その5
「夜なら、ばれへんって言うてたけど、結局、ばれてしもたな」
「まぁ、俺らが悪いんだから仕方がない。けど、夜のプールで泳ぎ出した先輩っていったい誰? 」
「2個上のひろき君や」
「ああっ、ひろき君かぁ。あの人ならやるな」
ようじはニヤッとした。なるほどなと思てるみたいに。
「ひろき君てさぁ、ちょっと変わっるとこあるやん。なんか、1日おきくらいにプールに行ってたらして、ばれへんもんやから、調子に乗って、飛び込みもしてみたんやって。あれって大きい音するやん。『ザッボーン!』 て。周り田んぼやし、あの頃ってクーラー付けとる家って、まだなかったし、どこの家も夏は網戸やったやん。そやから、音が聞こえたらして、どっかの人が電話したらしいわ。それで、先生が代わりばんこで夜回りするようになって、そんで、なんでか、俺らのが先にバレてさ。あほみたいやったな」
「まじでかぁ。」
「それでなっ、後で聞いた話なんやけど、ふるちんで飛び込んだら気持ちよかったんやって! それで、何回も飛び込みしてたらしいで」
ようじが思いっきり笑ってる。なんか、一瞬ツボにはまったみたいやったけど、すぐに我に返った。
「けど、俺たちで終わらせたのは正解だったな」
「そやな・・・・・・。けどさぁ、あんなに念入りに懐中電灯で照らされへんだら、ばれへんだかもって今でも思うわ」
「まぁな。だから、潜れば切り抜けられるって考えたんだろうけど、そんなの息が持たないから無理さ。」
「・・・そうやなぁ。確かになぁ。そやで次の日、校長先生のとこへ謝りに行ったんやもんなぁ」
「そうそう。それで、校長先生に『また、お前らか。中学生になってもあかんやつやな』て、怒られてさ」
「そやったな。なんか、中学生やのに小学校の先生に怒られて、かっこ悪かったなぁ。校長室出たら、なんも言わんとすぐ解散したもんな」
「よくおぼえてるなぁ・・・。けど、あの頃の夏休みの面白かった事ってそれ位しか覚えてないな」
「そっかぁ。そんなもんかぁ。俺は結構面白かった事覚えてるけどなぁ」
それは、俺らは小学生の時、悪戯ばっかりして何回も校長先生に怒られてたからっていう事もあるんやけど、そん時の事を思い出すと、今更やけど、それが周りに迷惑をかけてたんやって気づいて、先生にはめっちゃ迷惑かけてたんやなぁって思い直すことも多かったからや。