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24-27.おっさんケモナーフラグ立つ!(そして、あとでエスティアに怒られるフラグ立つ)

挿絵(By みてみん)


※『』は、声に出さずにしている会話です


一方、別の部屋で寝る、ちょっと変わった父娘はと言うと……


『オーテルには、いろいろ聞いておきたいことがある』


『お父さん、私はいつでもお父さんの傍にいました。

 話ができるようになりました。もう、いつでも話が出来るのです』


今のうちに聞いておかなければならないことがあると思ったのだが、オーテルはいつでも話ができると言っている。


『ベスから離れても?』

『はい』


今までも、オーテルは俺に話しかけていた。俺がその話を認識できるようになった。

一度会話可能になってしまえば、ベスの近くでなくても話ができる。そういうことなようだ。


『じゃあ、急がなくても良いのか』

『”今晩のうちに、全てを話す必要が無い”と言う意味では、そうなります』


なるほど。つまりオーテルには、今晩やらなきゃならないことと、そうで無いことの区別が付いているのだ。であれば、オーテルに聞いた方が早い。

オーテルは、”この日が来たとき、やるべきこと”を考えていただろうから。


『今晩のうちに、やらなきゃならないことは何だ?』


『撫でてください』

『………』


他にいろいろ知っとかなきゃならないことが有るような……いや、まあ、話がいつでもできるのであれば、それは今でなくても良い。撫でるのはベスの体が無いと無理だから、できる機会は限られている。


確かに、そう思う。ベスの姿で何度会えるかはわからない。


だが、撫でていると、なんだか、普通の犬にしか見えない。

犬に詳しい人が見たら、微妙に犬じゃないとかバレたりするだろうか?


『犬ではありません。ベスという生き物です』


やはり、考えが読めるのだろうか?


『私はお父さんと一緒に寝てみたかったです。

 子供の頃からずっと夢だったのです』


『じゃあ、今やっと願いが叶ったのか』


『はい。私は子供の頃、人間の体でお父さんと一緒に寝たことがあります。

 とても嬉しかったです。でも、この体の方がずっと良いです』


オーテルが人間の体で? どういうことだ?

あっちでは、オーテルは人間に化けることができたのか?


いろいろ疑問はあるが、覚えていないことだけ伝える。

『いや、覚えてない』


『転移すると、記憶を置いてくると言います』


転移……転移と言うのは、俺が時間を戻した方法のことだ……

なんで、時を戻すことを転移と呼ぶのか?

なんか、撫でてたら、何か思い出しそうな気がしてきた……

なんだ?


『記憶が戻る?』


『骨があります』

『骨?』


骨……俺の骨。俺の遺骨?

そうだ。骨は記憶の入れ物。


俺の死後、俺の骨はいくつか残って、記憶を残すための道具として使われていた。

俺の死後? なんで死後なんだっけか?


まあ、そのあたりは追々聞くとして、話を進める。


『ああ、オーテルは、俺の骨を持ってるのか』

『ベスという生き物は骨を持てるのです』


俺はベスにはじめて会った。

ベスという生き物……やっぱり犬に見える。


『犬では無いですベスです。ベスは、お母さんが最後に作ったダミーです』


なぜ、伝えるつもりの無い考えに突っ込みを入れてくるのだ?

全部聞こえてるのではないだろうか?

ダミー? 疑似体、似せて作ったもの、そんなところだろうか。

”Made in 異世界”だとして、どうやって持ってくるのだろう?


『どうやって持ってきたんだ?』


『わかりません。大きな竜が持ってきたのだと思います』


『大きな竜?』

『大きな竜のことは、またあとで話します。

 今はベスと洋子と唯のことを思い出す方が先です』


『確かにそうだな。

 唯ちゃんが生きてる。前は生きていなかった』


『はい』


その割には、俺は小泉さんが生きていることが嬉しい……

そうだ。俺は小泉さんが死んでしまったことが嫌で時間を戻した。


『ああ、元は小泉さんも亡くなってたのか』

『はい。元々二人とも死にました。前回は洋子は生き残りました』


そして、今回は、飼い犬として潜入することに成功した……か。


人間は時を戻せない。

俺は神になったのだろうか?


『お父さんは約束しました』


約束? この流れで約束……オーテルに、成功報酬でも約束していたのだろうか?

思い出した。俺はオーテルと約束した。


『そうだ。俺はオーテルと約束した。

 小泉さんと唯ちゃんが生きてる世界に変わったら、オーテルが来た異世界に行かなきゃならない』


『はい。その約束です』


俺がこの世界を去る日が近付いているのだろうか?


『俺はいつまでに行けば良い?』


『私の世界と、この世界は時間が繋がっていないと聞きました。

 お父さんは、私が成仏して、お父さんが満足した後に行けば良いです』


こっちの世界で使う時間は、特に気にしなくて良いようだ。


凄く制約が緩くなったと思ったのに、先を考えるとそう簡単なことでもないことに気付く。


大分条件が揃った気がしたのだが、俺が満足して去るには足りないことがいろいろありそうだ。


ようやく、ベスに会えた。そして、小泉さんも、唯ちゃんも生きている。

でも、唯ちゃんは、働いて自分で学費を稼ぐと言っていた。

立派なことだとは思うが、他の子より、だいぶ不利なスタートになってしまう。


唯ちゃんの学費は、俺が出しても良いものだろうか。

どうせ、俺には老後の貯えは不要だ。


話した感じだと、唯ちゃんは十分賢そうだった。

俺が学費を援助すれば、足りない分を奨学金借りる程度であれば、奨学金返すくらいは出来そうに見えた。


予定外の妊娠とか無ければの話だが。

女の子の場合は、それがあるからな……


それを見守らないと、俺は行けない。

まあ、それ以前に、俺自身の両親の問題もあるしな。


前回の人生では、小泉さんに会ったのは、既に俺の両親が亡くなった後だった。

俺自身の両親に関しては、元からあった問題だが、この時期に小泉さんに会うと思っていなかったからな。


さすがに、老いた両親を残して行くのは気が退ける。


どうせいつか人は死ぬ。

人間も生き物。子育てが終わっていれば、いつ死んでも構わないと思っている。

だから、子を持たずにある程度の年になれば、俺はいつ死んでも構わない。

ただ、親より先に死ぬのは避けたい。もちろん、いきなり異世界に行くなんて問題外だ。

俺が失踪したら心配かけてしまう。


だが、心配してくれる人が居なければ、俺は行っても良いと思っている。


俺が時間を戻さなければ、その歴史で確定する。

両親が長生きする歴史で俺が消えると、両親を看取る人間が居なくなる。

老いた両親を残して俺は行けない。


嫌だな。また親が死ぬのを見なくてはならない。


仲良し親子ではないが、それでも、なかなか厳しいものがある。

俺は、妻子もないので、両親が亡くなると一人ぼっちになる。

けっこうダメージが大きい。


まあ、唯ちゃんが高校卒業する頃までは見届けられそうだ。


小泉さんは、どうだろう。幸せなのだろうか?


…………

…………


朝だ。

オーテルの撫でろ撫でろ攻撃で、あんまり寝られなかった。

オーテルは満足そうだが。


『お父さんの顔は、とてもおいしい味がします』


ベスに舐められて、顔がベタベタになってしまった。

俺の顔は美味しいらしい。


なんか、顔がベタベタになると、やる気が無くなる……おお!!

そうか! 俺の顔は美味しくて、舐められたら気力が萎える。


つまり!


『顔が濡れて力が出ない』


おお、俺は今、食品系ヒーローの気持ちを理解した。

まあ、顔洗うと回復するから、食品ヒーローと違って顔を使い捨てしなくても再利用できる。


それはそうと、服が無い。


小泉さんは、もう起きていた。ドアの隙間から覗くと目が合う。


「おはよう」

「おはようございます」


唯ちゃんも居る。


「ああ、おはようございます」


ベスが鼻でドアを開けて出て行く。

だが、俺は見苦しいパンツ姿を唯ちゃんの前に晒すことはできない。


「服が……」


「ええ、ちょっと待ってね。染み、付いちゃったかもしれないけど」


ちゃんとアイロンがけしてあった。なんて良い子なんや。


顔洗って、少し元気が出る。


「すぐ準備するから、そこ座って」


さっそく朝食だ。

おお、俺の憧れの小泉さんの手料理……って、朝食なので凝ったものでは無いが、俺はそれで充分幸せを感じる。


「ご飯の方が良かった?」


「いや、どっちでも大丈夫だけど、小泉さんは、大丈夫? よく寝られた?」


「おかげで家で寝られて助かったわ」


そういうつもりで言ったわけじゃ無いんだけどな……


おかずに目玉焼き。だが、そこにはトラップが有った。


やられた……

「小泉さん、目玉焼きソース派なんだっけ?」

と、口に出して言ってみるが、俺は知っている。小泉さんはソース派ではない。


「どうしたの、いつも醤油でしょ」 唯ちゃんだ。


「ほら、栫井(かこい)君、目玉焼きソース派でしょ」


俺は、目玉焼きにソース嫌いなんだよ!!


「醤油くれるかな?」


「ほら、栫井(かこい)君、目玉焼きソース派でしょ」


知っててやってるだろ!!


「俺は、目玉焼きにソース嫌いなんだよ!!」


「でも、ソースかけたら、美味しいかも?」


「醤油!」


『お父さん。目玉焼きは美味しいですか?

 私も食べてみたいです。私はソースでも大丈夫です』


『ベスの体に人間の食べ物は、あんまり良くないんじゃないか?』


『もうお父さんと会えました。ベスの体は無くても大丈夫です』


『…………』


いやいやいや、そうじゃねーよ!! ベスの体、もうちょっと労わってやれよ!!


却下。

『ベスが可哀そうだろ』


そう言うと、尻尾がペローンと落ちた。がっかりすると尻尾が下がるのだ!


おお!わかりやすい!


俺はケモノ少女も愛せるかもしれない!


※この気持ちは異世界に居る自称妻の一人、エスティアに傍受されているが、

 おっさんは、このときまったく気付いていなかった。


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