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【第8話】チョン・ソユン

世界で唯一無二のS+級ハンター、チョン・ジウ。

覚醒したその瞬間から国内はもちろん、世界ランキングを一気に支配して華々しくデビューした彼女は、誰もが憧れる存在だった。


……だが、家の中ではごく普通の長女、そして──


※重度のシスコン患者である。


「ユンユンー、今なにしてるの?」


ジウには4歳年下の、たった一人の妹――チョン・ソユンがいた。

ジウにとってソユンは……痛いほど大切な存在であり、かけがえのない妹だった。


◇ ◇ ◇ ◇


14年前、ジウがまだ小学生だったころ。


当時のジウは、ソユンを正直少し面倒くさがっていた。

4歳という絶妙に大きい年の差ゆえ、同い年の友達と遊ぶほうが楽しかったのだ。

その日も変わらず――


ソユン:「お姉ちゃん……わたしも一緒に遊びたい……」


ジウ:「また今度ね。今日は友達と約束あるから。」


いつも先に手を伸ばすのはソユンの方だったが、

ジウはいつも友達を選んだ。

そうして時間が積み重なり、ソユンはもう「一緒に遊ぼう」と言わなくなった。


――そして、その日。事件は起きた。


友達と遊び帰ってきたジウは、人生で初めて両親にひどく叱られた。

ひとりで空き地でボール遊びをしていたソユンが、車にはねられてしまったのだ。


ジウは怖くて悲しかった。叱られたからじゃない――

「もう少し私が気を配っていれば、こんなことにはならなかったのに」

幼い心にその後悔が深く突き刺さった。


病室のベッドで横たわるソユンに、ジウはおずおずと尋ねた。


ジウ:「……どうして“遊ぼう”って言わなかったの?」

「いつもみたいに誘ってくれればよかったのに……」


ソユンはゆっくり目を開け、小さくつぶやいた。


ソユン:「どうせ一緒に遊んでくれなかったじゃん……。

わたしが“遊ぼう”って言っても、いつも無視してたくせに……」

「それに……なんでわたしから誘わなきゃいけないの。

……わたし、お姉ちゃんの妹じゃないもん。」


そのひと言が、ジウの胸を打ち抜いた。

その日を境に、ソユンはようやくジウの“妹”になった。


◇ ◇ ◇ ◇


――現在。


いつのまにかジウは、ソファでスマホをいじっているソユンの隣に、そっと横になっていた。


「ユンユン、明日なにしてる? お姉ちゃんと一緒に出かけようか?」


ソユンはスマホから目を離さずに答えた。


ソユン:「明日? 映画観に行くけど。」


「えっ? 友達、明日みんな予定あるって言ってなかった?」


ソユン:「友達じゃない……新しく知り合った人。」


「……まさか、男?」


ソユンは無言のままコクリと頷いた。


「だ、ダメ!! 絶対ダメだから!」


ジウは勢いよく立ち上がり、ソユンの前に立ちはだかった。


ソユン:「なにそれ。まだそういうのじゃないってば。」


“まだ……?!”

一気に慌てたジウは、ソユンの腕を掴んだ。


「そ、その代わりにお姉ちゃんとショッピング行かない!?」


ソユン:「お姉ちゃんにお金なんてあるの?」


「い、今度ウンサジャにブラックカードもらったもん!」


ソユンは、ジウが覚醒者だと知っている数少ない一人だ。

実はソユン自身もF級覚醒者だが、最下位なので気にしていなかった。


ソユンは吹き出しそうになりながら笑った。


ソユン:「じゃあ……服でも見に行こうか。」


二人は最高級デパートに入り、ショッピングを開始した。

もちろん、バッグに入っていくのはソユンの服や靴ばかり。


「ユンユン、もっと欲しいものない?」

ジウはソユンの紙袋を平然とインベントリにしまいながら聞いた。


【 星の星位が「インベントリを買い物袋代わりにするのはお前くらいだ」とぶつぶつ言っています 】


ソユン:「お姉ちゃんは何かいらないの?」


「うちのお姉ちゃんは、妹が欲しいものを買ってあげるのが一番楽しいの~」


ソユン:「なにそれ……」


ソユンはあきれながらも楽しそうに微笑んだ。


――今なら、聞けるかもしれない。


「ねぇ、ソ――」


その時だった。

背後から低く、しかしはっきりと響く声がジウの耳に届いた。


???:「……無名。」


ジウは思わず足を止めた。

それは単なる噂話ではなかった。

まさしく彼女を指して呼ぶ声だった。


ソユン:「どうしたの?」


立ち止まったジウを不思議そうに見上げるソユン。


「あ、えっと……

ちょっと急用を思い出しちゃってさ。」


「ユンユン、ごめん。お姉ちゃん、用事ができたから先に帰ってて!」


ソユン:「また変なことじゃないよね?」

ソユン:「まあいいけど、遅くならないでよ。最近お母さんピリピリしてるから。」


「もちろん! 本当にごめん!

帰ったらチキン買ってあげるから!」


ジウは急いでごまかし、ソユンを先に帰らせた。

妹の背中が見えなくなったのを確認したジウは、ゆっくりと振り返り、声の主へと歩み寄った。


――やはり、その人物はジウを真っすぐ見据えていた。

ジウは慎重に距離を詰めながら、その正体を探り始めた。




【塔攻略状況】


国家:アメリカ合衆国(27階)

国家:日本(17階)

国家:韓国(12階)

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