26話前編 次帰ってくる時は、この城で結婚式を挙げる時だけ(L)
「ラウラったら」
「ち、違うのよ。そのタイミングというか雰囲気としてはもう応えたというか」
「えー、でもあっちは婚約受けてくれたとは思ってないかもよ?」
「うっ……」
「今までの流れだと、貴方が婚約破棄の手続きに帰って行ったと思われているかもしれないわね」
「そんな!」
あ、でも破棄は駄目だと念を押されたわ。あくまで飛べたことの報告だけしに行くという形でしか認めてもらえてない。もしかして本当にダーレは破棄されると勘違いしているのではないの。
「にしてもラウラ奇特だよねえ、あれでいいの?」
「マドライナ姉様!」
ダーレを悪く言うのはよくないわ。彼は私を助けてくれたのに。飛ぶことだって、一緒に寄り添ってくれたのに。確かにちょっと変だけど。
「まあさ、大婆様が言うから間違いないんだろうけど」
「大婆様?」
傍でまじないをしている大婆様が手を止めて私達を見上げる。楽しそうに笑って。
「大婆様、なんて?」
「なんてことないさ」
「教えてくれないの?」
「私はただ、あの色の瞳を持つ者がいずれラウラの助けになると。だから訪れた時には無碍にするなと言っただけさ」
「大婆様みえていたの?」
私が飛べなくなること、ダーレがくること、私が飛べるようになること。
「私は多くの選択肢がみえるだけさ。勿論、その内の一つはあの青年に会わないものもある」
「そうなの」
「今日もラウラが羽を広げて帰ってくると言ったら、この有様さ。困ったものだよ」
「大婆様にそう言われたら国をあげての一大事よ」
「姉様、そんな」
「そんな? 貴方はまだそう言うの?」
姉様は何を思ったのか。国中の人間が私のことを気にしていたと言う。飛べるようになる日は来るのか、前のように自由であってもらえるのか。
愛されていることを理解しなさいと強く言われた。
今になってたくさんの人に支えてもらっていたことを悟る。これもダーレのおかげね。
「まあいいわ。貴方のそんな顔、久しぶりに見るもの」
「え、顔?」
「そういう顔させてるのも、あの青年だと思うと複雑だわ」
「いいじゃん、姉様。ラウラ可愛いし」
「そうね」
二人の姉様の間で話が終わってしまう。きいても中身を教えてくれなかった。
「それよりもラウラ。貴方は今すぐ帰るべきよ」
「え?!」
「きちんと返事してきなさい」
「え、でも、明日帰ればいいってダーレが」
それは城での晩餐やら、王族でのあれやこれやがあるだろうというダーレの気遣いで一日もらっていたのに。
「祭りはしたいよねー、新しいお酒もあけたいし」
「いいえ、次ラウラが帰ってくる時にしましょう」
「え、その」
「貴方が次帰ってくる時は正式に婚約を認め、この城で結婚式を挙げる時だけよ」
「姉様!」
外野は呑気に結婚式だと盛り上がる。
「そんな、式を、」
「勿論領地でも挙げるでしょうから、そちらが先で、その次にこの城であげましょうか」
「二回も?!」
「何もおかしいことではないわ」
衣装替え何回するーとかまた違うことで盛り上がってる。たまらなくなって、やめてと叫んでみたけど、二人の姉はどこ吹く風だった。
「さあ、早く行きなさい」
「姉様」
しまいにはぐいぐい背中を押されて広いバルコニーに追い出される。
「皆には知らせておくわ。あちらで落ち着いてからでいいから、その時に戻ってきなさい」
「姉様」
「つまりきちんと返事しなさいという事よ」
「うっ……」
私は仕方なく飛んで領地に戻ることにした。どうしたって姉様達は頑固だもの。譲ってくれない事は重々に分かってる。




