第二章
今日の授業は午前中だけ…顧問の都合で部活もない…確か今日はバスケ部の練習試合が我が校で行われる。真臣君出るんだろうなぁ。見たいなあー。でも皆んなと出かける約束があるから少しだけ見て帰ろうと決めた。体育館の側まで来ると、入り口で何人かの男子生徒と女生徒が話しているのが見えた。
その中に真臣君を見つけた。ラッキー!真臣君と二度 会えた。話できなくても会えた事に感謝しなくては‥あたしはそう思ってそのまま通り過ぎようとした。
「おーい ユウカ部活じゃないのか?」
そう言った真臣君の声は以外に大きかった。
周りにいた人の視線が一瞬あたしに集まった。特に女生徒の視線が…
「下の名前で呼ばれているわよ。あの子」
三年の女生徒らしいそんな声さえ聞こえてくる
うわあ…マズイ 何をされる訳でもないけど、やっぱり上級生というのは怖い気がするものだ。
でも何も答えないで通り過ぎる訳にもいかず、あたしは立ち止まりカバンの取手をギュッと持ってカチンコチンになって答えた。
「顧問の先生の都合で今日はないんです。」
「そうか そういえば今日 俺達の練習試合がある事知ってるか?」
「はい 知っています。」
「応援していってくれないの?」
「すいません!友達と約束があるので…」
周りの視線で思わずそう言ってしまった。行こうと思っていたのに‥
「それじゃ 仕方ないなぁ。真っ直ぐ帰れよ!」
「はい。お先に失礼します?」
あたしはそう言ってその場を離れた。
彼と話せたという嬉しさが、徐々に込み上げてきてとてもhappy な気持ちになった?
「ユウカー ちょっと待って。」
そう言いながら由季が走って来た。
「どうしたの?」
「今日 部活ないって言ってたわよね。」
あたしは頷いた。
「という事は待ち合わせの時間迄 暇という事でしょう。一緒にバスケの試合 見ていこうよ。」
チラリと体育館の方を見ると真臣君が一人でこっちを見ていた。あたしはドキッとしたが、由季に視線を戻すと聞いた。
「それは構わないけど由季 部活は?」
「それが皆んなでバスケの試合 応援しようって事になったの。友達を誘っても構わないからって‥それを聞いたから‥慌ててユウカの後を追ってきたのよ。」
「有難う 時間迄 何してようって思っていたのよ。」
由季とあたしは教室に戻る為に歩き出した。
体育館の所では、真臣君がそんなやりとりをしているあたし達を見ていた。あたし達がそこを通ると真臣君が言った。
「やっぱり 試合見ていってくれるんだろう?」
あたしは『はい』の代わりに頷いた。
「期待してていいぞ!」
彼はそういうと体育館へ入って行った。
あたしと由季はお昼を買いに購買部へ行った。
買ってきたお弁当は教室で食べる事にした。あたし達の他にもランチを教室で食べている人が多かった。やはりバスケの試合を見にいくらしい…
少し離れた席の話しが聞こえてきた。どうやら彼女達のお目当ては同じ学年の冴草 誠君らしい。我が学年では彼がかなりの人気を誇っている。あたしと同じ中学の出身でその頃からわりと人気あるのよね。
「ユウカ 同じ学年で人気がある男子って何故か出身中学が同じ人が多いと思わない?」
由季が言った。
「そうね。一年生にも人気あるみたいだし、結構モテているのよね。」
あたしは答えた。
そういえば礼菜と眞弓とは中学からだけど、あたしと由季って小学校からの付き合いなのよね。彼女といるとホッとするのはそのせいかな…なんて時々考える事がある。そんな事思っていたら由季が突然言った。
「ユウカ 好きな人 いないの?」
あたしはドキッとした。
「何故 急にその質問?」
「モテるとかそんな話し していたらふとユウカって好きな人いないのかな?って思っちゃったの。ごめん!」
「いいよ 別に‥」
「で、いるの?」
一瞬迷ったが正直に答える事にした。
「いるわよ。四年越しで片想いしている人‥」
「いつの間にぃ⁉︎誰よっ!教えてっ教えてっ!」
「誰にも言わないでヨ。その相手と気まずくなるの…嫌だから…」
「わかった。約束するわ」
「購買部へ行く前に体育館の所で会った人よ‥そう言えばわかるでしょ?」
「えっ まさか 杉城さん。」
由季は声を潜めてそう言った。あたしは頷いた。
「あの人ってかなりモテるでしょう‥だからライバルもかなりいるのよね。彼女がいるかも知れないし‥このままでもいいな‥なんて思っているんだ。」
あたしは言った。
「楡井さんと結構仲いいのよ。それとなく聞いてあげるわよ。何ていったてユウカの為だものっ!」
「サンキューッ!由季!」
お昼食べ終えて時間になったので体育館へ移動した。
体育館へ入るとあたしはすぐに真臣君の姿を見つけた。楡井さんやチームメイトと笑いながら話しをしていた。由季とあたしは入り口の所に立っていた。由季に気づいた楡井さんがこちらへ歩いてきた。あたしはお邪魔になりたくないので、由季から少し離れ体育館を見回す様なふりをしながら真臣君を見ていた。
真臣君から少し目線を逸らした時、相手高がコートで練習しているのが見えた。コートサイドで汗を拭いていた選手がこっちへ走って来るのが見えた。
「ヨッ 東条」
そう声をかけてきたのは、中学のクラスメートだった。
「白河君‥久しぶり 元気そうね。」
「そうだろう 自分でも困る程走り回れるよ。」
「変わらないわね。中学の頃と‥」
「こんないい男が変わる訳ないだろう。」
「よく言うわね。」
あたしは笑いながら言う。
「今 吹き出さなかったか?」
「あら やっぱりバレてた?」
「まったく 変わらないのは東条も一緒だな」
白河君が笑う。その時視線の端で真臣君がこっちを見ているのに気づいた。そこへ冴草君も来た。
「ヨッ 悟!」
二人はパチンとタッチをする。
「元気だったか?」
続けて冴草君が聞く。
「もちろん!誠 お前こそ」
中学のクラスメート二人は肩を叩きあっていた。
「東条 一人か…の訳ないな。いつも何人かでキャーキャーワイワイやってるもんな。」
冴草君が言った。
「その情報を何処で…」
ついノッテしまったあたしはそう言った。
「まったく…その切り返しは何なんだよ。」
冴草君が言った。白河君は笑っている。
「で 誰と来たんだ。」
冴草君が聞く
「由季と一緒よ。彼女 今 部活の先輩と話しているの。それより二人と一緒にここにいると両方のチームの応援の人達から殺気を感じるような気がするわ。」
多くの視線を感じてあたしは言った。
「そうか?別に気にする事ないよ。何ていったって中学のクラスメートだろ。それも結構 仲が良かったし‥それなのに高校で知らんふりなんて…そっちの方がおかしいだろう。」
冴草君はわざと周りに聞こえるように言った。
(こういう気遣いがモテるんだろうな。)あたしは思った。
「そうだよ。いいじゃないか。でも東条 ここにいるって事は試合の応援に来たんだろう。」
(この絶妙なタイミングでの話題の変え方‥流石 モテる男子)あたしはそんな事を思いながら答える。
「そうよ。勿論 我が校の応援にね‥」
「そんな事 言わずに 元クラスメートのよしみで俺だけでも応援してくれよ…」
「そうね。でも我が校中心よ」
そんな話しをしていたら選手集合の合図があったので二人に
「二人共 頑張って」
と応援を伝える。二人はあたしとタッチをするとそれぞれのチームに戻った。我が校のコートサイドを見ると真臣君と目が合った。ドキッとするあたし…視線をすぐに外してしまった。
そこへ由季が楡井さんと一緒に来て楡井を紹介された。あたしは軽く頭を下げた。楡井さんのお陰で試合を前で見る事が出来た。
コートに入る前に楡井さんが真臣君に声をかけて応援し、彼がそれに答えるようにこちらを見て微笑んだ。その笑顔があたしの脳裏に焼き付いた。
試合は最初ツーゴール差で負けていた。ワンゴール差までいくのだが また離されてしまう。そんな事が続きまたワンゴール差になった。目の前を真臣君が走り抜ける。あたしは皆んなと一緒に思わず声を出していた。
「頑張って!杉城さーん」
真臣君がこっちを見て微笑んだ気がした。そのまま相手のボールをカットしシュートを決めた。そして同点…
すぐに後ろから女生徒の声が上がった。
「キャー 杉城さーん」
彼女達が声を出したくなる気持ちわかるな。
だって今の真臣君 ゾクッとする程 素敵だったもの。
あーあ あたしってば かなりモテる人を好きになったんだなぁー。今更ながら それを実感したのよね。
試合の方は同点のまま前半戦が終わった。後半戦に入りすぐにまた真臣君が得点した。
バスケをしているのは知っていたけど見るのは初めてだった。でもその凄さは分かった。真剣にバスケに取り組んでいる彼はいつもより素敵に見えた。
相手チームの白河君も頑張っていた。そして我が校の冴草君も‥彼らの違う一面を見たようで、爽やかな感動を覚えた。
白河君のシュートでまた同点になった。すると今度は冴草君がシュートした。両校の応援が盛り上がった。白河君と冴草君のファンの声も一段と激しくなった。残り時間も少なくなり このまま逃げ切ればいいと思っていた。
その時だった。ボールが真臣君に渡り 彼がその場からロングシュート!
あたしはそのボールを祈るような気持ちで見守った。
“ザッ”
という音がしてゴールに入った。
「キャー やったー!!」
あたしは叫んでいたが その声は周りと一緒になり歓声ヘと変わっていた。そしてそのまま試合終了。ツーゴール差で我が校が勝利。
真臣君はチームメイトと喜びを分ち合っていた。
由季もあたしも興奮冷めやらなかったが、約束があるので楡井さんに挨拶をして体育館を後にした。
「ユウカ 杉城さん 凄かったね。」
「うん とっても素敵だった。また好きになりそうよ。ライバルはかなりいるけどね…」
「そうね。でも頑張るのよ。ユウカ 」
あたしは頷く。
約束の時間 眞弓達との待ち合わせの場所に行った。礼菜が既に来ていてあたしをみつけると手を振った。
「早かったのね 礼菜」
「あたしも 今 来たのよ。」
間もなく眞弓も由季も来てファンシーショップに行く事にした。皆んなそれぞれ欲しい物を買って洋服を見てファーストフードのお店に入った。四人でペチャクチャと話しをしたり由季を冷やかしたりしていた。
「あっそうだ。きょうバスケの練習試合があったでしょう。部活で行けなかったのよね」
眞弓が聞いた。
「あたしとユウカ 応援してきたわ。」
「凄かったと聞いているんだけど、どんな感じだったの?」
礼菜が聞いた。
「最初 ツーゴール差で負けていたけど前半終了時は同点…後半に入ってシーソーゲームだったけど、三年の杉城さんとうちの学年の冴草君が大活躍。試合終了したらツーゴール差で勝ったのよ。凄かったわ。ねえ ユウカ」
「最後の杉城さんのロングシュート…背筋が寒くなる程 素晴らしかったわ…」
あたしは言った。
「うん。あたしなんか鳥肌立っちゃったわ…」
由季も言った。
「そんなに凄かったの…あたしも見たかったわ。」
眞弓が言った。
「彼らのファンは熱狂しているわね…今頃…」
礼菜が言った。
彼らとは勿論 真臣君と冴草君である。
あたしはそれを聞いて胸がキュンと痛かった。」
さっきまでは、真臣君と同じ時間を共有していたけど実際には隔たりがあるんだなって思った。
真臣君は三年生で人気のある人‥あたしはって言えばこれといって目立つ所のない普通の女の子…
アーア 何か差を感じちゃうな
「どうしたの ユウカ。」
由季が声をかけてきた。
「モテる人って いるんだなと思って…」
あたしは答えた。由季は偉いなと思った。だって自分の気持ち告白できるんだもの‥楡井さんもモテる方だけど、その彼が選んだのが由季‥そういえば彼女も結構 昔からモテたんだった。はっきりしていて何事もテキパキこなすものね。あたしも何か取り得があれば良かった…元気だけはあるんだけどね…




