表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界ドライブ~トンネルを抜けたら、そこは異世界でした~  作者: 天城/あましろ
序章~異世界へドライブ~
9/33

9 ドラゴニア王国と、英雄のお話

 ここまで見てくださってありがとうございます。

 これからもどうぞ楽しんで行ってください。


「ちゃんとソイツの躾はしとけよ?」


「わかってるよ」



 『相棒』が今のところ危険じゃない事を教えると、ジレンは大剣を地面に突き刺して警戒を解いた。


 『相棒』は、「僕、悪いスライムじゃないよ」と言っているかのようにジレンにすり寄って行ってる。


 大柄な男に、さらに巨大なスライムが体をスリスリ擦り付けている。

 何処にも需要が無さそうな絵面だ。

 

 ジレンは嫌そうな顔はせずとも「鉄くせぇな...」と呟きながら『相棒』を押し退けようとしている。


 困っているのを放置するのも可哀想なので、『相棒』には戻ってもらおう。



「『相棒』、そろそろ戻っていいぞ」



 俺の言葉に『相棒』はすぐスリスリを止めて車へ戻っていく。


 スルスルと体が縮んでいき、触手で器用にボンネットを開けた『相棒』は、エンジンルームへと入っていく。


 ちゃんとその後ボンネットを閉めた。

 戸締まりが出来る偉い子だ。


 どうやら俺の愛車は『相棒』の家になったらしい。



「そういや、弱ったスライムはその辺に落ちてるもんを身に纏ったり、人の作った道具を殻にして身を護る習性がある、ってのを誰かから聞いた覚えがあるなぁ、確か、スライム博士だったか?

 こんな感じなんだなぁ」 

 


 ジレンは一連の流れを物珍しそうに見ていた。



「スライム博士?

 そんな人が居るのか?」



 スライム、数多存在するファンタジー物でも最弱と呼ばれるモンスターの名称だが、そんなスライムをわざわざ研究する人物がこの世界には居るのか。



「只のあだ名だがな。

 実はスライムってのは結構奥深い奴等で、その生態を知れば知るほど謎が深まる面白い存在...ってのはスライム博士の言葉だ。

 俺はスライムの事はあんま知らねぇけどな」


「へー、面白そうだな。

 機会があれば会ってみたいな」


「そうだな、王都に行ったら紹介してやるよ。

 どっちにしろお前さんの『相棒』を一度見せなきゃならんからなぁ」

 

「王都?」


「あぁそうか、いきなり転移してきたんだもんな、ここが何処だか教えるのを忘れてたな...ここは『ドラゴニア王国』。

 『中央大陸』で一番大きい国で、その歴史は『英雄ユーランド』の時代から千年間ドラゴンと戦い続けている、『竜狩り』の国だ」


 

 俺がずっと気になっていた事をジレンは語ってくれた。


 『中央大陸』『ドラゴニア王国』、聞いたことがない地名。

 やはり、この世界は俺の知る世界とは違う世界なのだと改めて理解させられる。


 さらに聞き捨てならなかったのは、『英雄ユーランド』の存在。

 

 他人に名前を聞いておいてすぐ忘れるほど俺は馬鹿じゃない。

 俺の記憶が正しければ、『ユーランド』とはジレンの家名だ。

 ジレンの家名が、『英雄ユーランド』を由来とするならば...



「英雄ユーランド...もしかして、ジレンはその末裔かなんか?」

 

「そう言うことだな。

 俺の祖先に当たる『英雄ユーランド』が国の一大貴族として名を馳せてから今に至るまで、国の為に竜を狩り続けて来た由緒正しき一族、それがユーランド家だ」


「つまりジレンはお貴族様で...めっちゃ偉いって事?」


「そうなるな」


「...俺、不敬罪で捕まったりしない?」


「俺が国に起訴すれば牢獄送りだなぁ...」


「ごめんなさい!!!!!」



 俺は即座に土下座をした。


 地面に頭を叩き付ける勢いで、それでいてピシッと両手を揃えて謝罪する俺に、ジレンは目を丸くした。


 

「ちょっとからかっただけだって...

 お前さんを訴えたりしないし、俺も怒ってないから」


「...本当に?」


「本当だ、だから早く顔上げてくれ。

 家が偉くても俺は何も偉くねぇからよ、畏まらなくていいぞ」


「そう言うことなら...」


 

 危なかった、ジレンじゃなければ三回くらい処刑されててもおかしくなかった。

 ジレンの性格に再び感謝することになった俺は、おでこに付いた土埃をパッパッと払いながら立ち上がる。


 

「綺麗な動きの土下座だったな...止める暇も無かったぞ」


「まぁ、慣れてるから」



 昔から、親に怒られたりバイト先で怒られたりで普段から土下座をしてきた残念な人生を送ってきた。


 謝罪のタイミング、土下座の姿勢、土下座のスピード...

 土下座に関してはかなり極めてきた。


 俺の歴史は土下座の歴史、素直に丁寧に即座に謝る。

 これが俺のモットーだ。

 

 まぁムカッと来たときに人を煽ってそれが原因で怒られている事がほとんどなので、自業自得なのだが。


 ジレンの人柄の良さにに甘えて、俺はいつも通りの態度に戻る。


 謝るときは素直に謝るが、常に誰にでもフレンドリーに接するのも俺のモットーだ。



「しかし、英雄が祖先かぁ...その英雄様は、一体何をしたんだ?」

 

「そうだなぁ、噛み砕いて言うと...英雄ユーランドはかつて国を滅ぼしかけた『邪龍』をその手で討ち滅ぼし、その首を持って日ノ出と共に凱旋した...結構有名な『邪龍討伐』の話だが、お前さんは聞いたこと無かったか?」


「さぁ、あるような無いような...」



 俺は敢えてはぐらかす。

 俺はこの世界の住人ではないのでこの世界の歴史はまったく知らないのだが、国の歴史に関わる話をまったく知らないと言うのも申し訳ない。


 この手の『ドラゴンスレイヤー』の話は元の世界にも存在しているが、そのほとんどは架空のお話、フィクションとして扱われていた。


 しかし、ドラゴンが実際に存在するこの世界ではそんな英雄譚はノンフィクション、世界の歴史の一部として身近に語られる話なのだろう。

 そんな英雄の末裔が目の前に居るのだから。



「ハッキリしねぇな? まぁいいか」


「悪いな、似たような話は聞いたことがあるんだけど...

 それで、なんだっけ、『竜狩り』? その話も聞かせてくれよ」


「話をするのはいいけどよ、話始めてから結構時間も立つし、そろそろ王都に戻ろうと思うんだが。話はその道中でいいだろう?」


「王都っていうと、王国で一番大きい町って事だよな?」


「その認識で間違いねぇよ」



 ジレンは地面に突き刺していた大剣を軽々と持ち上げ背中に背負い始める。


 どうやら俺達の行き先は決まっているらしい。 

 『ドラゴニア王国』その中心部...王都が次の目的地だ。

 

 この世界に転移してからは目的も無くただ森を彷徨き、襲いかかる魔物達からひたすら逃げるだけだった。

 それと比べれば、やっと一歩前進したと言えるだろう。


 早く王都に行きたい、そんな思いで一杯の俺はさっさと『相棒』に乗り込んだ。



「相変わらず動きが早いなお前さんは...」



 俺の身のこなしに唖然としながらも、「森の連中から逃げてこれる訳だ...」と納得しながら此方に歩いてきて、助手席側の扉の前で止まる。



「...どうやって開けるんだ?」



 どうやらジレンは『相棒』に乗る気マンマンらしい。


 断る理由も無いし、『相棒』に頼んで扉を開けてもらう。

 自動ドア、やはり便利。


  

「お、悪いな、勝手が分からなくてよ...」



 その大きな体を屈ませて、ジレンは『相棒』に乗り込もうとする。


 ガツンッ!!!


 背中に背負った大剣が引っ掛かり、ジレンの乗車を阻む。



「...すまん、この剣、何処に置けばいい?」


「...俺も降りて手伝うから、待ってて」



 結局、ジレンの大剣は後部座席に横にして立て掛けることにした。

 結構ギリギリである。


 今度は、ジレンは問題なく助手席に乗り込めた。



「おうっ...なんだこれ?

 椅子が柔らかいな...中は狭いが、これなら負担もねぇな」


「もしあれだったら、背もたれ倒してもいいぞ...って、やり方分かんないか。

 『相棒』、頼めるか?」


 

 一応、『相棒』に頼んでみる。


 俺の期待に応えて、ジレンの乗っているイスの背もたれが可動し始める。

 『相棒』、便利すぎる。



「うわっ...勝手にイスが動いたぞ?

 ...これで楽な姿勢に落ち着ける訳だ」


「それくらいでいいか?

 あとシートベルトも着けないとな」


「これ以上倒すと、寝ちまいそうだな。

 そのしーとべるとってのはどうするんだ?」


「俺が着けてやるよ」



 流石にシートベルトは自分で着ける必要があったので、俺はジレンにシートベルトを着けてやった。


 

「これはなんのために着けるんだ? 動きにくいんだが...」


「事故った時に、体が吹き飛ばないようにするためだよ」


「いざって時に動けなきゃ困るぞ? 外し方はどうやるんだ?」



 いざって時ってどんな時なんだろうか。



「外す時はここの部分を押し込むんだ、やってみ?」


「おぉ、これくらいすぐ外せるなら大丈夫だな」



 「カチッ」と音を立ててジレンはシートベルトを外す事に成功する。


 そのままジレンは、さっき俺が着けてあげたように自分でシートベルトを着け始める。

 これでジレンも、車に乗るために最低限しなければいけないことをマスターしただろう。


 シートベルトをしっかり着けたのを確認してから、俺はエンジンを掛ける。



「じゃ出発するか。

 『相棒』、今度は俺が運転するぞ」



 森の中ではずっと『相棒』が動かしていたので運転する必要は無かったが、そろそろ自分で運転したくなってきたので今回は『相棒』に休んでいて貰う。


 自動運転もロマンがあるが、やはり自分で運転したいと思うのは車乗りの性だろう。



「道案内は任せとけ。

 つっても、街道に入れば真っ直ぐだがな」


「Ok、カーナビ任せた、ジレン」


「かーなび?」



 ジレンが首を傾げるのを余所に、俺はアクセルを踏んで発進させる。


 まさか初めて助手席に親以外で乗せるのが渋いおっさん...見た目だけだけど...になるとは思わなかった。


 始めては女の子が良かったなぁ、と思いながら、ジレンが指し示す方角へ俺は車を走らせる。


 王都には何が待っているのか、想像するだけで楽しみだ。


 漸くほとんどの説明パートは終わりました。

 まだ深く世界観を語った訳ではありませんが、これからのお話で語っていくつもりです。


 分かりにくい部分がありましたら気軽にご指摘下さい。


 続きが気になった方は、どうぞブックマークをつけていって下さい。 

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] 今思い付いたのですが…スライムの名前が必要になるなら…命名!“バンブルビー”…略してルビーはどうでしょう!?…全自動自動車を見てトラン○フォーマーを彷彿しましたので!
[気になる点] “まぁムカッと来たときに人を煽ってそれが原因で怒られている事がほとんどなので、自業自得なのだが。” そうだったね主人公!…それが原因であの角ボスに追いかけられた訳だからねぇ!…まぁ主…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ