表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
58/79

39話前編 すっかりでーとを楽しんでいたなんて恥ずかしい(L)

「僕の連れが何か用?」


 連れ立っていた商人数名が少し引いている。なぜ。


「なんだ、連れいんのか」

「……大方、まがい物を押し売ろうとしたってとこか」


 売られてるものを端から端まで見て、ダーレが溜息を吐いた。

 商人たちは納得がいかないとばかりに、ダーレに食って掛かった。


「ふざけんな、どれも値打ちもんだぞ」


 値打ちものねえ、とダーレが呟いた。その声音は少し不快を滲ませていた。

 彼らには聞こえなかったらしく、次にダーレが口を開いた時、心底驚く事となる。


「なら言わせてもらうけど、そこの茶器は取っ手のつける角度が違う。九十度じゃなくてやや内側に傾いた八十度と決められてる。そこの皿はくすんだ赤の装飾をしてるけど、そこの生産国では鮮やかな赤の墨があるんだよ。年月経っても色褪せないから幻赤墨とか呼ばれてる。そしてそこの宝石、こうして傾けて太陽に当てると色が変わるのに、透明のままということはまがい物で間違いないよね」

「な……」

「こっちの彫刻はさ、指のここ、真っ直ぐなんだよね。しかもこんな小さいのに爪にサイン入れるんだよ。これこの彫刻家しか出来ないから、すぐにわかる。それに」


 ダーレったら、全部違うところ言えるのね。不謹慎だけど感心してしまったわ。

 それは相手も同じだったのか、ダーレが全てを指摘し終えたら、言葉を失ってしまった。

 ダーレは意地悪な笑い方して、最後に一言添える。


「今なら王都の騎士団にしょっぴかれずに済むけど?」

「チッ」


 相手方は眉間に皺寄せて去っていった。


「すごいわ、ダーレ」

「感心してる場合じゃないでしょ」


 振り向きざま、肩に手を起き、わずかな力で押されて壁に突き当たる。

 いたく不機嫌そうだ。


「一人にならないで」

「ごめんなさい」


 何とも言えない顔をして大きな溜息、そのままぐっと距離を詰めてきた。


「ダーレ?」

「他の男が触れたかと思うと堪えられない」


 至近距離で捕まれていた手をとられ、目線の高さに持ってこられる。

 わざとなのか、その場で私の手首に唇を寄せた。


「だ、ダーレ」

「黙って」


 時間かけてる。わざとだわ。

 やめてと言ってもきいてくれない。手を離そうにもがっつり掴まれてる。


「ダーレ……」


 暫くして、ダーレの唇からやっと解放された。

 ほっと肩を撫でおろすも、今度はダーレがさらに距離を詰めてきた。

 耳元に唇が寄せられる。


「ちょっと」


 さすがにだめよ、いい加減終わらせないと。

 恥ずかしさに全身熱くて、どうにかなってしまいそうという時、落ちついたダーレの声が耳を掠めた。


「ラウラそのまま」

「え?」

「出てきた」


 やっとそこで囮であったことを思い出した。

 私ったらすっかりでーとを楽しんでいたなんて恥ずかしい。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ