静かの海
地球が滅亡して一週間がたった。
僕たちは、青い惑星がキラキラとミサイルできらめくのをモニターでじっと見守っていた。
この月面植民地で。
植民地といっても僅か六十人ほどの技術者とその家族しかいない、ドーム都市。
月の地表にはまだ酸素はない。
全てはこれからのはずだった。まだ十五年しか経っていないのだ。
やっとの思いで宇宙へと飛び出てきた僕たちをあざ笑うかのように、第五次だか六次だか戦争を始めた地球は、人の生きることが出来ない場所となった。
惑星間を移動できる探査シャトルに間に合った人間は僅かだろう。
しかもそのどれもが月を向いてはいなかった。
新たな惑星に辿り着く可能性はどれほどなのか。
一週間たった今も、月へと軌道修正したシャトルがあるという知らせはない。
月面の氷から作られた水はある。合成された食べ物も、ドームを満たす酸素もある。
ただ、希望だけがない。
ほどなくして、人が減り始めた。
ドームにいる人間は、生体反応ビーコンを装着することが義務付けられている。
プライヴァシーもなにもあったものじゃないが、外すことや停止することは厳禁だ。
常にモニタリングされている。
そのビーコンが消えていく。
一つ。また一つ。
ドームの中に死体はない。誰もここでは死んではいない。
しかし、誰でも月の地表へのエアロック開閉は可能だ。
何が起こっているのか、皆気がついている。
でも誰も騒ぎ立てはしない。
静かに、静かに、人が減っていく。
そのうちこのドームを維持することができなくなるだろう。
僕はそれを見守ろうと思う。
男でもない、女でもない、性別のない僕が。
月で生まれた最初で最後の子供として。
暗い。
この小品は2ちゃん創作発表板「小説家になろう」で企画競作するスレ
にて、お題に沿った作品を書こうとしてあがいたものです。
まだ出来たばかりのスレッドです。
参加者をお待ちしています。
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