この話の取扱説明書と、キッカケについて
まずは、最初にこれから読むものについての、取り扱い説明を。
今、読んでいただいているこれは、実はあたしの治療になっているものです。
こうして文字に起こし、吐き出す。その時々の気持ちに、過去に、時々懺悔めいたものや誰かへの殺意なんかも。
そうすることが治療になるだなんて、自分がある病気に向き合わずにいたら知らないままでした。
その病気に向き合うため。そして、自分を普通の暮らしに戻すため。
こうしてあたしは自分の胸の中や腹の奥に溜まりに溜まった淀んだものを吐き出しては、自分がどんな感情を見ないふりしてきたのかを知っていく。
それが自分にとって何よりも必要な作業なんだと気づかず、無自覚に、無意識にやっていたことが功を奏していくんだろう話です。
そのための文を書いていることを、説明しました。
それを踏まえた上で読み進めていただければと思います。
そのキッカケになっている病気というのが、「え? それだけの話?」といわれかねないものかもしれません。
その病名は、睡眠障害。
わかりやすくいえば、眠れない。それだけの話。
けれど、その眠れないというだけの単純な話ですまない。
そう感じたのが、眠れなくなることで命の危機を感じたから。
「眠たかったら、寝ればいいのに」
とある人物に眠れないことを打ち明けた時に、お菓子を好きなように食べればいいじゃんと言っているかのような物言いで返されました。
呆れてものが言えなくなるとは、こういう時に使うんだなと知ったのはその時。
自分の睡眠を最優先してもいい生活を送れているのなら、なんとかなったのかもしれない。
もっと早い段階で、どうにかできたのかもしれない。
実際のところ、眠れないという理由だけで病院にかかるようになるまでが長く、その気になった後には家族の理解を得なきゃいけず。
だいたい、眠れないというだけで金と時間をかけて病院にかかっていいのかを決められず。
自分だけで判断していいのか迷ったあたし。家族への協力をと思っても、どう話していいか迷った時に、思いきって専門家の言葉を借りようと思いついたのが通院を決めたキッカケのようなもので。
そして家族になんとか説明をしたのち、治療が始まる。
が、その先にあったのは協力者がいない状況でした。
どこか他人事で、それのどこが悩みなのかわからないと不思議そうに見られるばかり。あたしも家族なんだよね? と泣きたくなる状況でした。
睡眠障害で通院するようになってから、自分が家族に対して思っていたよりも期待をし過ぎていたんだと知らされてしまう。それはもう…しばらく家事なんかしたくなくなるほどに。
普段、母親として妻として家族を支える側に立っている自分。
家族というカテゴリーの中において、自分が逆の立場になった時には同じような感情を抱いてもらえると安易に思っていた。
けれど支えられる側の人が、急にその場所に立てるはずもないという予想を一切立てていなかった。
不思議なほどに。
自分がやれていたんだから、やれるだろうと。
と言ってもその意味合いは、自分の優秀さをひけらかすようなことではなく。
出来の悪いあたしですらやれてきたんだから、誰にだって同じことは可能だよね? という方向での話。
いわゆる自己評価が低い人間ゆえの、誰にでもやれるだろうという思考だった。
とかいったところで一歩引いて第三者目線で考えてみれば、答えはもっと早く出たはずだったのに。
自分を取り囲むのは、愛される側でしかない相手ばかり。
支え方を知らない。支えられて、甘やかされるのを享受していくだけの日々を過ごしていたのだから、知らなくて当然だったんだろう。
子どもたちに関しては、そうであって当然の年齢だから仕方がないとするとして。
はたして、とっくに成人してて働きもしていて、三人の父親でもある彼は? と思う。
その睡眠障害の治療が長期に渡った原因の一つが、家族という名の足枷だ。
言い過ぎかもなと思いつつも、それが一番しっくり来てしまった。
次に最初に書いたように、この文章を書くことが治療になることについて。
これが治療だと気づかされるクリニックにたどり着くまでに、病院との相性云々もあったけれど、いつになっても支える側にしかなれない自分と家族の関係が足を引っ張った。
過保護にも、アレもコレも手をかけ過ぎた弊害とでもいうべきか。
自分がいなきゃ家の中が回らない。
こっちの予想しないタイミングに襲ってくる睡魔に抗いながら、家族にイラつくことが増えた。
眠すぎると、それまで気が長く待てたことが待てなくなる。短気は損気という謎の呪文を唱える回数が増えた。
それでも愚痴はこぼれ、(自分でやれることはやってよ)と襲ってきた眠気に焦れながら、内心で悪態をついていた。
結果、眠れなくなれば人間は生きられないんだなと、他人事のように思う回数も増えた。
「あたしは、そのうち死ぬんだな。きっと。死因が睡眠不足か? って呆れたように言われるんだろうな」
自身に呆れたようにため息をつきつつ、眠れない日々を受け入れるしかなく過ごして数年経過。
そのクリニックに出会ったのは、睡眠障害の初期治療にかかわってくれた担当医からのメモが残っていたのがキッカケ。
普段はそういったメモは紛失してしまうのが常なのに、珍しく残していた自分を褒めた。