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元カノと再会したのはラブホテル

作者: 甘扁桃

 元カノに一年振りに再会した…。ラブホテルのロビーで。


 久しぶりに再会するとしても時と場所があるだろう。ただでさえ世間一般的には親戚の叔父さんの次には気まずい関係性だと思う。


 声を掛けるべきではないとは分かっていたのに気が動転していたのか気付いたら元カノの目の前に立っていた。


「ひ、久しぶり…」

「お、おう…」


 元カノも気が動転していたのだろう、話しかけてきたのも驚きだがお互い相手がいるのにも関わらず関係性がわかるような言葉を選んだのだ。


 俺も俺だ。お、おうってまるでギャルに話しかけられた童貞じゃないか。


 俺らはお互い部屋とアメニティーを選びエレベーターに乗って行った。


「誰?知り合い?」

「ああ、同じサークルの子だったやつだよ」

「ふーん。気まずいね笑」


 嘘は言っていない。大学のサークルで知り合い付き合ったのだから。幸い彼女は信じてくれているし俺のこの状況を楽しんでるように見えた。




◇◇◇



 今日は眠れなかった。いつも賢者時間は速攻で眠くなり彼女に腕枕をして気づいたら朝腕が痺れている、というのが最近多かったのに。


 理由は明白である。元カノと再会したのが衝撃すぎて目が冴えてしまっているのだ。元カノのことなんて別れてから今日まで一度も考えたことなかったのに不運としか言いようがない。


 賢者時間は考え事を増幅させる。神様は何故男の本能にこの設定を追加してしまったのだろう。神様も意地悪だ。


 俺はどうしても寝付けず彼女にコンビニに寄ってくることを伝えて買い物に出かけた。気持ちを整理しお酒でも飲もうと考えていた。


 元カノも同じことを考えていた。またロビーで鉢合わせてしまった。気まずい時間が流れる。


「よう…買い物?」

「そうだけど悪い?」

「悪くないけど」


 元恋人なんてこの程度の会話しか出来ないんだなと初めて知った。よくよく考えたら初めての彼女もこいつだった。つくづく初めてはこいつが多いなあなんて考えていた。


「今カノ?」

「うん」

「ふーん」


 どんな会話だろうか。話題が気まずい。そして何故2人でコンビニへ向かっているのか見当もつかない。気づいたら2人とも一緒に歩き出していた。


「そっちは?」

「そっちじゃなくて名前で呼びなよ」

「じゃーそっちも名前呼びな。琴音は?」

「彼氏だよ。宗介のバーカ」


 深夜テンションは良くない。あの頃を思い出してしまう。社会人にもなって情けない。コンビニに着いてもそれは変わらなかった。


「あの頃を思い出しちゃうね」


 最悪だ琴音から切り出してきた。我慢していたのに。酒を選びながらの元カノとの会話は余計に心臓に悪い。


「ああ、懐かしいな」


 心では騒がしくとも顔に出すまいと平静を装った。琴音は涼しい顔をしている。こんなに感情を揺さぶられているのは俺だけなのだろうか。


「少し飲まない?」


 俺は相手の動揺を誘う為コンビニで買った酒を片手に琴音を誘った。返答までに少し間があり自分の心臓の音だけが良く聞こえた。


「彼氏待ってるから少しね」


 彼女に罪悪感を抱きながらも琴音と付き合っていた過去を思い出し、あいつだったら別れた後こうはならないなと比べてしまう。


 体感10分くらいだったと思う。お酒を飲みながら近くの公園でブランコに揺られ片手には酒。ただの友人であったのならば微笑ましくはなくとも羨ましい距離感だと思う。


 近況報告やらあんなところ行ったななんてくだらない話を俺はずっと続けていたくていつもはすぐになくなってしまう缶もチビチビ飲み進めていた。


 やがて酒もお互いなくなり時間も大分過ぎてしまっていた為急いで元の場所まで早歩きで向かった。正しくは普通に歩いていたつもりだったのだが2人の独特の空気感とお酒の回り具合によってお互い勝手に早歩きになってしまっていた。


 ホテルに着き、それぞれの部屋に戻ろうとした時俺はなぜか琴音の手を掴んでいた。


「……何?」

「なんだろう」

「流石にこれ以上は無理」

「そうだよな。楽しかった」

「私も」


 琴音は最後に付き合っていた時にはあまり見せてくれなかった悪戯好きな子供のような顔で俺の前を去って行った。


 はあ。ずるいな、なんて思いながら薄暗い廊下を歩き彼女が待つ部屋へと手をかけた。




◇◇◇



「———ねえ、宗介とあの子会わせたの正解だったでしょ」

「そうだな笑笑面白いものが見れたわ」

「私たちが付き合ってて2人の関係も知った上で鉢合わせさせたのに無駄に常識人ぶっちゃって可愛くないね」

「また、あの2人をラブホで会わせて見ようぜ笑笑」

「いいね笑どんな反応するかな笑笑」

 





 

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