表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
29/34

【第28話】19階攻略(完)

意気揚々と出発した二人は、地下へと降りていった。


「おお……銀獅子、思ったより強いじゃん?」


銀獅子: 「これでもランキング二位だ。

お前が規格外なだけだ。」


「ふーん、じゃあこのペースなら今回の階層もすぐクリアだね。」


その時、ジウの視界にぼんやりと顔のようなものが浮かんだ。


「ひ、ひぃっ——!

ゆ、幽霊だぁぁぁ!」


突然の悲鳴に、銀獅子が振り返ったが何も見えない。

だがジウはすでに、建物ごと吹き飛ばす勢いでスキルを詠唱していた。


【 星の座が『おいおい、うちのジウ、建物ごと消す気か?』と呆れています。 】


銀獅子: 「何も——ちょ、待て!」


【 スキル:雷撃嵐 】


銀獅子: 「ジウ! 何もいない! 落ち着け!」


銀獅子がジウの手首を掴むと、彼女はもがいた。


「いたもん! 確かに見たんだって! 早くスキル——!」


《 五分後 》


銀獅子: 「はぁっ……はぁっ……もう落ち着いたか……。

お前がスキルを乱発したら、記録簿は二度と見つからんぞ……。」


ジウは銀獅子の胸の中でぷいとそっぽを向いた。


「ふ、ふんっ! 私がこんなことで取り乱すような女に見える?」

〈取り乱していた。〉


銀獅子: 「はぁ……。攻略法さえ分かれば好きにしていい。

それまでは我慢しろ。今は俺が手を出せない、モンスターはお前が倒せ。」


「しょうがないなぁ……。」


ギィィィ……。


古い旧校舎のせいか、一歩進むたびに木が悲鳴のような音を立てた。

時折、モンスターが飛び出したが——


ギャアアアッ!


【 スキル:ディモクレスの剣 】


銀獅子: 「……やれやれ、遠距離の敵まで一撃か。相変わらずだな。」


閃光が走り、モンスターの心臓を貫いた。

取るに足らぬ敵など、ジウのスキルの前では塵にすぎなかった。


こうして二人は、旧校舎の地下へとたどり着いた。


「お、おりるんだよね……?」


銀獅子はジウの頭を腕で包み込んだ。


銀獅子: 「ああ。」


予想に反し、地下には何も起こらなかった。

ただ、冷たい気配だけが漂っている。

やがて銀獅子が一枚の扉の前で足を止めた。


銀獅子: 「記録室……ここだな。」


チャン——


固く閉ざされた錠前が、銀獅子の手であっさりと切り落とされた。

彼は棚を漁り始め、ジウはその背後をとことこついて回った。


銀獅子: 「……少しは手伝え。」


「やだ、怖いもん。幽霊出たら私、建物ごと吹き飛ばすかもよ?」


銀獅子: 「まったく……記録が多すぎる。どこから見るか……。」


「生徒たちが1950年代を強調してたし、その辺りが怪しいね。」


ジウの言葉に、銀獅子が頷いた。


銀獅子: 「よし、1950年から順に見よう。」


静寂が長く続いた後、ジウがぽつりと口を開いた。


「“トイレの花子さん”って、意外と有名なんだって。」


銀獅子: 「そうか。そういう話には興味がないな。」


「私も友達から聞いただけだけど、

殺されたとか、事故死だとか、虐待で自殺したとか、いろんな説があるみたい。」


銀獅子: 「塔のシナリオが、常に現実の過去や未来を映すわけではない。

生徒たちといっても所詮はNPC。塔が意図的に錯乱させている可能性もある。」


「じゃあ、クリア条件は? 幽霊を倒せば終わり?」


銀獅子: 「……どうだろうな。とりあえず記録簿を見てみよう。」


ついに銀獅子が一冊を取り出した。



挿絵(By みてみん)



銀獅子: 「花子……あった。1953年度の生徒だ。」


開かれた生活記録簿には、簡単なメモが残されていた。


銀獅子: 「1953年……か。」


「どうしたの? 何かあったの?」


銀獅子: 「日本にとって悲しい年だ。戦後の混乱が残り、社会の統制が崩れていた。

二月には国宝が放火で焼失した事件もあった。」


「じゃあ……。」


銀獅子: 「“花子”という怪談は、そうした時代の闇が生んだ影なのかもしれない。」


「戦争孤児に食糧難……食べ物に執着して死んだとか?

なんか、ちょっと可哀想だね。」


銀獅子: 「そうかもしれん。だが“執着”が食べ物とは限らない。」


「じゃあ、どうやって死んだの?

時代背景の怪談なら、食べ物を供えればいいんじゃない?

……インベントリにリンゴが一個あるけど。」


あなたは、どうするかを決めた。


二人は旧校舎のトイレを順に見て回り、

その中でも特に、不気味な気配が漂う一つの個室を見つけた。


「じゃあ……やってみようか。」


選択肢


花子に食べ物を供える → 28-1話へ

花子の怨念を調べる → 28-2話へ

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
選択肢が斬新だった
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ