4話 幸運な伝令
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「報告します。敵を本丸まで追い詰めました。ご命令通り、本丸に対し撃ち合いだけに留め、討ち入りは厳に謹んでおります」
伝令はそう報告すると、ちらりと居並ぶ貴族達を見た。
やや間をおいて貴族の一人が、一番爵位の低い私が応えるべきかと言わんばかりに眉間にしわを寄せて「わかった」と一言、面倒臭そうに応えた。
伝令は貴族連中に関わらずに済んだとホッとしたが、本陣から出ようとしたところで別の貴族か「馬に乗れるか」と聞かれた。
伝令なのだから何を当たり前のことを…、というのは顔に出さないようにし、「もちろんです」と答えると、その貴族は「では、王都までの伝令に繋ぎをつける為、街まで行って次の伝令へ城陥落の報を伝えよ」と命じてきた。
伝令はすでにこちらを見てもいない貴族に「承知いたしました」と伝えると、改めて貴族連盟本陣を出た。
損な役回りだ。
落城後の略奪は、自分のような下っ端の兵にとっては給料代わりに等しい。
普段なら危険な伝令だと報奨金も高くなるが、今回は味方領内の戦闘で、しかも奇襲が完全に成功して、落城が確実となった後の伝令となる。ロクな報奨金がつかないだろう。
特に今回のような、誰が最高位かハッキリしにくい連盟での戦など、街から本陣に戻ったところで、果たして最後の伝令の報奨金が支払われるかすら怪しい。ご苦労であった、の一言で片付けられかねない。
苦い顔をしながら馬に乗り街へと向かおうとする伝令を、すれ違う兵士達がニヤニヤしながら見ている。
伝令の恰好は他の兵隊とは違うので、すぐにそれだとわかる。その伝令が敵の城とは真逆の方向に馬を進めているので、損な役回りをさせられているのは他の兵士から一目瞭然だからだ。
中には、「この忙しい中お勤めご苦労さん。わしらも後から街まで行くからの」と、からかいの言葉を飛ばす者もいる。別の誰かは、「こーんなに懐を厚くしての」と言い、下品な笑いがその周囲で飛び交った。
戦となれば前線で戦い、普段は農耕に勤しむ、死ねば遺族に報奨金が出るとはいえ、ボロ雑巾のように使い古される民兵達が、ここぞとばかりに汚い野次を飛ばしてくる。
俺が城にいる貴族連中に仕える騎士に仕えているから、普段は奴らと同じ暮らしをしているとでも思っているのだな。
伝令は黙って唇を噛みしめながら
(そんな訳あるか!!俺も暮らしはお前たちと変わらない!お前達の方が今この時、どんなに幸運か!)
と、のたうち回りたくなるのを必死に堪えながら、馬を早足にして本陣を出た。
本陣からしばらく早足で進んだ後、馬の歩調を整えつつ小高い丘の上に差し掛かったその時、後方より凄まじい閃光と共に爆音が鳴り響いた。
驚いて興奮する馬を何とか宥めながら後ろをふり向いた伝令は、先程のたうち回る程の悔しさを撤回し、あの戦の中、あの城に攻め入った誰よりも自分が幸運だったと確信すると、自らの幸運を噛みしめながら街までの道を急いだのだった。
実を言うと伝令のその考えは間違っている。
正しくは、寄せ手である貴族連盟の中では、誰よりも極めて幸運だったのである。
…さらに言えば、寄せ手以上に幸運だったのは、落城寸前な城にいる守り手の方だったのだが。
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次回更新予定日 2020/2/16
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