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「うわっ!寝過ごした!」
慌ててデジタルの時計を見れば、表示は5時半。
こっから寝癖直して、ヒゲ剃って……朝食べる時間は無さそうだ。
カバンを探そうとして力を抜いた。
「そうだ、辞めたんだ」
バタッと勢いを殺さずベットへ身を投げる。
日も出てないし、このマンションで生活音が鳴っていない。
「寝よ」
無職になってから早、1週間。
眼に濃べり付いていた隈はすっかり取れた。
痩せそほそった頬も幾分か肉が着いたように思える。
ここ何年か、自分を殺し続けていた。
涙はとうに枯れた。
横断歩道を見る度に飛び込みたいと思った。
人生の意味を考えた。無駄だと結論づけた。
生きる意味はない。死ねなかった。それだけだった。
ある日、とうとう脳みそが正常に機能しなくなったのか横断歩道を赤のうちに歩いた。
もちろん車がものすごいスピードで通っている。
フラフラ〜と歩き出す俺を引っ張って止めた奴がいた。初めは恨んだ。あと少しだったのに。
その時の俺はきっと何かに取り憑かれている様に自分を止めた存在を殺そうとした。
でも、辞めた。いや、出来なかった。
「何やってンスか!」
そう言って俺の襟首を掴んで怒鳴ったのは女子高生だったからだ。