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35話前編 王位継承権返上の件だが、受理していない(L)

「場所を移そう」


 私とダーレは王陛下の後を進んだ。

 側付の騎士は私達の後ろ、距離をあけて静かについてきている。


「歩きながらですまない。先程は申し訳なかった。王女殿下に命令するとはおかしい話だね」

「いいえ、おかしいことでは……」


 小国ドゥファーツを従えているのは大国ユーバーリーファルング。

 立場としては王陛下の方が上になる。そうなると、私が先だって正式な挨拶を行い、それに対して許しを与えるのが王陛下で間違いない。


「父も伯父もこの国の少数民族を同じ立場と見ているし、法でもそう定めている」

「それは……」


 案内されたのは王陛下専用の迎賓室。

 装飾や家具、用意されている飲食物から判断できる。

 正式な客人として迎え入れられていると分かった。


「どうぞ、掛けて」

「ああそんな畏まらなくていいから」


 王陛下と王妃から柔らかい笑顔で促されるけど、やはり目の前の人物に緊張してしまう。


「ふむ。では緊張が解けるような話からした方がいいかな?」

「伯父様のお話ですか?」

「え、その」


 私の返事をなくして、勝手に話が始まってしまう。この強引さ、少しダーレに似ている。


「エルドラード辺境伯は、歴史を鑑みても名君だったという所から始めるか?」

「恋バナからでいいではないですか」

「こいばな?」


 ダーレの良く分からない言葉は御両親から受け継がれているのね。それにしても、こいばなとは何の事。


「まだ現役で若かった頃は、君のとこの占術士さんに通い詰めだったよ」

「それは現役退いても同じだったけれど」

「いや、二人の雰囲気が全然違う」

「確かに」


 大婆様とダーレの大伯父様とは古い面識があるようだった。

 大婆様はあまり話してくれなかったし、あるとしても自分が幼かった頃の二人の姿しか記憶にない。

 二人は誰が見ても好き合っていて結ばれてもおかしくなかったのに別れ、ドゥファーツも襲撃に遭い城を移してからは王都の人間は誰も関わる事がなくなった。


「リーベを見てると、若い頃の伯父を思い出すな」

「一緒にしないでください」

「いいじゃないか、結婚したんだろう?」


 手紙をきちんと読んでくださっていたのか、私がエルドラード辺境伯としてのダーレと結婚した事をご存知だった。

 初めての御挨拶がこんな形になってしまった事を王陛下から謝られ、慌ててこちらも直接の御挨拶が遅れた事を謝った。やっぱり本来なら、双方の御両親には挨拶を通した方がいい。


「いいんだよ、ラウラ。別に挨拶する必要なんてないさ」

「ダーレは縁切ったって言ってたけど、こういう事はきちんとした方がいいわ」

「縁?」


 王陛下がダーレの言葉を拾う。あまり触れない方がいい話題の気がするけど。

 今でこそ雰囲気はいいけれど、縁を切って王族を止めるなんて本来は城にすら入れないはず。


「もう僕はエルドラード辺境伯であって、王位継承権も返上したでしょう」

「ああ、それか」

「ん?」

「リーベはそう思っているだろうな」

「んん?」

「王位継承権返上の件だが、受理していない」


 にっこにこの御両親を前にダーレは固まってしまった。

 小さく名を呼んで、服の裾を引っ張ってみるけど、それでもだめ。

 どうしようと思った所でやっと彼が我に返った。


「どういうことだよ!?」

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