっ!目覚めたね。初めまして、僕はここの室長を務める明石秀。これからよろしくね。」
トラックに引かれたあたりから今に至るまでフラッシュバックした俺は、どこからともなく自分にはプツンと音がした気がした。
「・・・てかよろしくってどういうことだよ!ここどこだよ!?まず俺は死んだんじゃないのかよ?誰も俺の質問に答えてくれないのは何でだよっ!!」
「君、大丈夫?」
「なんでこの話の流れでそうなるんだよーっ!!」
「君って以外とおもしろい!?」
「何で半疑問なんだよっ!俺さっきから突っ込みしかやってないのはなんでだよっ!!!」
「室長、これ以上なんかやらかすと前の減給じゃ済まないかもしれませんよ」
いきなり誰かの携帯が鳴り出した。
「この着メロは・・・まさか!?・・・うぉぇ」
室長とやらが・・吐いた・・・俺は驚きのあまりにあいた口が塞がらない。あいた口から何かでてきそうだ。いや、出た。人生初のもらいゲ〇だ。まさか、大の大人がするとは誰も思わなかっただろう。
「あっ、お父さん?どうしたの?」
「ご、ごめんね。ここ汚いから別の場所で話そう。急げ!!は、早くしてくれっ」
あんだけ見た目は温厚そうでほわほわした人が、あそこまで豹変するとは・・・あの電話の相手って誰だ?
室長と俺はその部屋からすぐさま出ていった。
「ここなら、安全だね。まぁ座ってよ」
俺は言う通りに座った。てか安全ってどゆこと?
「さっきの人は奥村沙奈。美人さんだったろ。あいつがお前の電話取ったんだぞぉ。良かったな。」
あっそ。
「さっきは怒鳴ってすいませんでした。確かに美人でしたね・・・で、何で俺はここにいるんですか?俺は死んだんですか?」
「君は死んではなかった。だが、瀕死にまでさせる気はなかったんだ。君はアルスの記憶を持つもの達のひとりなんだ。だから拉致らせてもらったよ。君は今や半人造人間。もろいと言えばもろい。死ぬときは死・・・」
「冗談ですよね?」
明石は黙りこんだ。
俺はすぐさま明石の頬を殴った。
「いてて、す、すま」
バシッ
「ふざけんなよ。何で勝手にそんなこと・・・ふざけんなよ!!俺はなぁ、まだ17だぞ!?まだやり残したことがまだあるんだ・・・綾香にまだ想いを伝えきれてもない・・・かえってきて人造人間にされたなんていえるか!!!俺の身体を、俺の身体を返せよ・・・」
泣きながら殴り続けた。
そして殴るのをやめた。どうしようもないんだろう。この人を殴っても無駄だ。こんなのって・・・くそっ・・・ありえねぇよ・・・
「も、申し訳ない・・」
間があいた。俺はまだ言い足りない・・・しかし、なんとも言えない、重い空気が流れた。
いきなり明石が俺に土下座してきた。ぼそっと何か呟いた。泣いているのが分かる。震えながらも次第に声が大きくなっていった。
「・・・します。お願い・・します。この世界を、救って・・・ください。僕をいくら・・殴っても、殺しても・・・構いません。どうか、このみんながいる世界を・・・救ってください。お願いします。」
俺は耳を疑った。