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34話前編 逆行。彼と共に戻り、傷を癒す(L)

「え?」


 戻っていく。

 少し後ろに引き寄せれるような、つっぱり感があるのは以前と変わらない。

 私とダーレは金の輪の中にいたまま、周りだけが戻っていく。

 銃撃戦を潜り抜け、ダーレが来る前に騎士たちが配置され、さらにはその前まで。


「嘘だろ」

「ダーレ?」

「傷が……」


 彼が脇腹を押さえていた手を離すと、その傷口は滲んでいた血が粒子となって空中へ霧散し、収束して完全に消えた。

 彼は服を捲って肌を直接確認すると、そこには銃による傷なんてどこにもなかった。


「どうして……」

 

 この魔法はダーレの傷だけを、時を戻して治してしまった。

 いつだって私だけが記憶を有したまま、周りだけが以前に戻っていたのに。

 対象は私だけのはずなのに、ダーレも記憶をそのまま一緒に逆行している。感覚は以前と同じなのに作用が違う。何故? 私がダーレを助けると決めたから?


「私が……願ったから?」

「ラウラ?」


 逆行の終わりが来る独特の感覚に我に返る。

 金の輪がなくなって辺りを見回せば、ダーレのお兄さんが来る前の誰もいない柱も折れていない旧迎賓館に戻った。

 感覚で分かるのは、そんなに時間を遡っているわけではなく、ダーレ達がこの城に到着したあたりまで時間が戻ったようだ。この感覚も変わらない。今この魔法(ちから)で違うのはダーレに起きてる事だけ。


「これが、ラウラの」


 困惑と驚きを滲ませながら、脇腹を再度触れている。赤黒く染まることのないのを見て、安心したのか頬が緩んだ。


「よかったわ。傷が治って」


 ダーレを見上げて笑うと、ぐいと腕を取られ引き寄せられた。

 彼の腕に抱かれる。随分と抱きしめられてなかったわけじゃないけど、何故だかすごく懐かしく感じた。


「すごいや、ラウラ! 僕撃たれたのに」

「痛むとこはない?」

「全然!」


 彼の元気な様子にほっとする。

 よかった、助けることができた。

 まだはっきりとどうした理由で魔法(ちから)が使えたのかは分からないけれど、時を戻すことが出来た。それがとても凄いことに思えて気持ちが高揚する。


「よかった……」


 父様と母様の時は使えなかったけど、二度も使えずに後悔しなくてすんだ。


「と、いけない」


 自分から抱き着いてきたのに、肩に手を置き勢いよく離してくる。


「いけない、さっさとやろう」

「え?」


 なにを、と聞く前にダーレははっきり応える。少しだけ瞳の奥に怒りを燻らせていたけど、私に気を遣ってくれたのか、努めて明るい調子で言った。


「折角戻れたんだ。撃ち合いなんてやらないで済ませてしまおう?」

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