死際
山奥にあるとある廃工場ーーー。
そこには特殊部隊の様な風貌の男達と身体の一部が異形と化した人間が争っていた。
M4カービンから放たれた対肉体構築者用の5.56mダムダム弾は身体の一部が鍵爪や触手に変形した人間の集団に風穴を開けていく。
「これで全員か?」
特殊部隊風の男達のリーダー格らしき男は部下であろう男に話しかける。
「はい、一棟、二棟の制圧は完了しました、三棟の制圧も時期に完了するはずです」
「それで此方の被害は?」
「死者17名、重軽傷者34名です」
「部隊の3割を持っていかれたのか? この程度の肉体構築者程度に苦戦するとはJSMも質が落ちたもんだな」
男はそう言い放つと、マガジンを入れ替え溜息を吐き出した。
「ボーッとしてないで三棟の奴らの加勢に行くぞ……どうせこの調子じゃ向こうも苦戦してるだろうしな」
「了解しました……隊長」
数名の男達はその足で未だ戦いを続ける味方の元へと向かって行った。
時を遡ること十日前ーーー。
人口三十万程度の中規模の都市、悠桜市に住まう高校生、影山優は昼過ぎに自室のベッドで目を覚ます。
(……ったく、もう2時かよ……)
優はスマホの画面を見てそう思う、普通の高校生ならば今頃、学校で午後の授業を受けている頃だろう、しかし優は半年前から不登校へとなっている。
勿論本人が望んだ事ではなく、虐めによるものだ、理由は優が片親であると言ういかにも時代錯誤の理由である、それも虐めの中でもかなり卑劣な分類の酷いものだった。
「流石に朝方までネトゲやってたのは馬鹿だったかな……」
優はそう呟きベッドから起き上がる、どうやら母親はだいぶ前に仕事へと向かった様だ。
優はリビングに向かい、テーブルに置かれた昼食のチャーハンをレンジでチンして食べ始める。
テーブルの上には母からの置き手紙があったが読まずに丸めて捨てた、どうせ書いてあることは一緒だ。
「そう言えば今日、あの漫画の発売日じゃん、時間も大丈夫そうだし買いに行くか」
優は昼食を終えるとその足でコンビニへ向かうことにした。
高校のジャージを身につけ、髪はボサボサ、外に週一出るか出ないかなので肌はかなり白い。
優はそんな見た目ではあるが元はかなり美形だ、しかしそれらのせいで面影は全くと言っていいほど無い。
もう少しでコンビニに着こうかと言うところで目の前から数人の人が歩いてくるのが分かる。
相手の顔が視認できるだろうくらいに近づいた時優は青ざめた。
「ん? おっ、あれ優じゃね?」
「うわぁマジじゃん‼︎」
目の前から迫っていたのは優の事を虐めていたグループの面子だった。
「嘘……なんで……まだ授業中のはずじゃ……」
少なくとも優は彼等に出会わない様、彼等が学校にいる時間帯を狙って外出していたはずである。
「テストで学校早く終わって帰ろうとしたらレアキャラに出会えたみたいだな」
虐めグループのリーダー格である佐藤が肩に腕を乗せてくる。
「んでさぁ、お金無くて俺ら困ってんだよねぇ……お金貸してくれない?」
佐藤はそう和かな笑みを浮かべ優に話しかける。
「あっ……う、うん…」
優は震えるてでポケットから財布を取り出し佐藤に渡す。
「んー? どれどれ……は? 千円しか入ってねーじゃん」
「ご、ごめん……今お金が無くて……そ、その……」
「ふざけんじゃねぇよ‼︎」
「グフっ⁈」
佐藤は優の溝落ちあたりを蹴り上げる、優はその場に倒れ伏せ、悶え苦しむ。
「なぁ佐藤、これもう、お仕置きするしか無くね?」
取り巻きの男は嫌らしいニタニタとした笑みを浮かべ、佐藤に話しかける。
「そうだな、暫くやって無かったから腕は落ちてるかもしれないけどなぁ?」
「や、やだぁ……やめて……」
「おいおい、逃げんなよ」
その場からよろよろ立ち上がり逃げようとする優を取り巻き達は押さえつける。
「取り敢えず、裏に連れてこうぜ」
「おうよ」
佐藤達は優を押さえつけ路地裏まで連れて行く。佐藤は優を路地裏の壁に叩きつける。
「んで? 佐藤、何すんだよ? 爪剥がしか? それとも骨でも折るか? ナイフで皮をどれだけうまく剥げるかとか?」
「まぁ、落ち着けよ? 久しぶりにやるんだ、フルコースで行こうぜ」
「そいつはいいな、楽しみだ‼︎」
「だが、その前に……」
佐藤はそう言い、懐から拳銃を取り出す。
「これ見ろよ、親父から貰ったんだよ‼︎」
「マジかよ、本物か⁉︎ 流石佐藤だわ、俺等には真似できない事をやってくれるよな、ほんと」
「ま……まって……そ、そ、そんなので撃ったら、死ぬ、死ぬから‼︎」
優は最初は偽物だろうと思ったが、佐藤の両親の事を思い出し命の危機を感じ、逃げ出そうとする。
しかし両腕を取り巻き達に押さえつけられ、動くことすらままならない。
「大丈夫だよ、急所は外してやるからよ、せっかくの玩具壊したらつまらねぇーからな」
「や、やめ……」
バァン‼︎
その瞬間炸裂音が響き渡り、優の胸あたりを貫く。
血が滝の様に溢れて血溜まりを地面に作っていく。
「あっ、やべぇー、ミスったわ」
佐藤は呑気そうにそう呟く。
「あがぅ……うぅ……」
優はその場に衝撃で倒れ伏せ、段々と意識が薄れていく。
「おい佐藤、流石にやばくねぇか⁈」
「流石にヤバいなぁ、これは……取り敢えず……」
佐藤はそう言うと優の頭にゼロ距離で優の頭を拳銃で貫く。
「な、何してんだよ? 流石にこれはヤバいぞ⁈」
「殺しちまったもんは仕方ないだろ、バラして海にでも捨てよーぜ」
佐藤はそう笑う。
それが頭を撃ち抜かれ、死に側に優の耳に届いた最後の声だった。
―――それでもお前は生を選ぶか? 仮に化け物に成り下がろうとて。
何処かから優を嘲笑する様な声が聞こえた気がする、優は心の奥底でまだ死にたく無いと願った。
多分結構な亀更新になると思います。