その7
あきよちゃんがぎおんさんに六年まで来んだんは、夜遊びはあかんて親から言われてたかららしいけど、俺らには見えやんものが見えるていう噂もあって、誘うのも遠慮してた。
そやけど、その年には一人でやってきて、みんなと一緒に花火をやってめっちゃ喜んでたから、もっと早うに誘っとけばよかったなて、みんな言うてた。
そんでも、見えやんものが見えるていう噂はモンマかどうかはわからんままやったで、肝試しは断るやろって思てたら、ときこちゃんに誘わて、嫌な顔もせんと、俺らに手を振って暗闇の中を歩いて行ったでめっちゃ驚いた。
中には「大丈夫なん? 」って、心配してる子もいたんやけど、あきよちゃんの能力がホンマもんならテレビでやってた幽霊スペシャルみたいなことになるんちゃうかとドキドキしながら二人の帰りを待ってると、あきよちゃんは帰ってくるなり、
「あかん。あそこに近寄ったら。あれは、危ない。ほんまに、もう行ったらあかん」
て、言うて、ときこちゃんも泣きそうな顔してて、頷くだけで何も言わへんだで、俺らはホンマに怖なってきて、誰かが「もうやめよ」て、言うたら、みんなも「そやなって」なった。
そんで、あきよちゃんが帰り際に、「家に着いたら、ぜったいに塩を体に振って清めてもらってな」て、言うもんやから、ますます怖なって、その日の夜はなかなか寝れやんくて、いつもなら平気で行ける、外の汲み取りのトイレに行くのもこわなって、夜が明けるまでおしっこ我慢したのを今でも強烈に覚えてる。
「へー。そんな事になってたのかぁ。その年俺は母さんの実家へいってたな」
「おおっ、そうやな。あの年、ようじはおらんだな」
「うん。けど、二学期の時、誰もそんな話してなかったぞ。噂になってたら誰かから聞いてるはずだし」
「そうやなぁ・・・・・・。たしかに二学期が始まっても、誰もあの話せんだし、あきよちゃんにも、あの日に何があったかって聞かへんだし、一緒に行ってたときこちゃんにも聞こうとせんだな」
「不思議だな。小学生の頃って、お化けとか霊とか、めっちゃ興味あるのに」
「いやぁ、マジで怖かったんやと思うで」
「そうかぁ・・・・・・。そういえば、あきよちゃんて可愛いかったけど、どっちかって言うと不思議な子っていう印象が強く残ってるな」
ようじは、あきよちゃんの事をそういう風に思てたんやと、この年になって初めて知った。
まぁ、仲が良かったけど、すべて知ってるわけではないんやし、こういう事もあるんやな。
やったら、高校時代のあきよちゃんの話はおそらく知らんやろうな。