私の『人を震え上がらせる目』が、殿下にだけは効かないのですが?
幼い頃。私は突然周りから恐れられるようになった。
家族以外、誰も目を合わせようとはしない。
私と目があえばすぐに逸らすし、何よりたまに聞こえる悲鳴のようなものがとても気になった。
家族に相談をして、教会に調べてもらいにいけば『呪い』が掛けられているのだとか
私に関心がないもの、嫌悪を抱いている者が私の瞳を見ると本能的な嫌悪を覚えるというその呪いは、家族には効果がなかったけれどその他の数え切れない程の人々には大きな影響をもたらした。
あっという間に私に関する根も葉もないような悪評が流れ、私は社交界で『悪女』と呼ばれるようになる。
私に呪いが掛けられているという事は掛けた者がいるという事。
しかしその相手を突き止めるよりも前に、我が家は私の悪評に振り回されて政界での権威を落としていった。
それでも家が落ちぶれず、何とか伯爵家として残り続けることが出来たのは……突然舞い込んで来た、後に王太子となる第一王子パーシヴァル様との縁談のお陰だった。
彼は私と顔を合わせた時、大勢と同じく嫌な顔をした。
けれど何故か、それでも申し出を撤回する事はなかった。
ある日。
パーシヴァル様の婚約者としてパーティーに参加した時、自分を遠巻きに見る大勢を見て満足そうに呟いた。
「なるほど。確かにこれは都合が良いな」
「都合?」
「君のお陰で私に近づく者が殆どいない。普段は一度に三十人くらいやってきたりする」
「さ……っ!」
驚愕の数字に驚きはしたが、同時に私は納得する。
何故彼が私を婚約者に選んだのか。
それは気を緩める為の人払いを目的としたものだったのだろう。
パーシヴァル様は将来、王太子になる可能性が最も高いお方。
それに加えて文武両道で優秀な上、目を見張る程に端正なお顔立ちをしている。
普通に考えれば彼を放っておく者などいないだろう。
そんなパーシヴァル様の美貌や立場にすら勝つ私の呪いの脅威とは一体……と悲しくなる自分もいたが、呪いを掛けた者も、解呪方法も分からない今、嘆いていても仕方がない。
寧ろこの目のお陰でパーシヴァル様との婚約にこぎつけ、家の立場は守られたのだ……と、私は開き直る事にした。
婚約から半年が立った頃辺りから、私はパーシヴァル様の変化に気付くようになっていた。
初めの顔合わせや婚約してから暫くは必要最低限の義務的な会話以外が存在しなかった私達だけれど、彼が人気のない場所を望み、私の傍を選ぶようになってから、徐々に私達は世間話などをするようになった。
「君は怒らないのか」
「怒る、ですか」
「私は君の呪いを利用する為だけに婚約者にしたというのに」
「ああ……」
ある日。
パーシヴァル様は我が家の庭で寛ぎながら本を読んでいた。
私は万が一にもパーシヴァル様と目が合ってしまわないよう、背を向けながら苦笑する。
「まあ、それを言うなら私も家の為にパーシヴァル様の立場を利用していると言えますから、これは利害の一致というやつなのでしょう。それに」
私は横目でパーシヴァル様の方を見る。
彼の手や服が少しだけ見えた。
「……パーシヴァル様と一緒にいる時間は、私も好きなので」
「ただ話しているだけだろう」
「それでもですよ。私には、こうして接してくれる人の方が少ないですから。だから、こうして近くにいてくれる人がいるだけで嬉しいのです」
ハッと息を呑む気配がある。
それから暫く沈黙が続き、気を遣わせてしまっただろうかと不安に思い始めた頃。
「……すまなかった」
「え?」
低く、小さな声が聞こえた。
「私は初め、きっと嫌な態度をとっただろう」
「気にしていませんよ。呪いのせいだとわかっていますし、今はこうして普通に接してくれていますし」
「普通に、か」
パーシヴァル様が身じろぎをする気配がある。
それから彼が私の正面へ移動するのを感じ、私は慌てて顔を背けて目を閉じた。
「クラーラ、目を開けてくれないか」
「え!? い、いやそれは……。パーシヴァル様に不快な思いをさせる訳にはいきませんから」
「だが、それでは貴方自身が言った『普通』からはまだほど遠い関係だと思うが」
正面から声が聞こえてきたので私は頑なに目を閉じて耐えた。
そんな私の様子に観念したのか、パーシヴァル様は溜息を吐く。
「……分かった。今は諦めよう。困らせたならすまない」
彼の声が遠ざかり、やがて真横から聞こえるようになって、私は漸く安堵する。
パーシヴァル様を不快な思いにさせたくないから。
そういう思いも確かにあった。
しかし、何よりも大きな理由となったのは……
(……万が一拒絶されれば、きっと私は苦しくなる)
出会った当初ならまだしも、仲が深まった今のパーシヴァル様から嫌悪感を向けられれば私は暫く凹んでしまうだろう。
私はそれが怖かったのだ。
その後も私はパーシヴァル様と目を合わせる事を避け、日々を過ごしていた。
お陰で、彼の顔を見る機会は滅多にない。
それでも私達の関係は非常に良好と言えた。
いつの間にか会話の割合は大半が必要に駆られないような他愛もないものになっていたし、二人きりの時のパーシヴァル様の態度も人前に立たれるときよりもずっと柔らかかった。
パーシヴァル様はきちんと私を想ってくれている。
彼の顔を見ずともそれが伝わっていたからこそ、私は嬉しかったし、余計に彼に惹かれていった。
そうして成長した私達は王立学園へ入学した。
入学後も相変わらず白い目で見られる私だったけれど、学園生活の殆どの時間はパーシヴァル様が傍に居てくれたからそこまで気にする事はなかった。
学園の行きと帰りはパーシヴァル様がわざわざ馬車に乗せてくださっていたので、いつも二人きりだった。
ある日の帰り。
王太子となったパーシヴァル様は忙しそうにする事が増え、その疲労からかこの日は馬車の中で転寝をしていた。
お陰で私は何年振りか、というほど久しぶりに彼の顔を見ることが出来た。
いつの間にかずっと伸びた背丈に、伏せられた長い睫毛。スッとよく通った鼻筋に薄い唇。
遥か昔の面影を僅かに残しながらも、すっかり大人びた顔立ちになったパーシヴァル様に私は見惚れる。
そして思わず彼の白い頬に触れた、その時。
「……ん」
パーシヴァル様が眉を寄せた。
まずい、起きる、と勘づいた私は一瞬にしてぎゅっと目を閉じる。
数秒後。
真っ暗な視界の先でブハッと笑う気配があった。
恐らく、目を閉じる力がこもり過ぎたせいで変な顔になってしまっていたのだろう。
「何してるんだ、クラーラ」
「だ、だって、パーシヴァル様が起きると思って!」
「私は気にしなくていいと言っているのに。……全く、仕方がない子だな」
くくっと愉快そうに笑う気配があって、それから。
優しい感触が私の額に降る。
「…………へ」
「可愛いな、本当に」
小さなリップ音が聞こえた。
……何をされたのか。
数秒掛けて私は漸く理解し……それ同時に私は顔の熱が爆発的に上昇するのを感じる。
「な、な、何を……っ」
「何って、キス待ちだったんだろう?」
「ち、ちちちちがいますが!?」
「ハハハハッ!!」
瞼の先のパーシヴァル様の声はとても楽しそうだ。
彼は一頻り笑ってから、私の頬を優しく撫でる。
「クラーラ」
その声はとても優しいものだった。
「君はきっと自覚がないんだろうが、私にとって君はとっくに、かけがえのない女性だよ。権力や財などを求めるでもなく、王族としてではない『パーシヴァル』という個人といる事そのものを喜んでくれた日から」
「そ、そんなの……」
「……『大したことではない』? だが、私にとってはきっと大切な事だったんだ。
君が傍にいてくれる存在を喜んだように、私は私自身を見てくれる人を無意識に望んでいたのだと思う。
そしてそんな想いを君が埋めてくれた。……愛するきっかけなんてそれで充分だろう?」
返せるような言葉が思いつかなかった。
何故なら、彼にとっては些細な事だっただろう傍に居てくれる『だけ』の事が、どれだけ私の心を救ったのかを、私は知っていたから。
「急かすつもりはない。だが、いつか……君を愛しているという私の言葉を信じて欲しいと思っているよ」
パーシヴァル様の優しい言葉に、思わず目頭が熱くなるのを感じて、私は唇を引き結ぶ。
そして小さく頷いたのだった。
***
二年生になった。
パーシヴァル様は生徒会長に就任し、私達は登下校の時間がずれるようになった。
学園で、パーシヴァル様と過ごす時間は必然的に減り、私が孤立する事も増える。
そんな頃の事。
私がある女性を虐めているという噂が流れるようになった。
伯爵家のジーニー様。
昔ならさておき、現在の政界に於いて我が家とジーニー様の家の影響力は大きな差がある。
確かに我が家とジーニー様の家は昔から派閥が異なる政敵といえる立場だが、強い影響力を持つ家柄のジーニー様を私が虐めれば私は何の成果も得ることが出来ないままただただ家の評判を落とすだけ。
そんな事をするわけがないというのに、長年に渡って刷り込まれた『クラーラは悪女である』という認識が偽りの言葉を信じ込ませてしまった。
どうにかしなければならないと思うものの、私がどう動こうが悪手。
手詰まりの現状に悩むと同時、この噂はパーシヴァル様の耳にも入っているのだろうかと不安になる。
もし、耳に入っているのであれば、彼はどう思っているだろうか。
万が一にも失望させてしまっていたら……と、そんな不安ばかりが頭を過った。
ひそひそと嘲笑混じりに囁かれる声を浴びながら、私は学園生活を耐える。
そして、授業が終わると同時に逃げるように馬車へ向かい――
「クラーラ!」
その途中で、私は呼び止められる。
パーシヴァル様だった。
人となるべく目を合わせないようにと俯いていた私の手を、パーシヴァル様は掴む。
視線を落としたまま、私は彼へ体を向けた。
「パーシヴァル様……」
「クラーラ……」
顔色から何かを感じ取ったのだろうか。
パーシヴァル様は私の頭に手をのせると、優しく撫で始めた。
「大丈夫だ」
そのたった一言で、張り詰めていた緊張の糸が緩む。
少なくとも、パーシヴァル様は私を信じてくれている。それが分かったお陰だった。
私は深呼吸を繰り返す。
「少しは落ち着いたか?」
「……はい。ありがとうございます」
「いいや。……クラーラ、来てくれ」
それからパーシヴァル様は私の手を引いて歩き始める。
そして辿り着いたのは――生徒会室だ。
パーシヴァル様は生徒会室の扉を開け、私と共に入室する。
「戻った」
「おかえりなさ……うわっ」
私が思わず顔を上げてしまうと、パーシヴァル様の背中の先で生徒会の役員の面々が揃っていた。
……いや、書記のジーニー様だけがいない。
そんな中、私の目を見てしまった数名が驚いたり、顔を強張らせたりする。
私はそれに気付いてすぐ、慌てて視線を落としたが、既に手遅れだ。
今流れている噂も相まって、もしかしたら寄り心証を悪くさせたかもしれない。
そう思い、内心気が気ではなかったのだが……。
ハラハラとしている私の耳に届いたのは随分と能天気な声だった。
「マージですねぇ、これ。目見た瞬間、ぞわってしましたよ」
「『クラーラ様と出来るだけ鉢合わせない事』『鉢合わせたとしても顔を見ない事』……。殿下の指示通り動いていたお陰で薄れていたはずの先入観を急に思い出しました」
明るい男子生徒の声に続くように、落ち着いている女子生徒が同意する。
他の生徒も同様の反応だった。
彼らの様子を確認してから、パーシヴァル様は口を開く。
「これが彼女に掛けられた呪いだ。大勢が抱いている嫌悪の要因が彼女の行いにない事は証明できただろう」
「そうですねぇ、うんうん」
「ぱ、パーシヴァル様、えっと、これは一体……」
都合の良い夢でも見ているかのように、あっさりと受け入れられる自分の境遇。
会話の流れから鑑みるに、この場の誰もがクラーラを疑ってはいないようであった。
「だから大丈夫だと言っただろう? この場に君の敵はいない。彼らは君の呪いを解決する為に手を借りていた私の仲間だ」
「殿下ってば、入学してからすぐ俺達に声を掛けて、情報収集やら監視やら呪いの調査や研究やら……兎に角色々使いっ走りにしてきたんですよ」
「貴方、そろそろいい加減にしないと不敬で首が飛ぶわよ」
「この件が終わるまでくらいなら見逃そう。お陰で……解呪の手掛かりが掴めたのだから」
「……え」
パーシヴァル様の声は自信に溢れていた。
僅かな期待が宿り、聞き返すと――
ガチャリ、と音を立てて生徒会室の扉が開かれる。
そこから姿を見せたのはジーニー様だった。
「ああ、丁度良かった。今から貴女の話をしようと思っていたのだが」
そう切り出したのはパーシヴァル様。
しかしジーニー様は生徒会室にいる私を見て、そして周囲の人達の空気から何かを感じ取ってか、静かに後退る。
そして彼女は後ろ向きに歩き、廊下まで出たかと思えば――ワッと泣き出したのだ。
「酷いです、クラーラ様! 皆さんを騙して私を孤立させようとするなんて!」
その騒ぎを聞きつけてか、あっという間に近くにいた生徒達が集まって来る。
そして開けっ放しの扉の先にいる私を見て誰もが冷たい目つきになった。
「私、クラーラ様に虐められて、とっても怖くて……っ、なのに、私を悪者みたいに言いふらしたんですね!」
彼女は駆け寄ってきた大勢を味方に付けようと声高らかに言う。
けれど私の心は不思議な程に落ち着いていた。
パーシヴァル様は……そして生徒会の方々が私を疑っていないという事がわかり切っていたからだろう。
そして。
「その件なのだが、ジーニー嬢。私は未来の王太子妃となったクラーラに密かに護衛を付けていた」
「え!?」
「……え!?」
食い気味に私が聞き返してしまう。
遅れてジーニー様の声も上がった。
「当然だろう? 彼女はただの伯爵令嬢ではないのだから。そして勿論、彼女が道を踏み外しそうになれば止めに入る事も許可していた。だが結果は……一切問題行動は見られなかったという。……おかしいとは思わないか?」
「そっ、それは……」
「それと……この場に偶然居合わせた者へ問いたい」
パーシヴァル様は言葉を失うジーニー様をおいて、周囲の生徒へ語り掛ける。
「貴方達の半分以上は長年悪女と批判されてきた彼女を影で嘲笑っただろう。それを今咎めるつもりはない。だが……ならば何故、クラーラの姿を目の当たりにしたときだけ、彼女の顔を見た時だけ、その大きな態度が失われるのだろうか。何故大きな恐怖や嫌悪感を抱くのか。……不自然ではないか?」
何名かがハッと息を呑む。
そして何かに気付いたという空気は更に周囲へ伝播していき……生徒たちの表情は困惑したものへと変わっていく。
「さて、以上を踏まえた上で本題に入ろう。ジーニー嬢。貴女の家は……クラーラに呪いを掛けたな?」
「な……っ!」
ざわめきが起こる。
ジーニー様は顔を蒼白とさせ、口をパクパクと動かした。
「な、何のことだか――」
「勿論この場で話さなくても私は構わない。こちらはいくつかの伝手を使い、既に裏が取れている状態だからな。お陰で後数刻後には、貴女の家には王宮からの捜索が入る事になっている。だが……全てが暴かれる前に素直に白状するのと、全てを暴かれた後で話すのとでは罪の重さが左右される事は……貴女ならばわかるのではないだろうか」
「ヒ――」
「生憎と、こちらは貴女に時間を割いてやるメリットも殆どなくてね。悪いが、あと五秒で判断してくれ」
パーシヴァル様はその後無慈悲にカウントダウンを始める。
その数字が減っていくにつれて、ジーニー様の全身の震えは大きくなり、そして……
「…………っ、お、おっしゃる通り、です……ッ」
その数字が『1』を刻んだ時、ジーニー様は掠れた声でそう言ったのだった。
***
その後。
ジーニー様はパーシヴァル様が事前に手配していた騎士に捕らえられた。
彼女がその場から去るや否や、生徒会の役員を含め、多くの方からの謝罪を私は受けるようになった。
そのお陰で中々身動きが取れず困り果てていると、そんな私を見かねてか、パーシヴァル様が私の手を引いてさっさとその場から離れた。
「貴女の呪いは、ジーニー嬢のお父君が掛けたものだった。当時同等の権威を誇っていた政敵の娘をだしに使い、君の家の権威を落とそうとしたのだろう。呪いは術者本人の意志か死亡によって解呪する。少なくとも明日には解けているだろう」
「……そう、ですか」
「黙って話を進めてしまってすまない。君に言えば気にしてしまうと思ったし……これは、私の自己満足だったから」
「いいえ。ただ、長年の悩みでしたから、こうもあっさり解放されると聞くと……実感がわかなくて。…………ありがとうございます、パーシヴァル様」
「……言っただろう。君が恩を感じる事ではない。私が、君の寂しそうな顔や悲しそうな顔を見たくなかっただけだよ」
気が付けば、王族の馬車の前までやって来ていた。
「さて、クラーラ」
パーシヴァル様が私の前に立つ。
普段の癖から視線を落とせば、私の目線の先に手が差し出される。
「君を苦しめてきた呪いとは今日でおさらばだ。ならば私が今、どれだけ君を愛しているのかを証明できるのも……この瞬間が最後だろう」
「証明……?」
「顔を上げてくれ」
その言葉が意味する事を、私はすぐに理解した。
彼が望み、私が躊躇い続けてきた選択。
「君に掛けられた呪いなどで揺らぐような想いではないと……君を心から愛していると私は知って欲しいんだ」
彼はずっと私の為に動いてくれていた。
学園に入ってからの彼を突き動かしてきたのは、他でもない私の存在だ。
その事実を認めない訳にはいかない。
ここまでして、私を絶望から救い上げてくれた彼の愛を、どうして信じられないなどと言えるだろう。
「信じてくれ、クラーラ」
――信じるには充分すぎる。
それだけ多くのものを私はもらっていた。
私は意を決して顔を上げる。
美しい――金色の瞳が、私を真っ直ぐと見つめている。
かつて見た、丸く大きな目は成人男性らしく凛々しいものになっていたけれど、それでも確かに――かつて見た事のある瞳だと確信できた。
金色の瞳がゆっくり細められる。
それはかつての様な嫌悪から来るしかめっ面ではない。
ただただ眩しいものを見つめる様な、愛おしいものを見る様な……慈愛に満ちた、どこまでも優しい視線。
不意に、私の瞳から涙が零れ落ちた。
「…………ばかだ、わたし」
差し伸べられた手をしっかり握り返しながら笑みを零す。
「こんな事なら、もっと……もっと早く、言う事を聞いておけばよかった」
「だから言っただろう?」
全く、と呆れるように眉を片方持ち上げるパーシヴァル様。
変化する彼の表情の全てが愛おしい。
「もう二度と、目を逸らさないでくれよ。クラーラ」
「っ、はい……パーシヴァル様」
パーシヴァル様が私の腕を引く。
優しく抱き寄せる彼の腕に身を委ねながら、私は零れ落ちていってしまいそうな程の幸福を噛み締めていた。
「愛しています、パーシヴァル様」
「ああ、私も愛しているよ。クラーラ」
私達はすぐ近くから見つめ合い、それから深い口づけに溺れるのだった。
最後までお読みいただきありがとうございました!
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それでは、ご縁がありましたらまたどこかで!




