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25-18.むせる(2) あるいは初代ピッコロがタマゴ産んじゃう!

挿絵(By みてみん)


ひざまくらして……する前からわかったが、栫井(かこい)には確かに元気にする力があるようだ。

ひざまくらをすると、それが直接通る。


そして、栫井(かこい)の気持ちか、それとも洋子の持つ石の記憶なのか、何かが伝わってくる。


やっぱり、栫井(かこい)は、ひざまくらをする女を妻だと思っている。

そんなに好きなら、ずっとしてあげたいと思うが、栫井(かこい)は、ひざまくらに悲しい気持ちも持っている。


ひざまくらを通して、栫井(かこい)の持つ石の記憶が洋子に伝わっていた。


この神様……尻尾の神様を慕うたくさんの女たちが見える。

そこは雨漏りの及ばない、神に守られた空間。


神に寄ると追い散らされるが、寝るときは近くで寝たくて皆集まり密集する。

たくさんの女たちは、この神様の近くに居たい、できれば妻になりたいと思っていた。


でも、この神様は、女たちを妻の候補とは思っておらず、娘か孫のように愛でていた。


神様は、中でも特に何人かの女を、実の娘のように愛でていた。

その何人かの女たちは、自分たちは妻であると主張していたが、神はそれを認めなかった。

その女達は、神様がどこかに行ってしまうことを知っていた。


女達は、神を手放したくはなかった。それでも、その時は来てしまう。

神様は、その女たちと、お別れのひざまくらをして洋子の元に戻ってきた。


ひざまくらをするのは妻。その女達は妻になれたのだろうか?


そして、洋子もいつか、手放さなければならない……

この神様は、次はベスの世界に行くのだろうか。


「それにしても、本当に元気になるのね」


洋子は、ひざまくらをしてすぐに、身体が楽になるのを感じた。


「もう効いた?」

「ええ。すぐに。昨日調子良かったと思ったら、あれは栫井(かこい)君の力だったのね」

そうか。体感できるほど元気になるのか。

「俺も知らなかったんだけど」

「だから女にモテモテなのね」

そう言うが、栫井(かこい)にその記憶は無い。


”ぐふっ”

何故だ、”俺は女にモテたことが無い”という悲しい男なのに。


「俺は女にモテたことが無い」


栫井(かこい)は、そのことを覚えていない……

「忘れてるだけよ」


「いや、忘れる以前に、そんな機会は無かったんだよ」

「そう?」


また、唯ちゃんが苦笑いしてる。なんなんだ?


「雨漏りの神様モテモテでしたよ」

なんで、そんなこと唯ちゃんが知ってるんだ?


どうして唯が知っているのだろう?

洋子も不思議に思う。


栫井(かこい)には、モテモテだった時の記憶は無いようだ。


栫井(かこい)の記憶には残っていない。それが悲しい。


洋子も、いつか見送った後、忘れられてしまうのだろうか……そんなことを考えたが、そこで気付く。

そのための形見だ。


形見があれば忘れないのかもしれない。


栫井(かこい)君、形見は持ってる?」

「唯ちゃんに渡した」


それは昨日間違って渡してしまった洋子の形見のことだ。

聞きたかったのは、それじゃない。


「女の子……栫井(かこい)君の大事な女の人の形見は? 他には無いの?」


「俺……そんな人居ないし……」

栫井(かこい)は不思議に思う。


小泉さんには、思い当たる人が居るのだろうか?


俺が覚えて無くて、小泉さんが知っている女性?

時間を戻したことで、誰か俺の大事な女性が犠牲になった?


『オーテル、俺が形見を持ちたいと思うような女性が居るのか?』

『私が知っているのは、最初に股の布を渡したのは洋子です。そして、形見は股の布になりました』


なんか、嫌なことを聞いた気がするが、形見は小泉さんのパンツがはじめなのだ。


小泉さんに聞いてみる。

「思い当たる人が居る?」


「ううん、いいの」


そこに、オーテルが口を挟む。

「妻の形見は、お父さんが死ぬ時まで大事に持ち続けるものです」

ベスは、寝ているように見えても、いつでも答えることができるようだ。


俺は小泉さんのパンツを貰って、オーテルの世界に行って死ぬ時まで小泉さんのパンツを持ち続けるのか……

髪も貰っていくつもりなんだけど、そっちは形見にカウントされないのか?


「元気になるのは分かったけれど、これ、何の力なの?」


「魔法の力じゃ。唯も貰っておけ。体の一部が触れて居れば十分じゃ」

※唯は既にフルチャージ状態なので意味無いです


「魔法……そんなのがあるんだ」

「妾も使っておる。雨に濡れぬ」

「ベスが濡れないのって魔法だったの?」

「同じ力を使っておる」

「魔法? だったら私も、水弾けるかな?」

「唯ならできそうじゃな」


栫井(かこい)の手に触れてみるが、やっぱりガサガサしている。

唯は思う。見えている姿と、実際の姿は違うのかもしれない。


すぐに、イメージが流れ込んでくる。

また、神を返せと言われるかと恐れたが、今度は別のものが見えた。


女達が踊りで歓迎したり、ご馳走で歓迎しているシーンが見えた。

神様に、大きな果物を食べさせて喜んでいる。

喜んでいるのは女の方で、神様が喜んでいる訳では無いのだが。


手を伝って来るイメージは、いったい何なのだろう?

疑問に思うが、唯もやってみたくなる。


手頃なものが無いか、探す。


ところが、手頃なものが見つからない。

あるのは、ゆで卵くらいだ。

栫井(かこい)さん、ゆで卵は好きですか?」

「妾は好きじゃ」

「ベスじゃ無くて、栫井(かこい)さんに聞いたの」


「まあ、好きと言えば好きだけど」


そう答えると、唯ちゃんがイイ顔をしたので、若干イラっとした。


「じゃあ、これ、あ~ん」


そう言いながら、にこにこしながら唯ちゃんが迫って来た。

こんなおっさんに、ゆで卵食べさせるだけで、なんでそんなに嬉しいかな?と思う。


だが、心配事がある。


その玉子がツルンと俺の喉の奥に当たると、俺はきっと、この玉子を、そのまま口から出してしまうだろう。

そうなったら、初代ピッコロ大魔王が死ぬ寸前に、タマゴ残したシーンみたいになってしまう。

凄く残念な絵面になってしまう。


「丸ごと?(丸ごとは辞めようよ)」

「はい」


この”はい”は、つまり”一口で行け”の意味だ。

丸ごと一個で考えは変わらないようだ。


それに、ピッコロ大魔王にならずとも、むせそうだ。


「むせそうだな」

「半熟だから大丈夫ですよ。

 大きな果物バリバリ食べてたんですよね?」


大きな果物? いったい何を知っているんだ?

でも、なんか食べてたような気もする。


まあ、半熟なら平気だろう。観念する。


「あ~ん」


なんか、小泉さんの視線が痛いが、もう引き返せないような気がするので、バクっと食べる。


おお? 見た目のイメージに反して、ずいぶん小さく感じた。

たまごって思ってたより、ずいぶん小さいものなんだなと思う。


噛む。これで、ピッコロ大魔王にはならずに済む。


塩加減も悪くない。


もぐもぐもぐ……でも、ちょっと変だ。

これ、半熟じゃない。堅茹でだ!!!


この体勢で、堅茹で飲み込むのは……ぐふっ

黄身が喉に絡みつく、

「ごほっごほっ」……むせた


「ほら、丸ごと1個一口で食べるから」 小泉さんの一言は、ちょっとトゲがあった。


とりあえず、予想外の問題が発生したことを報告……いや、言い訳する。

「これ堅茹でだよ」


「え? 私食べたとき半熟だった」 唯ちゃんが言う。


すると、小泉さんが一言。

「じゃあ、ベス用に堅茹でにしたやつでしょ」


小泉さんは知ってたんじゃないか?と思うが……平和を守るために何も言わない。

なぜなら、俺は紳士だからだ。


ところが、オーテルからの苦情が。

「酷いです。お父さんが、私のゆで卵を食べてしまいました。私は遺憾の意を表明します」

「なんなの? ベスの話し方」


娘のデザート食っちゃったみたいな気持ちになった。


むぅ。心が渇く。


むせる……むせて心が渇く?


なんか懐かしい響きだ。


そうだ、あのメロディーが蘇る。

テーレ-レレー♪ テーレーッテ、レッテッテッテテー♪ テーレーッテ、レッテッテッテテー♪

違う!それは、ビッグワンガムのテーマ(一般的にはレッドショルダーマーチとして認識されているあの曲)だ!

そっちでは無い。


もっと”むせる”やつだ。


むせる異能生命体を思い浮かべる。


(炎の匂い    染みついて   むせる)

玉子の~黄身を~ 飲み込んで~♪ むせる

半熟と聞いたは~ずが~ 堅茹でなの~さ~♪


リアルにむせた……これはフラグか?


『オーテル、もしかして、俺って死なないのか?』

『はい。お父さんが死ぬのは、とても難しいです』


やべー、俺、異能生命体だ。

凄い底辺野郎な感じでテンション上がる。

異能生命体というのは、むせて死なない生き物のことだ。


説明の必要は無いと思うが、装甲騎兵ボトムズというアニメ作品のオープニングがむせて心が乾くやつだ。


内容はもちろん説明の必要は無いと思うが、アストラギウス銀河を二分するギルガメスとバララントは、もはや開戦の理由など誰も知らない戦争を100年も……(略

★お決まりです


装甲騎兵ボトムズは1982年の作品だ。俺が小学4年生の頃放送されていたと思う。

少々対象年齢が高めで、リアルタイムでは俺には響かなかった。でも、後で見たら傑作だった。


初代ガンダムで一気に世の中の流行りが、リアルロボに振れる。


それ以前はスーパーロボットが流行りだった。とにかく強くて、1機で地球を救ってしまうようなやつだ。

そのロボットは特別である必要が有り、量産されていたりはしない。

子供が1年に1回か2回くらいしか買ってもらえないおもちゃは、世界一強い特別なやつが良い。


リアルロボットは、その対極にある。


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