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IRREGULAR《アン・エイビー事件編》  作者: 616
第三章※アン・エイビー猟奇大量殺人事件・事件編
24/35

4:情報提示

 ※※※※


 東シオン 

 現地時間:1985年 8月31日生まれ O型

 アジア 日本国 近畿地方某県 三島市群桜町 出身


 現地時間1999年7月31日、中学二年生の夏休み、市立中央図書館内にて異端者イレギュラーとして発症。

 以後、異世界漂流を繰り返していると思われており、明確に確認が取れているもので42件、16世界もの筋書きを改変する。

 確認された外見年齢から、以上の案件はすべて14~19歳の五年間のことと思われる。連続した違法異世界旅行は、19歳以降は消息不明として確認されていない。(※後述)死亡説あり。


(※)内縁の妻である潜伏世界の現地女性、アイリーンとの間に女児一人。エリカ・クロックフォード(当時八歳)、異端者イレギュラー発症。物語管理局・夢人課にてスカウトされる。

 アイリーンの証言により、エリカ嬢誕生の日にシオン失踪。シオンの年齢・経歴が確定される。



 ごく短期間での活動で多くの改変を可能としていることにより、何らかの影響を与える能力・またはアイテムを保有していると想定される。





 ※※※※


 C視点 12月24日 深夜



 第三部隊宿舎に存在する、通称・マルヨン実験室は、新隊長であるミゲルの仮の城として見繕われた場所だった。

 隊長室というものも存在するのだが、新しい住民が決まる間に、とある片づけの苦手な研究員が余った孵卵器で菌の保存庫にしてしまったので、急きょ出来上がってこれからも永住が確定しそうな『(仮)隊長室』である。(ちなみにミゲルは、最初に『隊長室です』と新保存庫に案内されたとき、「あれは毒をまき散らす腐海の森だ…」と憔悴した面持ちでコメントした)

 さて、今回の管理局トリビアはここまでとして。


 ミゲルは銀色のステンレステーブルの前に背中を丸めて座り、じっと頬杖をついて右の空間を眺めていた。

(【目玉を取りに来た】。東シオンは確かにそう言った。ダイモン・ケイリスクは、目玉を抜かれて死んでいた……)

 ケイリスク夫妻殺害の容疑者は、アン・エイビーということで、多くの殺害された被害者の数の中に入っている。

 死者18名、けが人82名。この数字が変動するのかもしれない。

 しかしまぁ、これの一番大きな問題は―――――――――

(『東シオン』の目撃者が、俺しかいねぇってとこか)

 15年逃げおおせ、10年隠遁した東シオンだ。『異端者』に対応しつくしたこの局内に侵入し、混乱の中に一人殺して、誰にも気づかれないで、また逃亡する―――――それをするだけの能力がある男が、唯一目撃者に選んだのが、ミゲル・アモだった。


(なんでよりにもよって俺だったんだ……? )

 ミゲルはテーブルの上で頭を抱えた。ステンレスのテーブルに、逆さまの自分の姿が映りこむ。その姿は実に滑稽だった。

 元・上司、トム・ライアンには話そうかとも思った。しかしトムの地位と人柄を考えると、どうもミゲルは二の足を踏むことになる。

 実力主義の現実主義。情報は餌、真実はエネルギー、噂話は大好物、取引と駆け引きと皮肉はライフワーク。狐のような男である。その習性は警戒すべきもの。

 トムに情報を投げる恐ろしさは、ミゲルが一番知っている。

 ケイリスクの死がきな臭いという以上、結果が予想がつかない。ミゲルにはとても恐ろしくて、あの男には話せなかった。

 とにかくにも、情報不足なのである。どこまでが安全で、誰が危険なのか。身動きが取れない。

 さらにはこんな性格が災いして、ミゲルには何でも話せて信頼できる友達というものは居ないわけだが、話が漏れる心配は無いことだけは安心できた。


「ダイモン・ケイリスクを殺したのはどいつだ……? 」


 そしてミゲルは、今日も夜更かしして思い悩む。






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