第十章
この頃 あたしと白河君は映画や遊びに行って友好を深めていた。
白河君といる時だけが、杉城さんの事を考えていない時間だった。
だけど白河君といても心のどこかで淋しさを覚えている。虚しさを感じている。それはあたしが一番わかっている。だってこんなお付き合いの仕方がいい訳ない。これはあたしの狡さだ‥
それは分かっているのに白河君と会う約束をしてしまう。何故だろう…そんなの決まってる‥あたしの我儘だ…彼といると優しくしてもらえるから‥優しい気遣いがあたしを包んでくれるから。この冬休みもあたしを誘ってくれる‥。それを嬉しく感じるあたしがいる。
今日は水族館に来ている。大きな水槽に近づきマンボウを見たり幻想的なクラゲの水槽に魅了された。
「わぁー綺麗‥」
思わず声を上げたあたしに白河君は
「優香ちゃんそいう所 変わんないなぁ。」
って笑っていた。
少し薄暗い青っぽいトンネル水槽の空間では、上ばかりを見て歩いていて躓きそうになったあたしを支えてくれた。
「足下 気をつけろよ‥あっ ごめん。」
白河君は 肩を抱き寄せるような形で支えているのに気づき離れた。
「ありがとう。」
あたしは素直にお礼を言った。
彼は少し照れくさそうだった。
食事を楽しみ イルカショーを楽しみ 一日を満喫した。
彼と一緒にいた一日は、彼の笑顔が正面からあたしの心をノックした‥力強く真っ直ぐに‥何度も何度も‥。
その力強さにあたしの心が揺れている。
「優香ちゃん 二十四日 空いてる?」
白河君が聞いてきた。
(二十四日 クリスマスイブだ。)あたしは思う。
「ごめんね。家族と食事の約束してるから‥」
あたしはその誘いを断った。本当は家族と食事の約束なんてない‥
「学校 始まったらまた遊びに行こう。今日はすっごく楽しかった。ありがとう。またね‥」
そう言って彼と別れた。
自分の部屋で今日一日の事を考える‥彼の笑顔を思うと心が騒つく。
スマホが鳴った。由季からの電話だった。
「もしもし…」
電話に出る。
「ユウカ イヴの日 空いてる?一緒に過ごさない?」
「遠慮しとく‥杉城さんは彼女と過ごすだろうし‥由季と楡井さんのお邪魔はしたくない‥二人で過ごして‥」
「もしかして白河君と会うの?」
「誘われたけど断ったわ。」
「じゃあ いいじゃない。一緒に過ごそうよ。」
「由季…楡井さんの事好きでしょう。好きな人と二人で過ごす事も大事よ。あたしは考える事 沢山あるから新学期に会いましょう。」
あたしはそう言って電話を切った。
あたしは年末までは真臣君を諦めず想って過ごそうと思った。年が明けたら白河君との事を考えてみようと思った。




