1 孤独なドライブ、トンネルを抜ける
異世界ドライブ、私の初作品をどうぞ見ていって下さい。
11/26 主人公の乗る車のカラーを藍色に決定しました。
白部 純一、二十歳。
俺は今日、失敗した。
せめて行く先を決めて天気予報をチェックするべきだった。
こんな土砂降りになるなら、別に今日無理して一人ドライブなんてしなかったんだ。
誰も通らない山道、舗装された道路の両側にはガードレールが設置され、その向こうは自然そのままの森だ。
カーナビを見ればここを越えれば国道。
空は黒く、かなりの厚みの雲が掛かっているのだろう、昼過ぎだと言うのにかなり暗い。
降りしきる雨音、風の音、車のエンジン音。
普通なら気にも止めないそんな音が一番に耳に飛び込んでくる。
それが一層、俺の孤独感を刺激する。
彼女じゃなくても、助手席に乗ってくれる友人でも居たら楽しいだろうなぁと思ったりして、休みを取った事をちょっと後悔している。
俺はただ、日々のバイト疲れ、追われる大学の課題の締切、友人も居らず一人傷心する日常を打破したいと思ったから、今月のバイトのシフトに休みを多く入れてもらっただけなのだ。
今日はそのバイトが休みの日。
海にでも行こうかと思って即日、サクッと行ってサクッと戻るつもりで俺はこの『相棒』と出掛けることにした。
『相棒』が誰かって?
友人も居ないんだ、居るのは俺とこの愛車だけ。
大学合格祝いに買って貰ったこの車は、元々艶やかな藍色だったが乗り回している内に少しくすんでしまっている。
車種に関してはそこらへんを走っている車と代わり映えのしない極平凡な車種なので、想像にお任せする。
どれだけ平凡でカッコよく無かったって、俺を知らない場所へと連れていってくれるコイツは、代わり映えのしない日常に期待と好奇心を生み出してくれる、まさにパートナーの様な存在だ。
俺は人一倍好奇心旺盛だと思う。
敢えて山道を選んだのも、普段通らない道なので面白そうだったからだ。
たまに冒険した結果、買わなくてもいい物を無駄に買って使わなくなったり、普段通らない道を歩いたら帰り道が分からなくなって1時間以上迷ったりして、後悔する事が多かった。
流石にこうやってドライブをする時は、帰り道が分かるようにカーナビに従っているわけで、行ったことが無い道や場所でも迷うことは無い。
だが、今日は迷った。
道に迷ったんじゃない、ここから先どうするかを迷った。
目の前に、カーナビには表示されていない、謎の『トンネル』があったからだ。
「...トンネル?
おかしい、曲がり道も無かったし、このまま行け
ば国道に出れるはずなんだけど...」
車通りも無さそうなので、ゆっくりとしたスピードに落として、そのトンネルを観察する。
新しめのキレイなトンネル、標識とか何かしらの看板も無い、名前も見た限りでは無さそうだ。
カーナビにもトンネルがあるとは表示されていないが、最近出来たのであればしょうがないのかもしれない。
でも、カーナビが道を示していたってことは、最初から道があったはずなんだが...
不気味なトンネル、しかし、好奇心には逆らえそうにない。
数秒考え、俺は決心して、このトンネルを越えることにした。
「...暗すぎる」
車のライトは着けている、外が暗いのだから、多少明るくても着けなければならないと思った。
だが、トンネルの中には普通誘導灯が設置されていて、多少は明るいはず。
なのに、それが一個も無い。
まるで洞窟の中のような...
ザーーーー...
つけてもいないラジオから、ノイズ音。
パキッ、ピシッ...
所々から鳴る、不穏な音。
幽霊トンネル?心霊現象にでも巻き込まれた?
そんなことを想像しながら、不安を抱きながらも、進む。
示された道は真っ直ぐ、ここしかないのだから進むしかない。
「!?」
途端に、エンジンが止まる。
高速で飛ばしていたわけではないので、徐々に減速し車は止まる。
壊れた?
いやそんなはずがない、まだ買って一年とちょっとしか経っていない。
タイヤのパンクか?
さっきまでの不穏な音がそうだとしても、エンジンが止まるのとは訳が違う。
どれだけ推測を並べても、車は動かない。
エンジンが止まったのだから明かりも消え、行動を起こす気にもなれない。
動かない車の中、じっとすること数分、改めてもう一度エンジンを着けることにした。
キーを捻り、エンジン始動。
すると、エンジンは簡単に再起動した。
良かった、と思ったと同時に、最初からそうすれば良かったと後悔した。
不意のトラブルに対応するためには物事の観察、思考が大事であると心掛けているのだが、今回は杞憂だった。
さっさとこの不気味なトンネルから出ようとした俺は、スピードを上げる。
トンネルに入ってから30分位たっただろうか。
普通のトンネルを越えるにしては異様に時間を掛けてしまった。
前方から外の光、景色は見えないが、このトンネルを抜けれることに俺は安心する。
俺はそのままのスピードでトンネルを抜けようとした。
しかし、外の明かりは曇天の暗さとトンネルの暗さに慣れていた俺の目にはとても眩しく感じるモノだった。
俺は、不意に目を閉じてしまった。
運転中に視覚を奪われることの危険を予測していなかった。
ガスッ!ガン!
「ぐふっ!」
エアバッグが作動するほどの衝撃、しかし、何かに正面衝突したわけではなく、擦りながらぶつけたといった音が響いた。
「...マジか、事故ったぁ...」
失敗した。
まさか休日にこんな不幸が重なるとは、つくづくついてない。
目の前に立ち塞がるの、自生している木々。
不幸中の幸い、どうやら木々の間を上手く擦り抜けたようで、衝突して真ん中から凹むなんて事にはならなかった。
だが、少なくとも車の前方はガタガタだろう。
俺の愛車が! とか思いながら俺は項垂れた。
損傷を確かめるべく、俺は車を降りた。
ザリッ...
「...あれ?」
土を踏む音、舗装されたコンクリートじゃない。
車道を越えちゃったか?
そう思って俺は来た道を振り返った。
...結論から言うと、道路は無かった。
代わりに、そこには断崖絶壁が聳え立っていた。
もう一度周囲を確認する。
目の前だけではなく、周囲一体に木々や植物が自生している。
そこはもう、森だった。
「...ここ、どこだ?」
トンネルを越えたら、そこは自然豊かな森でした。
私の初めての作品『異世界ドライブ』は、『異世界に車を持っていったら?』というテーマが面白そうだと思ったので書き始めました。
小説を書くのは初めてなので、拙い文章になりますが、自分でも面白いと思えるストーリーを書いていくつもりです。
もし宜しければ評価の程を、続きが気になる方は是非ブックマークをつけていって下さい。
これから『異世界ドライブ』を、どうぞ宜しくお願いします。