表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
7/34

【第6話】アビスゲート(完)

【スキル:感知を使用します】

【周囲のモンスターは感知されません】


(……おおよそ片付いたな。)


周囲のモンスターを一掃したジウは、そのままウンサジャのもとへ駆け寄った。


ジウ:「どういう状況だったの?

たかがこの程度で押されるなんて、らしくないじゃない。」


ウンサジャ:「そうだったさ……ボス部屋に入るまではな。」


ジウ:「……ボス?」


ウンサジャ:「あいつはスキルを使う。

対象を最も苦痛な記憶の中へ閉じ込めてしまうんだ。そして――」


ジウ:「……デバフ系か。」


ウンサジャ:「ああ。スキルだけじゃない。

魔力そのものがとてつもなく強い。まるで……初めてお前に会った協会で感じたあの魔力のようだった。」


ジウ:「ふん。どうせ私の方が強いけどね。」


ウンサジャ:「それにしても……お前、正体を隠したいんじゃなかったのか?

一般人はともかく、S級ハンターなら見抜くかもしれん。

幻影の魔法を使っているとはいえ。」


ジウ:「別にいいでしょ。どうせこの様子じゃ誰も気づく余裕ないし。

ここの連中、もう気力が尽きてる。私を見分ける暇もないよ。」


ジウ:「とにかく、ここで待ってて。ボスってやつ、さっさと片付けてくるから。」


ウンサジャ:「ジウ!」


立ち去ろうとしたジウの腕を、ウンサジャが掴んだ。

その瞳は不安をにじませていた。


ウンサジャ:「言っただろう。あのボスはトラウマを抉ってくる。

お前にとっては……」


ウンサジャは一瞬、視線を伏せた。

――父の記憶を呼び起こされるだろう。いまでも心の奥底を刺激する傷。


ジウ:「大丈夫。もう何ともないから。

……それより、見る限りじゃ一番ダメージ食ってるのはウンサジャじゃない? らしくないね。」


ウンサジャ:「獅子が敵に背を向けて隠れるわけにはいかないからな。」


ジウ:「ほんと、バカみたい。」


ウンサジャ:「それと……いい加減、“銀執事”はやめないか。

せめて“銀獅子”って呼んでくれ。」


ジウ:「私にとっては“銀執事”が一番しっくりくるんだよ。」


【スキル:召喚を使用します】


ジウ:「行こう、アーシャ。」


ジウはドラゴン・アーシャを呼び出し、ボスの待つ領域へ飛び立った。


ウンサジャ:「……相変わらずだな。」


長く彼女を見守ってきたウンサジャは、ジウが怒りを隠そうとしていることを悟っていた。


(あの人のトラウマは一つきりだ……)


数年前、協会地下二階で起きた魔力暴走事件。

王と呼ばれるほどの存在でも、初めから魔力を完璧に操れたわけではなかった。

あの時、ウンサジャはジウを守るために全身を血まみれにし、死線をさまよった。

――いまだに「守れなかったかもしれない」という罪悪感と恐怖に縛られているのだろう。


(バカ……悪いのは私なのに、なんであの人が罪を背負うのよ。)


【星の星位が「うちの子のせいじゃない」と優しく囁きます】


(分かってる、星さま。)


【星の星位が「デバフ程度、このお兄ちゃんが全部防いでやる!」と豪語しています】


(……星さま、それって“お兄ちゃん”って呼ばれたいだけでしょ?)


【星の星位が勢いよくうなずきます】


(しょうがないな……二十年後くらいに考えてあげる。)


【星の星位が「そんなの聞いてない!」と必死に抗議しています】


ジウはその必死な様子に、少しだけ頬を緩めた。

(ふふっ……きっと私を元気づけようとしてるんだな。)


そう思った瞬間、ジウはふと星位のいつもの冗談を思い出し、ほんの一瞬だけ表情を曇らせた。


(……まさか、冗談じゃないのかも?)


――トンッ。


アーシャが大地へ降り立つ。


ジウ:「お疲れ、アーシャ。」


アーシャはジウの感情を感じ取ったように、頬を擦り寄せて慰めるように鳴いた。


【スキル:召喚を解除しました】


(さて……あのクソボス、狩りに行こうか。)


遠くからでも感じる凶悪な魔力。

だがジウは怯むことなく、まっすぐその方角へと歩み出した。


――ダンジョンボス:ハイオーク(High Orc)と遭遇しました――


グオオオオオ――ッ!!


目が合った瞬間、奴の忌々しい魔法が発動したのを感じた。


【警告:デバフスキルを受けました】

【星の星位がデバフを弱体化します】


(ありがとう、星さま。)


弱体化されたとはいえ、視界の中に父の幻影が浮かび上がった。

ジウは少し寂しげに微笑み、静かに呟く。


ジウ:「ごめんね、パパ。

こんな奴に利用されちゃって。」


グルルルルルアアア――ッ!!


魔法が効かないと悟ったハイオークが激昂し突進してくる。

ジウは軽やかに身をかわし、すかさずスキルを発動した。


【スキル:雷撃を使用します】


オークの腕へ雷が落ち、轟音とともに悲鳴が響く。

だがジウは構わず次の動きを繰り出した。


【スキル:魂牢を使用します】


ハイオークの魂をそのまま監獄へ封じ込める。

これから幾千年も、全身が引き裂かれる苦痛を味わい続けるだろう。

――王の逆鱗に触れた代償は、甘くない。


――ダンジョンボス:ハイオークを討伐しました――




【塔攻略状況】


国家:アメリカ合衆国(27階)

国家:日本(17階)

国家:韓国(12階)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ