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異世界ドライブ~トンネルを抜けたら、そこは異世界でした~  作者: 天城/あましろ
序章~異世界へドライブ~
5/33

5 邂逅、森の主

話の中で、不自然な事があったら気軽に教えてください。

ブックマークありがとうございます。


 『相棒』が走り出してから数分、俺達は順調に森の中を進んでいる...訳ではなかった。


 野性動物、さっきのトナカイ(?)しかりウサギとかイノシシとか熊とか、森の中にいるであろう動物達と遭遇した。

 

 ズドン!


 出会った動物達はあのトナカイ(?)とは違い記憶にあるような標準サイズの大きさだったが、どの動物の頭にも必ず『角』が付いていた。


 見た目だけが変わっている生物なら珍しいだけで害はないのだが、どの動物も必ず俺達に突進してくるのだ。

 大小様々、しかし先端が鋭く、とても殺傷性が高そうな『角』を此方に向けて。


 ガツン!


 イノシシがその角を構えて突進してきたり、可愛らしいウサギがヘドバンしながら角を振りかざしてきたり、小さめの熊...角も比較的大人しい見た目だったので恐らく子熊...が飛び掛かってきて、頭の角を『相棒』に擦り付けて来たり。


 森の動物達は様々な方法で俺達に襲いかかってきた...子熊の時はちょっと可愛かったけど...


ドゴン!


 たった今フロントガラスに突っ込んできて『相棒』に吹き飛ばされたのは、一本の角を持った鳥だ。


 さっきから頻繁に森の動物達が俺達に向かって突っ込んでくるのだが、『相棒』はそれを完全に無視して全部吹き飛ばしている。

 あのトナカイ(?)...事故じゃなくて、今見たく『相棒』に情け容赦なく轢かれたんだろうな。


 ちなみに、先程『仮称:角鳥』がぶち当たったフロントガラスには、傷一つついていなかった。

 今までも、動物達が突っ込んでくる度に『相棒』の状態を確認しているのだが、車体には傷も凹みも存在しなかった。


 車の強度は壊れる所は壊れる用に設計されている。

 絶対歪まないとか、絶対に壊れないとか、そんな設計をすると、材料の剛性に問題が出てきたり、事故に会った際の運転手等への被害が増えてしまう。


 材料を変えたりすればいくらでも頑丈な車は作れるだろう。

 だが俺の乗っているこの『相棒』は極一般に普及している普通車であり、大衆向けに販売されている自動車の値段が高くなってしまうような高コストな設計はされていない。


 つまり、強度には限界があると言うことだ。

 

 なので、ある程度の大きさの動物と正面から衝突すれば、普通はどこかしらに傷がつくはずである。

 だが、車体に傷一つついていない様子を見るに、どうやら俺の想定よりも『相棒』の強度が上がっているようだ。


 原因は薄々分かるが、原理はまったく分からない。


 今回も車から降りて『相棒』の様子を確認する。

 『相棒』の事が心配で傷がついていないかを毎回確認しているが、『相棒』から降りている目的は損傷の確認とは別にある。


「よいしょ...っと」

 

 この黒い『石』、『相棒』のご飯なるモノを、吹き飛ばされた動物達から回収するためだ。


 先程突っ込んできた角鳥は、『相棒』に吹き飛ばされた勢いで、周囲に自生している木の内の一本に衝突し、ただの赤いシミとなっていた。

 動物達は此方に殺意を剥き出しにして突っ込んでくるので、走行中の『相棒』との正面衝突の時、余計にダメージを喰らっているのだ。


 ちなみに、悪路を走っている為スピード自体は出せていない。

 その事から、動物達がかなりの殺意を持って全力で突っ込んで来ているのが分かる。


 恨まれている理由には心当たりがありまくるので、さっさと地面に落ちていふ『石』を回収して給油口へ放り込んだ後、そそくさと『相棒』に乗り込む。


 動物達を吹き飛ばす度に同じように採取した『石』を『相棒』に与えているが、目に見えて『相棒』が元気になっているのが分かる。

 めちゃくちゃヘッドランプとかテールランプをピカピカさせているので、きっと美味しい『石』なんだろうな、『相棒』にとっては。


 回復しているのは、厳密には『相棒』を乗っ取ったスライムなのだが、『相棒』が自走し、『相棒』と意思疏通が出来ているという事実が俺にはとても喜ばしく感じるので、これはこれで有りかもしれないと考えている。


 俺と『相棒』は信頼しあっているので、『相棒』は俺のことを護ってくれるはず、そう根拠も無しに信じてた。


 スライムがただのモンスターであり、『相棒』が突然俺の事を襲ってくるかもしれない、そんなことはもう考えなくなっていた。

 

 それとともに、この森には俺達の命を狙っている危険生物がたくさん存在しているという現実を、頑丈になった『相棒』の中でぬくぬくしていた俺には認識する事が出来なかった。

 

―――――――――――――――――――――――


「おっ、開けたとこに出たな」


 道中、ぶつかってくる動物達と交戦しながら、代わり映えのしない景色に辟易しながらも森の中を突き進んでいた俺達。


 そんな中俺達はやっと、空も見ることが出来ないような鬱蒼とした森とは違った景色に辿り着いた。


 そこは、あたかも斧を落としたら女神様が出てきそうな、澄みきった湖だった。


「『相棒』、止まってくれ」


 ずっと車内に居たせいで、そろそろ外に出たいな、と思っていたので、『相棒』には止まってもらう。


 外に出ようと俺がドアを開けようとしたら、察してくれた『相棒』が先にドアを開けてくれる。タクシーに乗る時、運転手が操作してドアを開けてくれたりするのを思い出した。


 まぁ、タクシーを使うほど金銭面に余裕は無かったので、利用する機会が無ければ一生使わなかっただろうな。


 でも、乗りたい時、降りたい時に、車のドアが勝手にパカッと開いてくれるのは、中々に気分がいいものだ。金持ちになった気分。


 『相棒』から降りた俺は、思いっきり背伸びをして、澄みきった空気を目一杯吸い込む。


 最近の車は排気に気を使い、排気に気を使っていなかった時代よりも大気中の汚染は抑えられたと良く聞く。

 しかし、人の営みが盛んであればあるほど汚れていく都会の空気と比べると、そのような汚染が一切無さそうなこの場所の空気は、まさに自然を感じられる気持ちのいい空気だ。


 深呼吸するたび、心が落ち着いてくる。

 

「スー...ハー...」


 軽く体を曲げたり、屈伸したり、また深呼吸したりして、この空気を堪能する。


 車に乗るのは好きだが、閉鎖空間にずっと籠っているのも体に悪いので、長時間の運転の後はいつも体をほぐしている。


 車に乗ってるだけだとしても、座りっぱなしは体に悪いのだ。



 適当な所で運動を切り上げ、俺は湖へと近づく。

 

 後ろから『相棒』も付いてくる、ゆっくりとしたスピードで。

 

 湖へ落ちないように気を付けながら、俺はしゃがんで湖に手を入れる。

 ... 冷たく、キンッキンッに冷えていた。


 飲んでみようかと思ったが、細菌がいたり汚れたりしてないかなと心配になる。

 一見、澄んでいてキレイでも、腹を壊したりする事も考えられる。


「確か、動物達が飲んでいるような水は人間も飲めるんだっけ?」


 そんな話を思い出した俺は、周囲に動物が居ないか確認する。


 さっきまであんなに、森の何処かから沸き出てくるように姿を現していたのだ、見渡せば一頭くらい居るかだろう。

 

 キョロキョロ見渡して探していると、ちょうど湖の向こう岸の森の中から二頭の鹿が現れた。


 最初に見たトナカイと似ていたが、角と体の大きさがトナカイと比べて小さく、恐らく幼い個体だと推測できた。


 はて、トナカイなのか鹿なのか...知識も無い俺にはどちらも同じように見えるので、まぁいいか、と考えるのを止めた。


 俺はそのまま二頭の観察を続ける。

 

 ジー...



 ボーッと見ていたら、此方に気付いた二頭の鹿が、ギョッとした顔で此方を見てきた。


 また突っ込んでくるかな?


 だが、俺と二頭の間には湖があり、水の上を走りでもしなければすぐ此方に来ることは出来ない。


 余裕が出た俺は、さっきまでの腹いせも含めて挑発することにした。


「やーい! さっきからお前達の仲間がうざいんだよ! とっとと棲み家に帰りやがれ! べろべろばぁ!」 


 とても他人に見せられないような変顔で、愛する『相棒』を壊そうとしてきた奴らへの恨みを発散する。


 対する二頭は、なにも反応してくれなかった。


「...」


醜い変顔を数秒維持していたが、何処か虚しくなったので、俺は変顔を止めた。

 

 二頭の鹿は、襲ってくる気配も無ければ動こうとする気配も無く、視線だけ此方に向けていた。


 ...?


 何か変だな?


 あの二頭、俺じゃなくて、俺の後ろを見ているような...


 俺はゆっくり振り向いた。


 「...」

 「...」


 目が合った。

 たくさん。


 ()()()()()()()()()を備えた顔面が、此方を見ていた。


 四足歩行で、見た目の形は最初に見たトナカイを思い出すフォルム。

 しかし、体と角のサイズが明らかにおかしかった。

 全長は『相棒』よりも大きく、その角の大きさは俺の身長ほど、四本ある角全部がその大きさだ。

 

 まるで『私がこの森の主です』と言っているかのような見た目だった。


 ちなみに、俺の身長は175cmあります。


...



 俺は逃げた。

 全速力で『相棒』の所へ走る。


「こんな馬鹿デカイやつに勝てるわけないだろ! 逃げるぞ『相棒』!」


 一目散に『相棒』の中へと逃げ込み、それと同時に『相棒』が発進する。


 俺と『相棒』は、颯爽と森の中へと逃げ込んだ。


 どこぞの三代目の怪盗の逃げ足を彷彿とさせるようなその逃げっぷりに、『仮称:森の主』は一瞬唖然としたが、すぐに『森の主』のモノであろう咆哮が、森中に響き渡った。


...鹿って、あんな猛獣みたいな鳴き声する?


 そんな疑問は、咆哮のすぐ後に、何処かに落ちた稲妻による閃光と轟音によって掻き消された。


 ...俺は、とんでもないやつらに喧嘩を売ってしまったようだ。

 毎度お馴染みの不定期更新。

 『異世界転移:森の中編』は次で終了です。


 興味が出たら、是非ブックマークをつけていって下さい。

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