第一章
あたし 東条優香。緑ヶ丘高二年 十七歳。
一つ年上の杉城真臣君に、四年越しの片想い…
真臣君て明るくて誰とでもすぐ友達になってしまうタイプなのよね。現在バスケ部の主将。
陽に焼けた小麦色の肌…額にかかる髪。涼しげな目許…意志の強さを表すキュッとしまった唇‥凜としたよく徹る声。そんな彼だからよくモテるのよね。
ア〜ア 前途多難!
彼と初めて会ったのは小学生の時。地区の子供会でなの。
一つ年上の彼はあたし達の面倒をよくみてくれた。
優しい人だなぁ‥それがあたしの第一印象だった。
そして彼は中三の時、生徒会の役員だった。何にでも積極的に取り組む彼を見てあたし‥ときめいてしまったの。
ワァー ス.テ.キ
それからずっと彼に想いを寄せている訳…
勿論 あたしと真臣君 顔見知り‥いつの頃からかあたしの事『ユウカ』って名前で呼んでくれるの。ウフ しあわせぇ…
でもあたし真臣君に自分の気持ち気づかれないようしているの。だって
「好きです。」
と言って上手くいけばいいけどダメだったら気まずくなっちゃうじゃない‥それだったら今のままがいい‥そう思うの。
あっ大変!学校へ行く時間だわ。
「ユウカー おっはよう」
その声に振り向くと親友の眞弓がこっちへ駆けてくる所だった。
「おはよう。」
あたしは彼女を待ち肩を並べて歩き出した。
校庭の端を通り 中庭にある三年生の昇降口に差し掛かった時
「おはよう ユウカ‥」
上の方から声がした。
見上げてみると真臣君が友達と一緒に教室の窓から顔を出していた。
「おはようございます。」
あたしは平静を装ってそう答えたの。
でも内心はドキドキ‥心臓の鼓動が早くなってもう大変…隣で眞弓が肘で突きながら
「杉城さんから名前で呼ばれて、挨拶されるなんてコノ幸せ者が‥」
「家が近所で小さい頃から知っているからよ。いつもそう言ってるじゃない。」
とあたし…
実は仲のいい友達にも言えてないのよね 真臣君好きな事…だから彼の事好きだっていう事はあたしだけの
ヒ・ミ・ツということで…
教室で眞弓と話していたら、仲良し四人組のもう二人 由季と礼菜が登校して来た。
「おはよう ユウカ 眞弓」
その由季の声がとっても弾んでいる様に思えた。あたしは聞いた。
「由季 何かいい事あったでしょう。声が弾んでいるわよ。」
「そおかな…へへ…」
「こら由季〜白状しなさい!」
眞弓が言った。
「由季 好きな人と上手くいったんだって…」
礼菜が言い出した。眞弓がすかさず聞く。
「えっ!誰よ。どこのクラス。」
「三年F組」
そう答えた由季は少し恥ずかしそうだった。
あたしは ドキッとした。真臣君 F組なのよね。
まさか由季の好きな人って真臣君…
あたしは由季の顔を見て恐る恐る聞いたの。
「あたし達の知っている人?」
「うん 結構有名だから、名前位は知ってるかもね。」
あたしは胸が痛くなった。ああ真臣君だったらどうしよう〜
「楡井 博さん」
そう言った由季の顔が輝いて見えた。
あたしはホッと胸を撫で下ろした。
良かったァ 真臣君じゃなかった。
「楡井さんて文芸部の部長さんでしょう。」
礼菜が聞くと由季が頷いた。
あたしも知っていた。
知的な印象を受ける物腰の柔らかな人だ。そういえば由季 文芸部だった。
由季は前から彼が好きだった。自分の気持ちが抑えきれなくなり、いつか告白しようと思っていたんだって。
そして-昨日-昇降口で偶然 彼と一緒になった由季は挨拶だけで行こうとしたら、呼び止められ一緒に帰る事になった。いろいろな話しをしながら歩いていたけど、今しかない!そう思って告白した。
「あの‥楡井さん。突然で驚かれるかもしれませんけど 私 文芸部に入った時から楡井さんの事が好きなんです。」
彼は一瞬 驚いたけどニッコリ笑うと言ってくれたんだって
「有難う!どうやら先を越された様だな‥僕も君の事が気になっていたんだ。良かったら付き合ってくれないか?」
由季は黙って頷いて、初めてのデートが今度の日曜日に決まったって。
由季は恥ずかしそうな幸せそうな顔をしていた。
由季は凄いなあ。自分の気持ちを告白する勇気が持てて‥あたしはそんな由季が羨ましかった。
「由季!おめでとう!」
「やったね!」
「さっすが 由季!」
などと口々に言った。
始業のベルが鳴ったので席に着いた。




