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タイトル未定2026/04/23 21:36

 妻の楓のママ友が入院したのでそのお見舞いに行くため家を留守にしたので、在宅で仕事をしている夫の和久が抜け出して娘の千佳を幼稚園に迎えに行った。

 帰り道、手をつないで二人で歩いていると千佳は急に立ち止まって、つないでいない方の手で指をさし、にゃんこ…、と言った。千佳がさしている方を和久が見ると、毛づくろいしている黒い猫がいた。そうだね、和久は答えた。それから一メートルも歩いてはいないうちに、また立ち止まって、にゃんこ…、千佳は指さして言った。老人が連れた柴犬だった。わんこね、和久は言う。にゃんこ…。千佳は目にする動物を皆、にゃんこというのだ。テレビでラッコが出ていても、にゃんこだった。パンダを見ても、にゃんこになった。和久はそのたびに、訂正する。ラッコ、ね。今のは、パンダ…、だね。

 老人が連れた柴犬が二人の側を通り過ぎた後、千佳はまた立ち止まった。指をさしたままだ。にゃんことは言わない。口が開いたままだ。和久もそちらを見た。なんだ、あれは?見たことないぞ、あんな動物は。

 体は先の柴犬ぐらい。ただ、むき出しの肌で毛は生えていない。毛のない猫とも違う。頭に小さなこぶがある、毛がない犬みたいだ。皮膚の病でああなったわけでもなさそうだ。口を閉じているのに、牙が口から飛び出している。目は小さくて、黒い。見たことがない動物ということだけが、確かだった。

 こっちを見ているのか?目が小さいせいで、視線をどこへむけているのか判別しずらい。二人を見ているようでも、見ていないようでもある。和久が千佳を抱き上げて違う道へ歩き出そうとした時だった。

 それは二人のすぐそばへ来たかと思うと、千佳を背に乗せて瞬く間にどこかへ消えてしまった。何が起きたのか即座に理解はできなかったが、すぐ千佳を連れ去った動物を探して走り出す和久。

 一時間近く走り回り汗だくになって、探したが千佳を連れた動物はどこにも見つからない。かえって、どう説明すればいいかわからないがそれでも警察に言わなければ…、楓にどう説明すれば…。憔悴した顔つきで家まで歩き出す和久。ちょっと、待て。そんなことが…。家の前に、千佳が立っていたのだった。

 ふらつく足で、どうにか千佳の側へ駆け寄る和久。小さな体を抱きしめると、何か妙な匂いがした。嗅いだことのない、匂い。まぎれもない、千佳の顔。もう一度抱きしめる。もしかして、あの動物の匂いが付いただけなのだろう。とにかく戻ってきてくれてよかった…和久が家に入ろうと千佳の手を取る。

うぅー…、千佳は小声で唸った。まぎれもなく、獣の声だった。

 

 

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