38話前編 いいじゃん、朝のキスぐらい(L)
「……」
目を開けると見慣れない天蓋だった。
どこかと思って少し考えると、そういえば王都ザーゲに来ていたことを思い出す。
そうだわ、私いきなりダーレにキスをせがまれて、あちこち触られたんだった。恥ずかしさに両手で顔を覆った。
「ふう……うっ!」
横になって息を飲んだ。
ダーレが隣で寝てるんですもの。驚いて声を失って当然よ。
少し上半身をあげて周りを確認する。
ダーレに連れて来られた部屋、カーテンの隙間から僅かに見える光加減からまだ朝早いことがわかる。
「わ、私……」
ダーレの触れ合いの過剰さに慌て疲れて気を失うように寝てしまったことだけは覚えてる。夕餉もとっていない。確かその時ダーレが一度声をかけてくれた気がしたけど、今一記憶が確かじゃない。
「ラウラ」
「あ、ダーレ」
起きてしまったダーレが私の手首を掴み、そのまま引っ張られる。
あっさり態勢を崩してベッドに逆戻りだ。
「ラウラ」
「ダーレ、離して!」
寝ぼけているのか掠れた声で私を引き寄せる。
私の声なんて耳に入ってなさそうだった。
「君ってば全然起きないから」
「それは、」
「うん、仕方ないよ。色々あったし」
おかげで気にすることなく父と話せたからと言うから、そこはよかったと思った。ずっと会ってないなら、もっと会って話した方がいいと思ったけど。
「ラウラ平気? 辛くない?」
「大丈夫よ」
「そう……よかった」
離してくれる雰囲気がない。まさか急に同じベッドで寝てるなんて、現実味がなくてどうしたらいいかわからない。
「ダーレ、起きて」
早く離れてくれるよう、そう言ってみるけど、ダーレはうんうん唸って中々意識がはっきりしない。
「もう少し寝ない?」
「私は起きたいのよ」
「もう少しラウラと一緒に寝たい」
「それはちょっと……」
濁すとダーレが少し声音を落として不機嫌そうに腕を緩めてこちらを覗いた。
「なに? 僕達夫婦になったんだよ? 一緒に寝てたっておかしくないでしょ」
「それは、そうなんだけど」
昨日からやたら夫婦になった事をかざしてくる。それはわかってても、慣れてこなせるかと言われるとそうではないのに。
「……ふうん」
「ダーレ」
「いいよ、起きよう」
腕が離れていてほっとしたのも束の間、さりげなく額に触れる感触にはっとする。
「ダーレ!」
「いいじゃん、朝のキスぐらい」
不意打ちにキスしてくなんて。
朝から心臓が持たない。私、このままダーレとうまくやっていけるのかと心配だわ。




