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19話おまけ 自身の変態行為を客観的に鑑みた方がいいですね(D)

ラウラがよそよそしい。


「これで終わり?」

「ええ。屋敷に戻りましょう」


 んー、反応はそこまで嫌がる感じはないけど、こう距離をとられてるというか、こう隙がないというか。

 昨日の今日だしな。まだ昨日味わった恐怖だとか残ってるかもしれないし。


「てんし様」

「どうしたの」


 子供達がこのタイミングで昨日の祭りがやらなんやらいってくる。子供達に罪はないけど、タイミングが悪い。ラウラの様子が気になって見てみるけど、特段無理をしてる感じはなかった。


「どうしたの、ダーレ」

「あ、いや」


 子供達と別れて僕の視線に気づいたラウラが不思議そうに僕を見上げていた。あ、可愛い、じゃなくて、んん、どうしよう。


「……ああ、そうなの」

「え?」

「ダーレ、さっきからそわそわしてるって」


 話し方から精霊たちだと悟る。いつもラウラと内緒話できるなんて羨ましい。


「ああ……その、嫌だったら言ってね?」

「ええ」

「昨日の今日だから、まだ怖いとかそういうの、ないかなって」

「……ああ」


 顔色は変わらず。

 声音も変わらない。

 大丈夫、とラウラは短く応えた。


「ダーレが助けてくれたわ」

「でも、その間は辛かったろ」

「ええ。でもそうね、そこは気になってないのよ」


 言い方が気になった。そこはということは、それよりも気になることがあったということだ。


「気になることが他に?」


 頷くラウラ。


「そう、その後ダーレが怪我したことが気になって」

「んん? 僕?」

「怪我も心配だし、なんだかもう少し一緒にいたかった、という、か」


 話す内容に気づいたのか、首筋から赤くなっていく。

 いやいやもうなにこれ。可愛い、というか、これかなりいいんじゃないの?

 もうこのまま結婚できるんじゃないの?


「はは」

「わ、笑わないで!」

「えー? 嬉しくて無理」

「ダーレ!」


 いくらでも一緒にいるし、いくらでも抱きしめるし、ラウラさえよければその先だって、全然問題ないよ。言わないけど。

 そんなラウラは顔まで赤くして急に走り出した。


「え、ラウラ、ちょっと」

「来ないで!」

「行き先同じだから無茶だよ」


 と言いつつも、照れ隠しなんだろうなと思いながら、ラウラを追いかけた。

 ラウラはこちらを振り向いて小さく悲鳴を上げながら、変わらず来ないで言って逃げていく。

 うんうん、可愛い。


「おや主人、変態行為も控えめに」


 がっと足をかけられ、盛大に地面に転がり落ちた。これはひどい。


「つう……手加減しろよ」

「王女様の身の安全が最優先なので」

「お前の主人僕だろ」

「時として主の暴走を止めるのも、侍従の仕事ですので」


 僕の転がる様子を見てたのか、屋敷前でアンの背中に隠れながら、こちらをちらちら見ているラウラ。フィーは僕を見下ろして溜息を吐いている。


「なんだよ、事情も知らないくせに」

「仮に主人に落ち度がなくても、嫌がる王女様を追いかけた時点でアウトですね」

「うぐう……」 

 

 過程を話せば少しは許されると思ったのに、先を越された挙げ句念を押された。最後の追いかけっこだけを考えたらだめじゃんか。


「王女様、申し訳ありません。主人、監視の隙をつくのが得意でして」

「いえ、だ、大丈夫です」

「本当、王女様の優しさに感謝するべきですね」


 えらい冷たい目線を侍従からもらう。僕、主人なんだけどねえ。


「あ、あの、もう、本当、大丈夫なので」

「よろしいのですか? もう少し懲らしめても良いのですが」

「そ、それはやめてあげて」

「おや」


 ラウラの様子の変化に二人も気づいたらしい。けれど態度はそのまま、屋敷に連れだって戻ろうとする。やっぱり気のせいじゃないな。二人が気づく時点で、ラウラは今までとは違うってことか。


「ラウラ、昼は庭で食べる?」


 いい天気だしと加えると、ラウラってば可愛い顔して顔を綻ばせた。


「ええ、いいわね。そうしましょう」

「じゃ、よろしく」

「承知しました」


 その最中、フィーにこそりと自慢してみる。


「ね、いい感じだろ? これってもうラウラ僕のこと好きじゃない?」

「調子に乗ると痛い目にあいますよ」

「ひどい」

「主人がやるべきことは、王女様に真摯に誠実にあることです」

「してるんだけど」

「自身の変態行為を客観的に鑑みた方がいいですね」

「ひどい」


 ラウラが少しでも僕に心開いてくれたのではと思える変化は、実はとんでもなくすごいことなんだと分かってもらえない。僕の味方どこ。

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