第十二章
年が明けて一日 あたしは例年通り近くの神社巡りをしていた。毎年 近くの神社に感謝を伝える為に回っている。そこで会うのは近所の人達‥当然 顔見知りの人が多い。
「明けましておめでとうございます。今年もよろしくお願いします。」
と挨拶をする。
「優香ちゃん 可愛くなっちゃって‥」
近所の人のお世辞の言葉に 素直に
「ありがとうございます。」
と答えてお参りに向かう。拝み終わって参道を歩いていたら真臣君に会った。
「ユウカ おめでとう。」
「おめでとうございます。」
「今 参拝してくるからちょっと待ってて‥」
彼はそう言って参拝に向かった。
(今まで会った事ないのに、何で諦めようとしている今になって会うの…)
真臣君の背中を見ながらそう思った。
あたしは、待たずにその場を離れようと思ったが、真臣君の今まで通りという言葉を思い出し彼が来るまで待っていた。
「お待たせ‥参拝にきてユウカに会えるなんて思ってなかったよ。」
ドキドキしている自分がいる。
「あたしも杉城さんに会えるなんて思ってなかったです。あたし毎年 元旦に近くの神社を周るのが恒例行事になってるんです。」
「俺もだ。それにしては会わなかったな。」
「時間も大体 同じ位に来ているんですけど、本当に会った事なかったですね。」
「いつも 一人で来ていたのか?」
「はい。でも約束していないんですけど、途中で必ず同級生に会って一緒に周る事が多かったです。たまに他の同級生に会って『二人 付き合ってる?』なんて聞かれて二人同時に即答『付き合ってない!』って答えて皆んなして笑って、そのまま皆んなで参拝した事もありました。」
「いつも一緒に周っていたのって男子か?」
真臣君の声がちょっと変わった。
「はい。そうです。」
「今年はどうしたんだ?」
「そういえば今年は会わなかったです。」
「会わなくても 気にならないのか?」
「別に気にならないです。」
「そうなんだ。」
「はい。」
「ところで ユウカ 話し方元に戻ってないか?二人で話す時も自然に話す約束をしたはずだよな。」
「うん ごめん あまりにも久しぶりに杉城さんに会ったんで緊張しちゃって‥」
「何も緊張する必要ないだろう‥」
真臣君はそう言っていつものようにあたしの頭をポンポンとする。
それだけでホッとするあたしがそこにいる。
「でも本当に久しぶりだな‥それというのもお互いの連絡先を知らないからだな。ユウカ 連絡先交換しようぜ。」
真臣君はそう言って自分のスマホを出したのであたしもスマホを出し連絡先を交換した。
神社から前の通りに出る時、真臣君が家まで送ってくれると言ったけど
「彼女の啓子先輩に会ったらマズイですから大丈夫です。」
とあたしは遠慮した。
「ユウカ そこの本屋さんの前 見て‥」
見ると啓子先輩がいた。
「だから 言ったじゃないですか。あたしはこれで‥」
慌てて行こうとするあたしを真臣君が止めた。
「啓子先輩の前 誰がいる?」
「オオ兄さん…」
あたしの一番上の兄がいた。
「そう 啓子先輩はユウカの一番上の兄貴の彼女‥」
「そうなんだ。じゃあ 杉城さんの彼女はやっぱり坂部さん?」
「違うって言ったろ‥彼女は秘密だ。」
(秘密って事はやっぱり彼女はいるって事だよね‥)
そんな事考えていたら
「優香ちゃ〜ん」
啓子先輩がこちらへ来て、あたしをハグする。
「啓子先輩!」
あたしも抱きつく‥
そして改めて啓子先輩と兄を見る。
「オオ兄‥もしかして啓子先輩と付き合ってる?」
「ああ‥」
「わーい!大賛成 大歓迎…」
あたしは小さく手を叩きながら言った。
「ところで 真臣 何でお前が優香と一緒にいる?」
真臣君とあたしの兄 二人は、小さい頃同じバスケット倶楽部にいたのでお互い知っている。
「まさか 付き合ってるのか?」
「違うよ‥オオ兄 そこの神社で偶然会って近所の神社全部 お詣り終わったから家まで送ってくれる所だったのよ。」
「何だ。付き合っている訳じゃないのか‥真臣 俺の妹と付き合ってもいいんだぞ。お前なら安心して任せられる。」
兄のその言葉にあたしはドキドキしている。ドキドキを抑えるように兄に抗議する。
「オオ兄 何 言ってるの‥恥ずかしいからやめて‥杉城先輩 すみません。兄の言う事は気にしないで下さい。」
「そんな‥蒼先輩に妹を任せられるなんて言われたら、俺達 後輩にしたら信頼していると言われたのと同じなんだよ。」
「えー何ですかそれ‥?」
「蒼先輩は…」
真臣君が言いかけた時、それに被せるように兄が言った。
「真臣 そこまでだ。」
真臣君は笑いながら返事をする。啓子先輩もオオ兄の隣りで笑っている。
「はい 分かりました。」
そして兄に聞こえないように
「後で 教えてあげる。」
とあたしに言った。
「二人共 この後の予定は?」
「あたしは無い。」
「俺も無いですよ。」
「じゃあ 一緒にお昼 食べようぜ。」
「当然オオ兄の奢りだよね。」
「もちろん!」
「やったー」
お昼を食べに行きながら、あたしは思った。
(今年は元旦から真臣君に会えるし、啓子先輩は真臣君じゃなくてオオ兄の彼女だと分かったし、良かったと思うけどやっぱり真臣君 彼女は秘密って事は彼女はいるって事だよねー。諦められるかなぁ…)
少し足取りが遅くなったあたしに真臣君が立ち止まって聞く‥
「どうした?」
「…何でもない…」
あたしは真臣君の隣りに走り寄った。そのまま兄達と一緒にお昼を食べに向かった。




