その6
「そういやぁさ。夏の夜で思い出したんやけどさ」
「ん? 」
「ぎおんさんの肝試しって、おぼえとる? 」
「ああっ、たしか、川向こうのお墓まで行って帰ってくるやつじゃなかったっけ」
「おっ、覚えとったかぁ」
「確か、4年生以上が参加できるっていうルールで」
「それそれ。」
「4年の時一回行ったかな? あんまり覚えてないけど、面白かった気がする」
「あれっ。ようじ、しらんだっけ? 」
「えっ。なにを? 」
「そうかぁ。知らんかぁ・・・・・・。まぁ知らんだらええんやけどな」
「そんなこと言われたら、気になる。で、なにがあったの? 」
「実はな・・・・・・」
ぎおんさんは、地元の氏神さんを祭る行事やったけど、子供やった俺らが唯一、夜遊びに行ける行事やった。大人は、祢宜さんと一緒に祈りを捧げてからお酒を飲んでて、俺たちはその間花火をやって楽しんでた。それで、花火がなくなると、肝試しするんが恒例になってて、それは、二人組になって川向こうのお地蔵さんに手を合わせて帰ってくるだけなんやけど、川沿いの道は街灯あらへんし、単2電池2本の懐中電灯だけがたよりやったから、真っ暗でふつうに怖かった。
それで、戻ってきた組に、「どうやった! 」と聞いて、「怖かったわ! 」とか、冗談で「火の玉見たわ」とか「墓石が光ったわ」とか言って、次の組の人をビビらせて、面白がってたけど、恒例やった肝試しを俺たちでやめにしたんは、同級生のあきよちゃんの一言やった。