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「え、いや。なにも」
この時はもう何も感じなくなっていた。
心がすり減って、臆病な自分が、もう何にも動じなくなった。感情が死んでいた。
「飛び込もうとしてたじゃない!」
正義感の強いガキだな。
声を大きくすれば、人が話を聞くとでも思ってるのか。
「そうだな」
「そうだなって、死にたいなら人目のつかないところで死ねばいい!」
「そうだな」
俺は無視して歩き出した。
後ろから喚く声がき声気がしたが街の喧騒に掻き消されて何も聞こえない。
会社の前に来て、引き返した。
死にたい人間がなんで働かなきゃ行けないんだ?
時間が無い中で安い給料が積み重なってそれなりに金は貯まってた。
使い切って死のう。
叫びたかった。でも既に大きな声の出し方は忘れてしまった。