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25話 抜刀

仕事で1日立ちっぱでいるだけで足を痛めました。

自分の体力の衰えをヒシヒシと感じております。


義清たちは村の真ん中にある通りを進んでいく。


通りには両側に建物や家が並んでおり村の奥へと続いている。

通り建物の裏にも家や建物が建っており、その裏に柵ある。

 

 村は縦に細長く作られている。

村の周りを囲んだ柵と家の間にはある程度距離があった。

元が軍事目的で作られた施設というだけあって、

戦闘の際に兵士が行き来できるように広めにスペースを取ってあるのだろう。



そのスペースがあるのがわかったのは通りから建物が消えて、

かわりに大量のテントが現れはじめたからだ。


 テントといっても簡素で小さい。

テントの片方の支柱を高くして反対側を短くし、

その間に布を置いて天井にしている。

余った布は地面まで垂らして壁にしてあった。

布はボロボロで所々に穴が開いている


人一人が寝転んで入るのが精一杯の大きさだ。

しかも入るのは体の一部だけで、この大きさでは膝から下は外に出てしまうだろう。


ゼノビアが義清に寄ってきて小声で話しかけた。




「だいぶ酷い暮らしのようですね。

 テントが元一般兵の寝床、建物が元階級持ちの兵士の、

 それらを再利用して暮らしているようですね」


「人と建物の数が合っていないな。

 明らかに不足している。建物で集団で寝泊まりしても

 テントで寝泊まりするものが大勢いるだろう。そのテントもボロボロだ」


「テントは兵士が一時的に寝るためだけのモノでしょう。

 長期使用を想定した作りになっていません」


「加えてこの地面だ。なぜかこの村の中だけかなり乾燥している。まるで荒野だ」




義清が村長に乾燥した地面のことを尋ねると村長はテントの奥、柵の付近を指差した。




「柵とテントの間に置いてある、台座に乗った石が見えますかな? 

 アレのせいです」




 台座は人の腰ほどの高さで石でできている。

台座の上は真っ平らで真ん中がくぼんでおり、

そこに茶色い鉱石がはめ込まれていた。

ゴツゴツとした粗削りの鉱石は半分がくぼみに、あとの半分が露出している。


村長が言葉を続ける。




「ラビンス王国の嫌な置き土産です。村の端に何個か設置してあります。

 耕作に励んで作物を納めないと、

 荒地がドンドン広がって作物が育たい土地が出来上がり

 いずれはみんなが餓死するそうです。

 今は幸いなことに村の中だけで済んどります」




 義清がエカテリーナとベアトリスの方をチラリと振り返るとエカテリーナが首を振った。

ベアトリスは義清の意図がわからず首をかしげている。

エカテリーナがベアトリスに耳打ちするとベアトリスも首を振った。

おそらくエカテリーナが村長の言ったような魔法を知っているか、と

ベアトリスに耳打ちしたのだろう。


義清もそんな魔法は聞いたことがない。




「いましたぞ。あれがお探しの商人です」




 村長の言葉に一同が前に視線を向けると雑に並んだたくさんのテントの終わりに

馬車があり、その前に太った男と何人かの男たちがいる。

太った男は身なりがよく首にネックレスまで着けている。

かぶった緑色の小さな帽子は頂点が小さく尖っており、小さな王冠の様だ。


護衛の男たちは6人おり3人が鎧を(まと)っている。

兜は着けておらず顔はむきだしだった。

鎧は所々に傷が入っており歴戦をくぐってきた様子を伺わせている。


あとの3人は軽装で二人は弓を持ち膝と肘に小さな部分鎧をつけているだけだ。


7人の後ろには馬車がある。

馬車は荷台がオリになっておりホロがかけあるが、

義清たちの方はホロが上がっており中が見えた。




 荷台には何匹かのモンスターが入っており、その中に大主教もいた。

神官が着るような袖にかなりの余裕があり、すっぽりと足元まで覆うローブを着ている。

ローブは紫色で袖口と襟をグルリと一周する、なにやら文字の列が金色の糸で刺繍されている。

頭にはツバのない帽子をかぶっており、コレも紫色だった。

帽子は横に一周する金色の刺繍が二本はいっており、

その刺繍の間にも何やら文字が入っているが読めはしなかった。



商人は義清たちが近づくといきなり怒鳴った。




「どういうことだ村長!なんでモンスターが村の中にいる!早く追い出せっ!」


「うるさい!この方たちはこの村と交流を持ちたいといらっしゃったのだ。

 敵じゃないっ。

 それよりお前はとんだ疫病神だ!! 

 スケルトンが来たのはお前の荷馬車のモンスターが原因だ。

 さっさと荷馬車からモンスターを出して村からも出ていけ!!」


「何だとう!!村に金は払ったぞ。だから村に出入りするのは当然の権利だ。

 それにコイツラはワシの商品だ。

 今ファナシム聖光国に連れていけばいい金になる」


「そんなこと俺たちの知ったことか。さっさと村を出るんだ」




そこで商人の護衛の一人が止めに入った。




「旦那、ここは村長の言うことを聞きましょう。命までは取られねんだ。多少は損してでも‥‥」


「うるさい!! だいたい護衛お前達が頼りないからこんな事になるんだ!!」




そこまで見て義清が声をかけた。




「まあ待て商人。ここは言うことを聞くのが懸命というものだ。それに何もタダとは‥‥」


「うるさい!! モンスターが俺に偉そうに口を聞くな。お前の言葉などに惑わされんぞ!」



 商人は義清の言葉が終わる前に大声で顔を赤くしながら怒鳴って

義清の言葉を遮るとツバが飛ぶほどに汚らわしいモンスターめと罵詈雑言を浴びせ続けた。


義清ははじめソレを黙って聞いていた。

それから義清は左足を後ろに引いて、グイと左半身を引く形になった。


左右のラインハルトとゼノビアが義清から距離をとった。


 義清は右手を、引いた左半身の脇腹の前に持ってくる。

すると脇腹から剣の柄がするりと出てきて、義清はそれを握ると一気に引き抜いた。

自分の体から剣を引き抜くとあって、鞘から剣を引き抜くとは違い独特の体勢となる。

剣の刃先を抜く頃には右手は最大に伸ばしており、それでも長さが足りず

刃先は脇腹を切るようにしてでてきた。


常時鈍く赤く光る義清の腹筋の割れ目のひとつから取り出された剣の刃先は

引き抜かれるときに、水から抜いたように、その赤い光を刃先から引きずってやがて消えた。


剣はフランベルジュで刀身が波打が波打っている。

全長が2メートルはあるが筋力が多いモンスターでは標準的なサイズだ。



大主教は檻の中から義清が剣を抜くのを見ていた。

そして義清が剣を腹から抜き終わるのを見てポロリと経典を落とした。

そして口をひらいてい言った。



「神々の黄昏がはじまる」






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どちらか一方だけでも構いませんのでやって頂けると嬉しいです。

是非ともお慈悲をっ!!

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