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23-7.転移、異世界へ(2)

”加齢臭と転移する竜”本編

<<https://ncode.syosetu.com/n8898ej/>>

から「横浜編」を分離したものです。

話の並び順も、わかりやすいように入れ替えてあります。

異世界側の話も、多少入りますが、適当に読み飛ばしてください。

挿絵(By みてみん)


『そして、それは、私が成仏するより後のことです。

 私が成仏しないとお父さんは目的を果たせません』


これが、小泉さんを助けることをエサに、騙して俺を異世界に連れて行ってもダメな理由。


まあ確かに、成仏を望む娘を放置していくのは、おそらく心残りになる。

異世界に行ったところで、自力で行き来できる能力があるなら、

俺はここに戻ってきてしまうかもしれないな。


この子は、俺に転移の能力があることを教えに来てくれただけだ。

実際に行くのは俺がやらなきゃいけないのか。


「どうやって行けば良いんだ?」


『お父さんは、お父さんが転移する竜であることを知ったときに、

 行けるようになると言います』


「ああ、今は知ったから行けるのか」


『お父さんが大切にしている人間の女は助かると思います。

 そうでないと、お父さんは目的を果たせないからです』


「俺の目的ってなんだ?」


『全てのものを手に入れることだと聞いています』


「世界征服?」

『そんなことをしなくても、世界はお父さんのものです。

 お父さんは誰にも負けることはないので、戦う必要がありません』


なるほど。目的が世界征服だったら、それは俺では無いと思ったのだ。

竜にとっては強い者が総取りってことか。


だとしたら、俺の目的は何なのだろう?

まあ、そのうちわかるのだろうが、何か罠がありそうだ。


でもまあ、この後悔を消すことができるのなら……

こんな思いをしなくて済むなら、行っても良いかもしれない。


「俺は向こうで何をすれば良いんだ?」


『今回は、何もありません。骨の記憶を読んで戻ってきてください』


行った先に骨があるのか。

ほんとに時を超えるために行くだけなんだな。


「俺は人間なんだよな?」


『お父さんは人間では無いです。

 でも、お父さんはしばらくの間、人間のふりをしています。

 竜になるのはずっと後です』


人間の振りじゃなくて、俺は人間のつもりでいるからだと思う。


『お父さんは人間の世界に行きます。骨の記憶を読んで戻ってきてください』


「わかった」


『お父さん、行きますか?』


「そうだな。その方がいいだろう。

 だが、その前に、まずは計画を立てよう」


そう言ったときに、地面が揺れた。


あれ? 世界がずれた?


『転移が始まったのだと思います』


なんでじゃー!!

「いや、まだ心の準備が!!」


『心の準備ができたから転移できるのだと思います』


「いや、ぜんぜんできてないから!」


『転移する竜は、未練がなければ、とても簡単に飛べるのだそうです。

 転移する竜のことを知り、転移する竜になろうと思えばできるのだそうです。

 大きな竜が言いました』


なるほど。

いや、こう、もっと俺が決意とか、ちゃんとそう言うのをするまで待てよ!


うわ、足が着かん。

こんにゃくの上を歩いているような感覚になってきた。


『転移すると私と話ができなくなります。

 戻ってきたときまた話ができます』


そうじゃねーよ。俺の準備はまるでできてないって言ったんだ。


「それと、道案内。

 俺が行くのは君の世界だろ」


『私は転移する竜では無いです』


「転移する竜の力添えで、ここに来たなら、君も一緒に……」


あれ?


もう通じない?


だめか。話もできない。1人で行くのか。

俺が遠ざかったのだろう。


なんてこった。右も左もわからない状態で放り出されるとは……


行くのはかまわない。むしろ歓迎だ。

ただ、準備が。


俺は娘から聞きたいことが残ってるんだよ。


それはそうと、転移が進んでる気がしない。進みもしない戻りもしない。

嵌ったか?


ああ、わかった。転移ってフラグを立てると起きるんじゃ?

ああ、なんかわかった。理解した。


俺が転移する竜な理由はそれかよ!!


呪文みたいなもんだな。


「俺は、小泉さんを助けるために異世界に行く!」


しばらく待ってみるが、何も変わらない。

なんか、出発する気配がない。


ダメか。はじまらないようだ。

まだ足りないのかフラグが。


「せっかくだから、俺は、異世界に行くぜ?」


……何も起きない。

仕方がない。最終形態で言うか。

たぶんホントに呪文みたいなものなのだ。


「俺は俺が死んでもまわない。

 だから、俺は死ぬとわかっていても、異世界に行くことができる。


 俺には、誰々を救うとか、世界を救うとか、そんなのは似合わない。

 やりたくない。


 でも、死ぬときくらい満足して死にたい。

 俺は、満足して死ぬことができるように”終活をしに異世界に行くのだ”」


いや、今回は死にに行くやつじゃないが、なんか、この言い方だとすっきりする。

変身の呪文みたいなものだな。


俺用の呪文なら、もっと”キャピキャピ・ルンルン”みたいなやつが良かったんだが。


呪文を言い終わると、体が軽くなる。

おお、何年ぶりだろう。気力を感じる。なんだろう、一時的に呪いが解けるのか?


ガンっという、軽い衝撃。


なんか、フックが外れた?……いや、逆だ。

ジェットコースターの、坂道を登る動力が接続された感じだ。牽引状態だ。


「行ってくるよ。グライアス……或いは、うちのフローレン、フロイライン……」


戻ってきたら、名前付けよう不便だから。


……戻ってきたら?

まずい、戻って来ても俺とは直接話せない。

あとは、あの子に任せるしか無かった。


「きっと戻ってくるからな!!


 俺にマンガのメモを読めって、

 もし俺に通じなかったら、ベスを使って小泉さんに。

 それが無理なら、離婚したら、ベスの体で俺の家まで来てくれ」


くそ、これだけでも、確実に伝えたかった。

伝わったかな。頼んだぞ!!


”ガチャ!”


あ、今、ジェットコースターが坂の頂点で動力切り離された感じがした。


体が浮く……俺が飛ぶんじゃなくて地面が逃げていく……


超怖ぇぇぇぇ!!!!


うげぇぇぇぇぇ!!!


転移って、絶叫系かよ!!

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