【第28-1話】選択: 食べ物を渡す。
インベントリからリンゴを取り出したジウは、それをトイレの個室にそっと置いた。
「さあ、花子。あなたのために食べ物を持ってきたよ。」
すぐに、ゴボゴボッ——と水が流れる音とともに、便器の中から手が飛び出した。
続いて姿を現した花子は、もはや人間とは呼べない異形の存在だった。
ジウは慌てて銀獅子の背後に隠れる。
だが、花子が求めていたのは食べ物ではなかった。
花子: 「私が欲しいのは……こんなモノじゃない!!!」
その叫びがトイレ全体に響き渡った。
銀獅子: 「ならば、お前の“怨念”は何だ?
話してくれれば、俺たちが解いてやる。」
花子: 「私は殺された!
一人で学校に来ていた時、男に襲われて、殺されて……そしてこの場所に閉じ込められたのよ!」
銀獅子: 「ならば、その男を我々が——」
花子: 「ククク……もう殺したわ。そんな奴、もういないのよ。」
「ふぅん……なるほどね。
本体を見たら逆に慣れちゃった。もう怖くないや。」
ジウは銀獅子の背から出て、冷ややかに笑った。
「これは“怨霊化した鬼”ね。
たぶん、こいつがこの階のボスだ。」
花子: 「お前たちも……殺してやる!!」
その瞬間、ゾンビのようなモンスターたちがトイレに押し寄せた。
「銀獅子、この子は私がやる。
雑魚は任せた!」
銀獅子: 「了解だ。」
【 スキル:咆哮 】
銀獅子の咆哮が響いた瞬間、モンスターの群れが一瞬で崩れ落ちた。
まさに獅子の名にふさわしい咆哮だった。
「さて、こっちもそろそろ終わらせよっか。」
花子: 「余裕ぶって……二人とも殺してやる!!」
【 スキル:剣聖 】
ザシュッ——
ジウが花子の腕を軽く切り落とすと、
すぐさま連撃を叩き込んだ。
「余裕ってのは、こういう時に使う言葉よ。」
【 スキル:抜刀 】
ギャアアアア——!!
不気味な悲鳴と共に、花子の身体は粉々に砕け散った。
ちょうどその頃、銀獅子もすべての敵を片付け、振り返った。
銀獅子: 「終わったか……と思ったら、もう倒したのか。」
「うん、これなら外の時間で一時間もかかってないね。
さ、ちゃっちゃと片付けて帰ろっか〜。」
『 おめでとうございます! 国:日本 星位の塔 19階 攻略成功! 』
【塔攻略状況】
国家:アメリカ合衆国(27階)
国家:日本(19階)
国家:韓国(13階)




