表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
マットなぼくとPPな彼女  作者: kats(仮)


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

4/18

距離感 side IKU

地味な男の子とキラキラした女の子。

普段の生活からテリトリーの異なる二人が、気がつけばお互い気になるように。


※ 保険の為R15設定にしてあります。

 土曜日の午後1時半。

 学級委員の仕事をしたご褒美に、今日は担任の二階堂(にかいどう)先生がお昼をご馳走してくれることになった。

 お店は友人たちともよく利用している、安いけどおいしいファミリーレストラン。

 最近ちょっとダイエットをしてたんだけど、今日は頑張ったし、大好きなカルボナーラとアイスミルクティーを頼んじゃった。

 いつもなら他のクラスの学級委員のみんなと、今日の仕事の話や、ちょっとした雑談をしながら食べるところなんだけど……。


 なぜか今日は東雲(しののめ)くんとふたり!

 ふたりきり!!

 きゃーー!!!


「それじゃあ、冷めないうちに食べよっか?」


 ……ちゃんと普段通りに言えたかしら。

 言えたはずよ。

 好きな人とふたりきりとはいえ、落ち着いてわたし。

 この機会に色々と東雲くんのことを知っちゃうのよ!


 それで、一体どうしてこんな機会ができたのかというと……。




 毎週土曜日の放課後は、学級委員の定例集会がある。

 でも今日に限って、なぜかわたし以外はみんな用事で欠席。

 ちょっとした雑用をする予定だったらしいんだけど、さすがに人手が足りないってことで、二階堂先生が急遽ヘルプを頼んだのは、なんと東雲くん!

 いつも通り教室で読書をしていたところを、先生がちょっと強引に、お昼をご馳走するってことでお願いしたの。

 わたしにとっては東雲くんが一緒にいるってだけですでにご褒美!

 正直はじめて学級委員になって良かったって思ったわ。


 大きな荷物を運んでもらったり、高いところにある資料を取ってもらったり。

 普段見れないレアな東雲くんの姿を見ることができるだけで、ちょっとめんどくさいなって思うこともある委員の仕事が、至福の時間に変わるんだから、恋ってすごいのね。

 でも雑用は思っていたよりも大した量じゃなくて、あっという間に終わっちゃった。

 ご馳走になるファミリーレストランまでは、二階堂先生の車で移動。

 なんとかミニって、CMで可愛いぬいぐるみが話題になってた軽自動車。

 先生の私物の荷物があったせいで座席が少し窮屈だったけど、東雲くんと近かったからOK!

 東雲くんの髪からほんのりシャンプーの香りが。

 東雲くんあのメーカーのシャンプーを使ってるのね……わたしも同じのに変えようかしら。

 ……ってわたしの匂いも東雲くんにわかっちゃう!?

 だ、大丈夫よね……ちゃんといつも通り身だしなみチェックしてきたし!

 わたしが東雲くんを感じる時、東雲くんもまたわたしを感じているのだ……気をつけよう。


 そんな感じでファミレスについて、注文が済んだところで、二階堂先生のスマホに着信が。

 少し前に流行ったボカロ曲、小学校の頃よく聴いてた曲。

 通話が終わると先生はこう言ったの。

「すまん! 用事を一つ忘れてたから、急いで学校に戻らないといかん! 支払いは済ませておくから、昼飯は二人で食べてくれ! 今日はありがとうな、二人とも!」

 そして自分が注文したごはんも食べずに、大慌てで出て行っちゃった。


 というわけなのよ!


 愛しの東雲くんの方を見ると、何やら考え込んでいる様子。

 隣にわたしがいるってのに、ちっともドキドキしたりする様子は無い。


「どうかした? 東雲くん」


 少し下から覗き込むように、上目遣いで彼の目を見つめる。


「いや、なんでも。先生の用事ってなんだろうね」

「なんだろうねー。もっと早く思い出してくれていれば、そっちの用事もみんなで済ませられたのにね」

「先生が頼んだ分どうしよう……テイクアウトできるかあとで聞いてみようか」


 あーもーくやしー!

 必殺の角度で見つめたのに、超冷静に返されてるんですけど!

 でもそこがまたかっこいいんだけど!

 もー!もーーーーーー!!

 自分勝手なちょっとしたイライラを収めるため、くるくると大好きなカルボナーラをフォークで巻き取り口に運ぶ。


「ん! 美味しい! わたしここのカルボナーラ大好きなんだ♪」


 おいしいごはんはどんなストレスも吹き飛ばしてくれると思う!

 我ながら単純である。


「……可愛いなぁ」

「ふぇ!?」


 突然の爆弾発言!

 あれ!?さっきのアプローチ効いてた!?


「そのパスタ盛り付けも可愛いよね。」


 パスタかーーーーい!!

 パスタを褒めるのにそんな溜めいらーーーーん!!


「うん、そうだね! 飲食店のごはんって盛り付けもきれいで、見た目から美味しそうだよね」

「ね」


 ドキッとして味わからなくなったんですけど!

 勘違いしたわたしが悪いんだけど……東雲くんってもしかしたら天然のたらしなのでは!?

 もー!


「きょ、今日は急にお手伝いを頼んでごめんね。東雲くんにも予定があったよね」


 ちょっとどもっちゃったじゃん!

 もー!もー!もー!


「予定なんかないよ。今日もいつも通り本を読んでただけだから」

九重(ここのえ)さんと一緒に仕事も楽しかったし」

「ほぇっ!?」


 今一緒で楽しかったって言った!?

 思わず変な声が出ちゃった!!

 自分史上初!!


「わ、わたしも東雲くんと話ができるようになってうれしいよ。同じクラスでも今まであんまり話した事なかったもんね」


 あ。話をするだけでうれしいって、攻めすぎた!?

 東雲くんが特別って気づかれちゃうかも。

 でも気づいて欲しい!

 みたいな!


「まさか一緒にごはんを食べることになるとは、全然思ってもいなかったよ」

「ほんとだね」


 思っていいのよ!?

 むしろ考えてほしい!

 東雲くんの好きなもの、わたしが毎日作ってあげたい!

 ってのはさすがにちょっと重いかしら!?


「あ。粉チーズかけるの忘れてた」

「粉チーズ?」

「ちょっと前を失礼……あ」

「!!」


 そんな事を考えていたら、東雲くんが卓上の粉チーズに手をのばし……。

 わたしの手に東雲くんの手が触れ……って反射的に手を引っ込めちゃったーーーーーっ!!!

 うれしかったのに!

 うれしかったけど!!

 突然だったから!!

 違うの!!

 絶対勘違いさせちゃう!!

 やだ!!

 やではないんだよ!?


「あ。ごめん、手が当たっちゃった」

「だ、大丈夫だよ。わたしの方こそ声をかけてもらったのにごめんなさい……! え、えへへへへ……」


 なんて冷静! 最高にクール! それが今は極寒に感じる!!

 ただのクラスメートと手が当たっただけって事だもんね!

 何ともないよね!

 それがかっこいいんだけど!

 ちょっと動揺してほしかったという矛盾な乙女心!

 ……はぁ。


「んと、ドリアに粉チーズをかけるとおいしいの? わたしやったことないかも」


 もう普通に会話を続けるしかないじゃない。


「おすすめの食べ方アレンジってネットで見つけたんだ。やってみたら結構おいしくて、たまにやってるんだけど」


 東雲くん、自分で調べて新しいことにチャレンジしてるんだ。

 そこに痺れる憧れる!

 わたしは友人から教えてもらった事ばっかりだなぁ。


「あ。一口食べてみる?」

「ふぇっっ!? いいい……いいの!?」


 またわたしの口から不思議な音が出た!

 今日は自分史更新の大盤振る舞いか!

 でもちょっと食べてみたかったから、一口もらおうかな。

 友人ともいつも普通にしてる事だし、わたしの気持ちがばれたりはしないよね。


「じゃあ、あーん♪」


 ってこらーーーーーーーーーーー!!

 自分からあーんて!!

 わたしのおばか!!!

 友人とするって言っても、同性の子でしょーーー!!

 ほら、東雲くん固まってるじゃない!!

 これ絶対に引いてる!!

 引かれてる!!

 おわた!!


「あーん」


 いやっほぃ!?

 東雲くんにあーんてしてもらっちゃった!?

 間接ちっすなのに気にもされてない説!!

 それはそれでどうなのわたし!


「あむ……もぐもぐ……」

「あ、おいしい♪」

「追いチーズありだね!」


 美味しいものに弱すぎでしょわたし!

 単純の極み!

 今はあえて美点てことにしときたい!


 でもこれってどうしたらいいのかしら。

 いつもなら一口もらったらお返しにわたしからも一口あげるんだけど……。

 やっぱりお返しはした方がいいよね。

 お返しお返し……ただのお返しなんだから意識したらダメ!

 一口あーんてすればいいの。

 行く! 行く時! 行けば! 行け! (いく)

 活用形って早口言葉みたい!

 わたしの名前込みで!


「じゃあお返し……はい! あーん♪」

「あーん……ん! おいしいね!」


 ほら、ただのお返しなんだから、東雲くんも普通にしてる。


「良かった。カルボナーラとドリア、わたしたち二人ともチーズが好きなんだね」

「異性との交際や結婚って、食べ物の好みが合うかどうかが結構大切らしいね」


 こ、交際!

 けけけっけっ結婚!?

 落ち着いてわたし!

 東雲くんはあくまで一般論を述べただけで、わたしたち二人の事を言ったわけでは!!

 ないわよね!?

 自意識過剰よわたし!!


「え!? あ! そうなんだ……ふぇー」

「あ。いやその! ぼくと九重さんがその……そうというわけではなく! でもいやというわけではなく! いや、げふんげふん!!」


 あれ? 東雲くんもちょっと慌ててる?

 それに少し顔が赤いような気も……?


 って待って!

 その前に絶対わたしの方が赤くなってる気がする!!

 すごく頭が熱っぽいし、胸もドキドキしてるし!

 お返しって自分を言い聞かせてたけど、傍から見たらこれって恋人ムーブなのでは!?

 なんかもうカルボナーラも味がしない……!


「「………」」


 結局わたしはその後食べ終わるまで、一言も話すことができなくなっちゃった。

 ごめんね東雲くん……!!


 食べ終わってお店を出るとまだ陽は高くて、ぽかぽかと暖かい。

 付き合ってたらこのままデートとかするんだろうなー。

 でもわたしは想像しただけで言葉が出なくなったへたれ……。

 このままここで解散かな……。


 なんて事を考えていたら、東雲くんが声をかけてくれた。


「じゃあ、また明日学校で。ぼくJRだからこっちだか……」

「あの! ……わたしもJR」


 とっさにそれだけ返事をするわたし。

 食い気味に。

 同じ方向だから一緒に歩きたい一心で……!


「じゃあ駅まで一緒に行く?」

「うん……!」


 駅に着くまでの間も一言も話せなかったけど、さっきまで隣で話してたせいか、並んで歩く距離は少しだけ……ほんの少しだけ以前より近づけるようになったと思う!

 間接キスもしたし、もう限りなく恋人の距離になったのでは!


 物理的な距離だけだけど……ね!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ