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47話後編 縁談って本当?(L)

 はしたないことをしてしまった。

 ずっとダーレの近くにいるのに、なんだか近くにいない気がして、王としての仕事で行くだけなのに引き留めてしまうなんて。


「ダーレ……」


 朝早くにダーレが手配した王都の騎士団が、ドゥファーツを襲った部隊を率いて去っていく。

 ダーレはなるたけ早くに戻ると言っていたけど、あの人数の処遇をどうこうするには時間がかかるのではと思ってしまう。


「考えていても仕方ないわね」


 着替えて城を出る事にした。

 勿論ダーレを待つけど、何もしないで待つのではなく、いつもと同じように過ごそうと思って。


* * *


「姫様、こちらを手伝ってくれますか」

「ええ」


 あっさり一週間が過ぎた。

 ダーレはまだ帰ってこない。


「手紙の一つでも寄越してくれたっていいじゃない」

「姫様?」

「あ、なんでもないの」


 盛大な独り言を言っていたらしい。恥ずかしいわ。

 ちょっとした間違いも今日は多いし、気を引き締めないと。皆の仕事を手伝っているのに、仕事を増やすわけにはいかないもの。


「そういえば、この前エルドラード辺境伯の領地近くまで行ったのが、あー、誰だったっけな」

「え!?」

「フルリンさん家だっけ?」

「いや、フルリンさん家は領地と王都の間の……えと、なんていう村だったか、ヤギを売りに行ったってやつだろ?」

「え?!」


 皆がこの国から出て色々商売しているのも驚きではあるけど、その外の情報が気になる。


「ああ、姫様。うちはもう終わりましたよ。他を手伝ってあげてください」

「私、フルリンさんの家にいってきます」

「はいはい、今日もありがとうね姫様」

「ええ」


 なんでもいい、外の情報が知りたかった。

 フルリンさんの家に行くと、家に人はいない。畑だろうかと先を急いだ。


「それにしてもねえ、縁談って本当かい?」


 不穏な言葉に足を止めた。茂みの向こうから聞こえる声はフルリンさんだ。


「なんでも第一継承者が王位を辞退したから、時期王としてきちんとしたお相手が必要だって話だそうだ」

「でも、それだと姫様は」

「まあ王族に限っては王妃は一人でなければならないって決まりはないからな」


 明らかにダーレの話。

 きちんとした相手って何。

 王妃が一人ではないってことは他に王妃になる方がくる?

 私では役不足って事?


「ダーレが、私以外と」


 ラウラ待って


「黙って」


 精霊たちが囁く。

 今は駄目よ、なんだかとっても苛々するもの。


「で? その話はどこまで進んでいるのさ?」

「なんでも顔合わせまでしたって話だそうだ」


 握る手に力が入った。

 大国ユーバーリーファルングの王の相手が小国ドゥファーツの第三王女では役不足だというのは分かる。

 権力関係を鑑みれば、王都にいる上位貴族の娘との結婚の方がより良い話だろう。

 となると、私は第二妃になるってこと?


「なによ」


 あれだけ私が好きだなんだ言って、追いかけ回して引っ付いて来ておきながら、ここで縁談を受けて顔合わせするわけ?

 王となった途端、手のひら返してきて。

 しかも私に何も言わずに。

 一人で帰ったってこういうことをだったの?


「ラウラ?」


 踵を返して城へ戻ってきたらしい。

 姉様に話しかけられて、やっと気づいた。思っていた以上に早く歩いていたのか、息が上がっている。


「え、姉様」

「ひどい顔じゃん」

「どうしたっていうの?」


 途端、悔しさと悲しさに涙が滲んだけど、そこはぐっとこらえて泣かなかった。

 それだけで姉様達には分かってしまったらしい。


「ラウラ、どうしたいの?」

「……」

「やりたいようにやればいいじゃん」

「やりたいように?」


 そうだと頷く二人。

 今までの私なら、ここに留まっていた。私にそれだけの価値がないからと嘆いて。

 でも今の私は?

 私は私にたくさんの制限をかけていた。

 私なんかじゃ駄目だと思っていた。

 けど。

 私は幸せになっていいんだと、そう思えてる。


「私、行くわ」

「いいね」


 私はダーレに助けてもらった。

 そこで得た応えの中に、確実に信じられるものがある。

 ダーレが私を好きということ。


「いってくるわ」

「ええ、いってらっしゃい」

「一発殴っておいで~」


 姉様に笑いかけて、私は飛んだ。

 ええ、本当に。

 こんな気持ちにさせてなんなのって言って殴ってやるわ。 

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