27話 蟲
コメントと評価して頂けると、すごく励みになります。
どちらか一方だけでも構いませんのでやって頂けると嬉しいです。
是非ともお慈悲をっ!!
義清と商人の間までくると、
ベアトリスは尻もちをつきながらリュックを地面に降ろした。
護衛のボア族に深々とお礼を言うと
リュックを漁って中から人の顔ほどの布袋を取り出した。
袋はウゴウゴと中身が動いている。
ベアトリスはその中に手を突っ込むと
何かを選り分けるように違う違うと言いながら袋を漁った。
やがて、この子だ!!と袋から手をだすと天高くかかげた。
その手には人の顔より少し大きい蟲がいた。
体の両側に何本も足があり、緑色のダンゴムシのような形状をしている。
体は硬そうな殻で覆われており目はなく、顔に当たると思われる部分には大きな牙が
ハサミのように2本付いていた。
体からは粘液が滴り落ちているがベアトリスは気にすることなく、
その蟲を持って商人に近づく。
怯える商人に義清がベアトリスの後ろから言った。
「そいつは人に寄生する生き方もできてな、宿主を極力活かそうとする。
ベアトリスのおかげで宿主をお前と認識するが親はベアトリスと思っておってな。
お前がワシらに何かしようとしたり、不利なことをするとお前の心臓を食べてくれる」
商人は先程の剣を突き立てられた一件で気力を使い果たしていた。
しかし、そんな蟲で何かされるのはまっぴらごめんという気持ちは十分にある。
血があふれ出る肩を押さえながら、
アとかウとか声にならない悲鳴をあげながら尻を引きずって後ずさり逃げようとした。
無情にもベアトリスは笑顔で商人に近づきながら言った。
「いやー、ちょうど成蟲になる子がいてどうしようかと思っていたところなんですよ。
あなたという存在がいたことに感謝します。大丈夫ですよ?この子はあなたを守りますから」
なおも後ずさる商人を左右からゼノビアとラインハルトが押さえつけた。
ラインハルトとゼノビアが交互に言う。
「なーに、何事も経験だ。死ぬわけじゃない」
「アタシはあんたに同情するよ。これに懲りたら色々と学ぶんだね。次の機会はなさそうだけど」
商人は二人を交互に見たがやがて諦めると言った。
「い、痛くはしないでくれるか‥‥」
その言葉にベアトリスはキョトンとしたがニコニコしながら言った。
「ムリです。嘘をつくのは悪いと思うので言っときます。先程より痛いです!!」
そう言って義清がつけた傷に蟲を近づけると、
蟲はバキバキと音をたてながら商人の体に入っていく。
商人は本日一番の悲鳴をあげながらそれに耐えるしかなかった。
悲鳴を上げる商人にベアトリスはニコニコしながら言った。
「ちなみに入り口が広いほど痛みは少なくなります。
なので普通は口です。
次点でお尻ですね。種族によっては3つ目の選択肢もありますが、
あなたみたいに傷をつけて入れるのも1つの手段です。なぜなら‥‥」
ベアトリスの説明をまったく耳に入らない商人はなおも悲鳴を上げ続けたが
最後には痛みがやわらいでいく気がして傷口をみた。
そこにはわずかに傷跡が残るだけで、以前の健康な肩があった。
ラインハルトとゼノビアが手を離して商人を開放すると
商人はいま起こったことが理解できずに肩の傷跡を何度も触った。
その商人にベアトリスが得意げに言う。
「ちなみに、あなたみたいに傷口から入ると傷はふさがります。
なのでこういう手段もアリなんです。
それから傷が瞬時になおるのは今回だけです。
病気にもかかりにくくなりますし、
ケガも今回ほどではないですが普通の人よりは早く治るようになりますよ」
今起こっとことが信じられないと言う風にしている商人に義清が声をかけた。
「実験してみよう。ワシに汚らわしいと言ってみろ」
「け、汚らわしい」
何もおきない。
義清は首をかしげてベアトリスの方を見るとベアトリスは言った
「どうやら義清様を本気で怖がってるみたいですね。あんまりにも怖がりすぎて、
心から汚らわしいと思ってないみたいです。違う実験をしてみましょうか。えーと‥‥」
ベアトリスはリュックから短剣を持ち出すと商人に渡した。
「これで私の手を刺してみてください」
そう言ってベアトリスは手のひらを商人の前に出した。
商人は震えながらベアトリスの手のひらに剣を立てたがブルブル震えるばかりだった。
焦れったくなったベアトリスが頬を膨らまして注意する。
「本気で突き立てるんです!! フリだと意味がないですよ。さあ、目をつぶって一気に!!」
商人は言われるままにギュッと目をつぶって腕に力を込めた。
その瞬間商人の胸に激痛が走った。
「ハウッ!!カヘッ アッ」
商人が言葉にならない悲鳴をあげて両膝をついた。
胸が苦しく、動悸が早くなり脂汗がにじみ出た
ベアトリス嬉しそうに言う。
「という感じです!! これでわかりましたよね。
それから健康管理も大事ですよ。
あなたは少し太り過ぎなので食べる量は問題ないですね。
これからはお腹にいるその子の分まで食べないとお腹が空いてくるので注意してくださいね」
一欠片の悪意も感じさせないほどニコニコしながら言うベアトリスの横から
義清が言う
「たいていの人間はそいつを腹で飼うと痩せる。
お前も食べる量はいままでより増えるが、
体は痩せていくだろう。食費には気をつけることだな」
商人は脂汗を流しながら口でヒューヒューと息をしている。
やがて、息を整えながら片膝をつくと義清に言った。
「い、以後気をつけます。」
「よく言った。学んできたな。強者には失礼のないようにするのが鉄則だ
油断を誘うために媚びへつらう。そしていつかそいつの首を切り落とす。これが基本だ」
「は、はい」
「うむ。蟲が反応しないところをみるといい調子だ。これから励めよ。」
青い顔をしながら商人は自分の護衛の方に行った。
今日は一度に色々なことが起こりすぎた。もう寝たい。
そんな思いに駆られる商人の脇腹を護衛がつついた。
商人が力なさげに護衛をみると、護衛は荷馬車の方をアゴでシャクって合図した。
商人は慌てて鍵を取り出すと荷馬車に行ってオリを開けはじめた。
コメントと評価して頂けると、すごく励みになります。
どちらか一方だけでも構いませんのでやって頂けると嬉しいです。
是非ともお慈悲をっ!!