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204/205

201話 目的のすり替わり

執筆中に聞いていた音楽です。


よければ読んでいる時に一緒にどうぞ。

https://www.youtube.com/watch?v=m_isAVgI3KE


(また、東部の領主か。来るのは東部勢ばかりではないか)


 アルベルト・ベッティンガーは城に到着する貴族の一団を見て思った。

ベッティンガーは息子クネースと共に大禍国に同行する形で北部に入っている。


 大禍国に息子クネースへの家督相続と領地から産出される琥珀の権利確保を願い出ている、このアルベルト家はやや奇妙な立場にあるといえるだろう。


 北部に到着早々攻城戦や他家の領地の勝手な分配など、これが東部のやり方かと白い目で見られる大禍国と同類だと、王国北部の貴族に思われているのだ。


 しかし、ベッティンガーの実直な性格と息子クネースの純粋で素朴な性格が幸いし、北部気貴族の中でもアルベルト家に対する誤解は解けつつあった。

むしろ、王国東部で大禍国だけがおかしいのではないかと、最近では北部気貴族は思い始めている。


(果たして、そうだと言い切れるか、最近は疑問に思えてくる)


 ベッティンガー率いるアルベルト家は大禍国と共に、王国首都から直接北部に入った数少ない勢力の1つだ。


 普通は首都で待機する貴族の元に領地から兵が集まり、貴族と兵が首都で合流した後に北部に向かって進んでいく。

アルベルト家はたまたま義清の近くにいたことと領地も兵力も小さいため、貴族単身で北部入りすることが認められた。

兵は後から領地からやってくるだろう。


 王国は決して北部を見捨てないという王国中央からのメッセージを届ける意味もあって、最初に北部に入る貴族の頭数を増やしたいという中央の画策でもあった。


 貴族を首都に、兵を領地に置くことで、貴族と兵の距離を物理的に離し、王国への貴族の反乱を抑えることが目的のこの制度。

今回はこの制度のお陰で王国の兵力が集まるには時間がかかるだろう。


(しかし、予想より貴族の集まりが早い)


 ベッティンガーの予想に反し、北部への貴族の到着は早かった。

しかし、いま北部に到着している貴族のほとんどは王国東部出身の貴族ばかりだ。

しかも、到着した貴族はほとんど兵力らしいものを持ってきていない。

せいぜい騎兵数騎に歩兵十数人程度だ。


 彼ら王国東部出身の貴族は本来であれば、首都で領地から出てくる自兵力を待たなければならない。

しかし、彼ら王国中央の通達を無視する形でほとんど単身で、首都から北部へと進んでいる。


 彼ら東部出身の貴族の言い訳としては、王国宰相代理であるヒンネルク・シュタインベックが命じたのは王国中央で貴族と兵は合流するということだけだ。


 王国中央といえば首都で合流するものと理解するのが普通だが、東部貴族たちはあえてこれを曲解した。

王国中央で貴族と兵が合流するのが決まりなら、貴族が単身北部に入るのは法に触れるわけではない。

貴族は自兵が王国中央と北部の境に来たときに合流すれば、形の上では法を守っていることになる。

貴族の体が兵と合流するときだけ中央の土地の上にあれば、理屈で言えば法を守っていることになる。

東部出身の貴族たちは法をこのように解釈して、わずかな兵を従えほとんど単身同然で北部にやってきた。


(北部を救援しにきたのではない。目的がすり替わっている)


 ベッティンガーはホコリと泥にまみれた服をきれいにする様子もなく進む、東部出身の貴族を見て思った。

奇跡的にこの小説にたどり着いた方、アドバイス感想などお待ちしております。

ブックマーク・評価などしていただけると嬉しく、モチベーション維持して書くことができます!!


次回更新予定日 2023/8/20

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